個展からあっという間に1ヶ月経ってしまいました。
開催後もオンライン受注の準備や、お問い合わせの数々で、ありがたくも慌ただしい時間を過ごし。3月に入りようやく落ち着いて制作ができるようになりました。予約抽選やオンライン受注で「希望が叶わなかった」と、肩を落とされたメッセージもたくさんいただき。様々な対策の結果と、できるだけ多くの人に作品を手に取っていただけるよう、平らな方法を試みたのですが、なかなかどうして申し訳ないです。
さて、そんな難関をぬって、幾名かの料理人たちがご当選者の中にいらっしゃいました。(翻って多くのお店や料理人の方々が残念だった、次回は!と言ってくださり励みになっています)
当日は、混み合うギャラリーの中で、拝見したことのあるお顔ぺぺロッソの総料理長である今井和正氏(Foodion記事参照)が。自らギャラリーで選んでくださるという驚きとともに、お客様と和やかに土鍋を選ばれている姿は、ああイタリアの広場みたいだなあと。(土鍋コッチョリーノ=広場)
どうしても食いしん坊の虫が収まらず、イタリア料理「ぺぺロッソ」にいってまいりました。駅から1分の場所にある路面店。店構えからしてワクワクします。商店街に面したガラス窓が魅力的で、このご時世は窓を開けた換気など最高なシチュエーション。
風通しの良さは、店内のみならず、料理に携わるスタッフの立ち居振る舞いや和やかさにも。こういう空気って、絶品料理を何十倍もおいしくさせ、食べ始めたとたん、また来よう!と、確信します。
前菜から唸りつづけるお料理。サービスをしていただくマネージャでありチーフソムリエである藤本智氏の説明は大変興味深いものばかり。美味にノックアウトされ、這い上がってフォークとナイフを持ち、またグラスの首をつまみ直すというくらい。
パンは、タイムリーなことに、近ごろ個人的に再燃している米麹と酵母を使ったプレーンタイプと、蕎麦粉を使ったパン。北イタリアでも蕎麦粉の料理を食べます。サラセン人の麦と呼ばれる蕎麦粉は、16世紀にサラセン(アラブ)から渡ってきたもので、小麦が育ちにくかった寒冷地では、蕎麦粉やとうもろこし粉を代わりに育てたと、ミラノの師匠から聞きました。パンに使った麹は、紅鱒をマリネにしたり、食事の途中には麹モクテルが出てきたり!
各料理に合わせたぶどう酒をソムリエにお願いしたのですが、こちらのラインナップもお見事で、書けばきりがない。
パスタはトスカーナのpici(ピチ/うどんのような太麺パスタ)と、カラブリアのstranguylet(ストラングゥイエ/カヴァテッリというパスタ)。
ミラノ修行時代の前に住んでいたトスカーナと、親類のようなイタリア人の家族が住むカラブリアのパスタ。この1年、足を運べず会えなかった人々がチャオ!と、土鍋の中から煙とともに現れたような気が一瞬して。この粋なメニュにグッと胸が熱くなりました。
カラブリアには、血族をバルカン半島に持つarbëreshe(アルブレーシュ/アルバニア人)が住む自治体がいくつかあり、独特の言葉や文化が今もなお存続されています。カラブリアの家族が、その村に連れて行ってくれて、文化を目の当たりに見せてくれたりしたので、感慨深いのです。この土鍋の中のパスタは、彼らの郷土料理 stranguylet(ストラングゥイエ/カヴァテッリというパスタ)であり、羊肉とペペローニ(甘い唐辛子)のソースを絡めた逸品。煙が立ち上がったのは、羊肉を燻したような香りづけを独特な演出でしてくださったということでした。
ミニ土鍋「世界の友だち」
料理のあとは、料理長の粋な計らいで、特別に土鍋コッチョリーノに入れてくださったドルチェが運ばれてきました。きたる8日の International Woman's Day(国際女性デー)に合わせたミモザのケーキ。イタリアでは、この日に街を歩いていると、誰ともなく Auguri!(おめでとう)とミモザの枝を差し出してくれ、いい気分になったものです。ミモザのトルタは、お店では6日〜8日まで期間限定でいただけるようですよ、ぜひ。(テイクアウトやデリバリーサービスもあり)
そうそう、時にものすごく魅力的なお皿が登場するので「ステキですね!」と言うと、なんと今井料理長メイドだとおっしゃる。なんと、そんな器も中身もおつくりになる方が土鍋コッチョリーノを!「土鍋コッチョリーノがみたいな」と言ったら、もしかしたらお店のどこかに隠れているかもしれません。ぜひお店でごちそうを堪能しながら、こっそり聞いてみてくださいね。
ぺぺロッソで、東京の春と、イタリアの春を楽しまれては。
衛生管理が行き届いている店内では、少人数のお食事も。テイクアウトやデリバリーも積極的になさっており、自粛の厳しい期間も大人気であった理由を実感しました。
コッチョリーノ
我妻珠美
店内予約・テイクアウト・デリバリーなどは PEPE ROSSO HP
各種SNSではおいしいお皿の数々が眺められますよ!
▶︎Instagramぺぺロッソ公式
▶︎プリモ クオーコ
▶︎プリモ ソムリエ