「新茶が到着しました」という記事を読み、ご納品する足はリズムよく。
数年前より、土鍋コッチョリーノをご愛顧いただいている「茶のつたや」さんは、創業昭和3年。高田馬場にて90年の老舗茶屋。
感染防止対策としてエントランスを開放していらっしゃるのですが、効果は、換気だけに留まらず、興味深くお店をのぞいていかれるお客さまの様子がわかること。高田馬場駅すぐ早稲田通りに面しているため、学生さんが静かにまったりと昼過ぎの散歩をしているようで、すぐそこにあるスタバをよそに「入ろうか」と、老舗茶屋を選び日本茶を注文する様子に、わたしまで嬉しくなってしまいました。
茶のつたやさんの先代のお名前を一文字とったブランド名「照寿」という新茶と、季節の上生菓子をゆっくりいただきました。静岡清水の茶畑で採れた茶葉を、和田長治商店さん(製茶問屋)が炭火で丁寧に仕上げたとのこと。人の手がたくさん交差した日本の食文化。
日頃から、旬の香りは、沈静と覚醒のバランスが良いものだなあと感じているのですが、新茶もそのひとつであるとつくづく感じました。甘い。そして一年育ってきた葉っぱの香りが愛おしい。針のようなピシッとしたフォルム。パリッと緊張感がありますね。茶葉の形が、こんなにカッコよく美しいものだと改めて。
三代目オーナーが「一煎目は少し冷ました湯温で、最後の一滴まで淹れてくださいね」とおっしゃいました。一煎目は新緑の香りが、二煎目は昆布のような旨みを感じました。お茶は深いですね。
その後、カウンターに席を移し、興味を持った水出し茶のデモンストレーションをオーナーにしていただきました。お店の中にはカウンター席もあり、カクテルをつくるようにシェーカーをふって特製の「抹茶シェイク」もつくってくれるのですよ。テイクアウトされるお客様もいて、これから喉が渇く時季、町のかけ込み茶屋になるのでしょう。
コッチョリーノの直火にかけられるポットは、土鍋同様の効果があり、蓄熱蓄冷に優れています。朝のうちに水を入れて、茶葉が開いたころ氷を追加して。若い芽だけを手で摘み取った高級な緑茶を、今日は贅沢に贅沢を重ねた形でいただきます。
遮光性や密封性ある袋に入っていることが多くなったお茶。種別の茶葉の形、香り、どんなものかまじまじと見たことがある人が現代にどれだけいるでしょうか。
子どもの頃、量り売りのお茶屋さんはじめ、お味噌や豆など量り売りする乾物屋さんに行くのが大好きでした。コンビニもない幼少時代「ノドカラカラシニソー」なんて親に駄々こねていると、店先に立つお茶屋の店主が「今月のお茶一服いかが?」なんて。お茶屋さんが救世主のように見えて「お茶って本当おいしいわぁ」なんて子どもながらに思ったことがあります。生きた香りや色を五感で知り得る。そんな日常が、地球や自然の産物に想いを馳せることにつながっていたのではないかなと思うのです。
「エコロジーの問題を考えなくてはいけない」とか「ペットボトルが悪い」という、舌先三寸な言葉ばかり耳に入ってきますが、「これが好き」とか「ここが魅力」いうような随意的な気持ち、馳せる気持ちが湧いてこないと、環境の問題は変わっていかないと思うのです。そして、一手間かかる急須でいれるお茶の普及の前に、茶葉や食材をよく観察して想うことが大事なのではないかと思うのです。
店内で、懐かしきお茶缶が目に入りました。昔はどのうちにもあったお茶缶です。
この缶はきっとすばらしい!という直感と好奇心が。
なぜならば、缶に貼ってある友禅和紙の小紋や柄が、蓋と本体でぴったり合っている。
直感は大当たりで、本体の隙間からすぅーっと空気が出てゆきながら閉まるし、蓋を閉めて静かに回し探るとカチッとジャストに閉まる位置があり、友禅和紙の柄が合う。これ、小さなことなのだけれど、感動。湿度の高い日本の気候から、茶葉など守る気密性の高い造形。円柱には意味があり、隅に湿気が溜らない理想的な形なのだそうで、職人の丁寧な仕事のひとつなのです。つまみ付き中蓋の上品さと機能性にも、うぉうぉと唸りました。茶のつたやさんと深いご縁にある江東堂高橋製作所さんがつくる茶缶ということで、これを買ってさっそく茶葉を入れてもらおう!即決でした。
茶のつたやさんでは、持ち込んだ容器への量り売りをしていらっしゃいます。ゼロウェストと伝統文化・工芸。なにかできないか、漠然と考えていた日々。その活動に出会えてとても嬉しかったし、早稲田・高田馬場が発祥の地である「アトム通貨」に参加していることも教えていただきました。茶のつたやさんでは「茶缶を持参したら10馬力」「茶缶の購入で20馬力」というアトムのパワーもらえます。江東堂高橋製作所さんの缶のパワーもすごいのです。
追伸:コッチョリーノのご納品は、4月末、5月末、6月末と、順次フル活動で行っております。もう少々お待ちくださいませ。