*INVITATION*
我妻珠美 個展 |
窯だしは「高揚感」と「緊張感」に満ち溢れる。
よく人に「わくわくですね」と言われるから、
一応「高揚感」と書いたが、正確にいえば、
開ける前は「緊張感」のみ。
もっと素直に言えば不安だけ。
焼成16H+徐冷40H
計56H(約2日半)はずっと不安。
この時間をポジティブに考えるなんて、
自作自演、観客一人みたいなもの。
キツイようだが、夢みたって現実。
逆に最悪を考える。心の筋トレ。
「高揚感」は、作品が姿を現して、
美しい色がチラリと見えた瞬間から。
しかし、その「高揚感」もすべて
長続きするものではない。
なぜなら…。
失敗作については、後も先もあまり語らぬが、これだけは。
窯から出た作品は、底や交合部分を研磨する。
テーブルを傷付けないように、汚れが付きにくくなるように。
そのあと、注器や花瓶は、水漏れがないか
水を一定時間入れて検査をする。
延いては、しょうゆさしは、醤油を入れて注いでみる。
水では液体粘性が異なるので、塩梅がちがうのだ。
あれ?
出てこない。
塩梅どころか、甘いじゃないか。
おちょくるんじゃないよ。
期待感と緊張感が、
同時に緩む瞬間というものがある。
本当は泣きたいほど、
ショックなんだけどね。
しょっぱくも酸っぱくもない。
甘辛いという感じかな、
ちんぴん(珍品)さん。
*窯入れ前に注ぎ口は念入りにチェックするが、豆サイズゆえに、注ぎ口が釉薬でふさがれてしまう現象。そして気が利かない「ちんぴんさん」(珍品さん)になる。
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