#1より続きです。
1月に鑑賞したものの中から、記録に留めるべくイベントや鑑賞したものをまとめます。
●「ジョリー・ジョンソン ユニークを繕う 展」Ecru+HM
最初に彼女の作品に出会って身に着けはじめたのは10年前くらいのことだろうか。初日に行けなかったのは残念だが、今回はユニークなショールを新調しました。近年フェルト作家さんは多くなったものの彼女の技術とセンスは圧巻。ファンなのですこしずつ身に着けられるよう自らの創作も日々がんばろうと思えるのです。⇒JOY RAE TAXTILES
改めて感心したのは、彼女の研究結果により、以下の伝説を覆したというお話。カシミヤと言われてきた正倉院の敷物「花せん」(毛氈)の文様部分は、研究の結果、実は羊毛圧縮(摩擦)を加えた伝統的手法フェルトであると発表したとのこと。
●「薬膳スープと中華饅頭をたのしむ会」 LAB&Kitchen
スープの先輩と勝手に呼んでいる有賀薫さんの薬膳スープのイベントに参加。まずはベースとなる中華出汁の説明と味比べ。肉のスープの中でも豚鶏ミックス「マオ湯」の比較。そこに豚足や豚骨、鶏のガラを加えて煮出した「白湯」と、肉だけの「清湯」の味の違いをお味見したり。
最初にスパークリングワインをいただきながら塩味なしの「マオ湯」のお味見に没頭し。そうしているうちに、ごま油でしょうがを炒めるたまらない香りがキッチンに充満し、「麻油鶏(マーヨージー)」という鶏としょうがのスープが完成。料理は好きでいろいろチャレンジするほう。既に存じている料理でも、改めてお手間を拝見させていただいたり、人とあれこれ会話したりしながらレシピを鑑賞するのは面白い。アート鑑賞的に楽しむのも乙。レシピを文字で見るのはネットワールドで可能な時代。コンロの前まで行って汁の状態や焦がし具合を眼でみることは記憶により残る。今後いちいちレシピを引っ張り出してこなくても感覚で覚えていられるのです。
そんなこんなしているうちに、はなうた食堂の伊藤尚美さんがつくる中華万頭が蒸籠から登場。カラダがほかほかに喜んでいます。
2杯目の白ワインをいただいている頃には、生薬とよばれる乾燥植物を使ったスープが完成。冷え込む1℃の東京中心地を歩くのも気持ちがよく「ストール一枚」か「薬膳スープ一杯か」というくらい完全にカラダは芯まで温まったのでした。
「帰り遅いけどこんなスープならつくれそう」(文響社)2月16日発売。以前スープラボで出会った編集者 野本有莉さんと有賀薫さんの興味深い一冊。https://www.amazon.co.jp/dp/4866510498/
●「墨と金 狩野派の絵画 展」根津美術館
狩野派とは、室町時代中期(15世紀)から江戸時代末期(19世紀)まで、約400年にわたって活動した親・兄弟など血縁関係を主軸とした画家集団。一方の琳派は芸術家の個人的な傾倒により断続的に伝わった同傾向の表現方法を用いる流派。
狩野派は、学んで代々子孫に伝えるという意味で「学画」を重要視したとのことで、オリジナリティこそ欠けるけれど同品質のクオリティを長きにわたって保ち、時の権力者とも結びつくことができたのだそうです。対する言葉として「質画」(天才)を持てば、存続の危機におちいるという考えは“伝統”という意味でとても興味深く“つたえること”の重要さを想いながら鑑賞しました。現代は、天才を崇め、人より勝ったものをつくる者を勝者とするばかりに、伝統を守る職人が減ってきているのかもしれません。芸術を失わないための「智」を垣間見るような満足感ある展でした。
それでも兄弟間においては優劣というか、光と影はあったようで…。お気に入りは、狩野尚信の「瀟湘八景図巻」。余白の美あふれる水墨画は、次男ゆえの悠々とした作風とも語られているそうです。兄の探幽の作品は有名ですが、弟は若くして亡くなった上に、納得いかないと作品を捨てるタイプだったそうで、つたえる=受け継ぐ人が少なかったようですが、息子の常信は、父ゆずりの大らかな作品を書き写していたようです。
最後に、写真は根津美術館の庭園です。この日は、突然空が暗くなり、あられがコロコロと降ってきたりの天候。その前の週にたんと積もった雪が墨絵のような世界をつくり、池は凍り、時がとまったような風情がありました。花が咲きほこる庭園ももちろん良いですが、色の少ない墨絵のような冬の庭園美術館もおすすめです。