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2021年
1月
15日
金
ギャラリーと相談を重ね、感染拡大防止を考慮し、下記の通りで個展を行うことに決定いたしました。みなさまの静粛な気持ちを乱さないように、しかしながら、こんな時だからこそ、工芸、アート、芸術の温度を伝えたいと思っています。
永遠につくり続けられるわけではないからこそ、「今やれること」「今しかできないこと」として、今のコッチョリーノに込めた想いをお楽しみください。
お手数をおかけすること、少人数制になるためご希望に叶わないことがあるかと思うと大変心苦しいのですが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
以下、ご一読ください。
●「ご予約 」(応募期間:1/23日〜30日)
お申し込みの方法・応募ページはギャラリーEcru+HMのHP をご覧ください。
●「オンラインショップ(先着順)」
ギャラリーHP内にて開催予定です。現在、日程について検討中です。会期後半、または会期後を予定しており、ご来廊客が優先となりますので、オンラインでは、定番作品と、今回の展示作品一部のオーダー受付を個数限定で予定しています。(過去作品のおつくりはしておりません)
●「お問い合わせ」
ギャラリーにお問い合わせくださいますよう重ねてお願いいたします。
心苦しいお願いの羅列になってしまいました。
新しい世界に入るときは、神聖な門をくぐるときのように、見えないあなたに、見えない時代に頭を下げて、迎え入れてもらうものなのだと思います。失敗もあります。そのときは、また頭を下げて迎え入れてもらうつもりです。
長期戦となり、業種、環境、地域、状況に限らず、全員にエールを送り合う時代です。すべてを平らにすることはむつかしいと思いますが、この苦境は、以前の「平等」や「平和」が、本当だったのか問われる機会だったと思っています。この1年間、いくつかの展覧会を乗り越えながら、作品をご紹介する方法をずっと考えてきました。「時間はあったのに」よくこの言葉を聞きますが、当事者になってみると「さようならとこんにちは」を同時に運ぶことがどんなにむつかしいか分かりました。
陶芸は、うつわを紹介することは、その中身まで伝えることは、わたしの糧であり、生きるための仕事です。新しい門がそこにあるから、くぐります。
ご来廊くださるお客様につきましては、ご無理のないよう、安全第一でいらしてください。
コッチョリーノ 我妻珠美
2021年
1月
05日
火
旧年中はお世話になりました。
イタリア弟子修行から帰国後、みなさまに助けられ、応援いただき、進んできました。
昨年は、独立工房を設けて20周年でした。土鍋冊子を一新してポップアップパーティしようなどと、考えていたのですが、暗雲が晴れることなく年を越してしまいました。
ミラノの師匠は(照れながら覚えていないというけれど)、帰国の際「独立工房が10年続いたら報告に来て」と言いました。渡伊の切符にはギュッと目をつむり、倒れそうになっては起き上がりながら、めでたく10年経過。しかし、その時期、思春期の入口に立つ息子あり。ここで息子を置いて渡伊するほど人生急ぐことはないなと、わたしには珍しく冷静さが優先されました。
その後、2013年、晴れて渡伊。師匠と13年ぶりに再会して、工房継続の報告ができました。幼少期から料理と洗濯を教え、親が不在でも生きてゆけるよう育んだ甲斐あり、以来、子どもを置いて、毎年「旅する土鍋」プロジェクトとして数ヶ月イタリアに滞在するルーティーンを続けることができました。
人生の計画なんて、大きな山に登るようなもので、描いた通りに進まない。見えない体調が顕れたり、知らない風が吹いたりする。ひとりの一歩があれば登れるわけではなくて。予期せぬことだらけ。
20年目はふわりと越えていきました。
21年目も、暗雲は晴れません。
しかし「陰翳礼讃」という感性を持つ私たちだからこそ、この明確に見えない道を、美意識に変えてみることができるのではないか。とにかく、つくるのです。
工房といっても、自宅の一室に窯を置く狭小空間です。もっと広い工房を持つことが夢でしたが、そんな現実を考える間もなく20年は過ぎました。だから人生は長いようで短いのです。
狭くたって、個展のための作品を100点、200点と生み出します。制作と料理は似ていて、狭小空間だからこそ、合理的な脳が育まれるようで。どんなキッチンでも料理がつくれる気がします。なにより、自宅の一室に工房があったから、息子の子育てと両立できたのかもしれませんね。
20年はそれぞれです。人は成人となり、まだまだ山を登ります。コッチョリーノはまだ師匠を仰ぎますが、ここからは懸命に登った20年という山を、ゆっくり降りる段になりました。しかし下山とは、目標を降下させるという意味ではありません。登山を趣味としていたので確信しています。
いよいよ柔軟性が試される時期です。
自然だ、愛だ、平和だ、平等だと言うことは簡単だけど、勘違いしていることもたくさんあるなと思います。本当の山と平らの意味を噛み締めて、達成感に満ちる毎日を楽しもうと思います。
来月の個展開催の方法については、日々変化する状況に、柔軟に対応できるようギャラリーと検討を重ねています。こちらのHPブログのほか、下記のSNSでも最新情報を発信していきます。
2020年
12月
23日
水
今年は制作が押しているので、特別な大掃除もできず、年末感がまったくありません。冬の寒さも年々ゆるんでしまい感染症しかり、大きな地球のご機嫌が心配です。
昨晩の残りのカレーをミニ土鍋(ひとり分)に入れ、焦げないように温めます。ごはん(我が家は玄米です)をポトンと入れて、溶けるチーズも入れて蓋をして極弱火で数分。最高なお昼ごはんが完成しました。土鍋の保温性には日々感激しています。火からおろしてポットカバーなどをかけておけば、なお冷めにくいです。ものすごいごちそう感にあふれますので、お試しあれ。
お鍋も、ラップも使わない。余計な電力も使わず、ごちそうさまをしたら小さな土鍋ひとつと、木のスプーンをささっと洗っておしまい。気分よく、午後の工房がんばれそうです。
陶器のかけらを意味する「コッチョリーノ」は、大きく視点を広げて「地球のかけら」です。
▶︎定期的にドキュメンタリー映画を観に行っています。先日は「シード〜生命の糧〜」を鑑賞。▶︎わたしを含めて、畑で野菜をつくる人が増えたのはうれしいことですが、野菜や果物も、生き物です。命を無責任に育てたくないなと思って、命の源である「種」のことを知るために観ました。▶︎近視眼的にならないよう、可能なかぎり、ドキュメンタリー映画は観賞会に出向くのが好きなのですが、オンデマンドなどでも観られる映画だと思います。とても美しい映画です。種のことはもちろん、感染症のことなども冷静に考える機会となりました。
2020年
12月
17日
木
「世界のスープ図鑑」佐藤政人 著 (誠文堂新光社)。
佐藤氏は、昨秋の出版後、写真展が開催されている期間に来日され、土鍋のワークショップにもご参加くださいました。まさか、そのあと、こんな世界になるなんて思ってもいなかったわけで。遠い昔のように切なくなる胸を押さえながら、早く世界が開かれますうようにと、この1年間でもっともページをめくったレシピ本かもしれません。つくれなさそうなメニュがあっても、最初から最後まで読んだし、気が向いたら何度もページをパラパラとランダムにも読みました。
図鑑と題するだけあって、厚みが3センチもありますが、ペタンとページが寝る綴じ目になっており、読めば読むほどページごとにきれいに開きます。数冊、贈り物にもしました。手にとった人たちは声を揃えて「図鑑みたいでうれしい」(タイトル図鑑よ!)と抱きかかえます。そして、本棚の一番いいところに置こう!なんて言ってくれます。
スープ「カルド・ヴェルデ」(温かいグリーン)は、簡単という理由が一番なのですが、もう本を見ないでもつくれるようになりました。食材の切り方や量、水分や塩の量も適当です。それでもできてしまう。それが家庭のマンマの味(郷土料理)なのかもしれません。
本来の材料「コラードグリーン(葉物)」は手に入らないので、店頭でケールを見つけると、このスープをつくろう!と思うのです。ほか、チョリソーが要となるのですが、アイルランドの塩豚やイタリアのスペック(ベーコン)、そしてこのレシピに出てくるチョリソー(腸詰)などは、見つけられても高価。出費を覚悟すればなんでも手に入る、やろうと思えばつくれる日本ですが、家庭料理をサッとつくるのに、それはないなあと思っているので、ちょっとだけ良さそうな粗挽きソーセージで代用。永遠に本場の味が再現できないけれど、これも、心おどる「夢みるメニュ」の醍醐味なのです。
隅から隅まで読める料理本が好きです。
料理を主役にして展開される物語的なレシピや紀行が好きなのです。
「時短だ」「便利だ」「楽ちん」みたいな現実だけのものより、たとえ自身がつくれなくても、いつかつくりたい「夢みるメニュ」と、これならつくれる「現実メニュ」が交差している料理本は奥深い。夢は読み、現実はつくる。料理本というのは、著者のお人柄も香るのですよね。
▶︎今週は「利他と料理」土井善晴・中島岳志(ミシマ社)と「世界の台所探検」岡根谷実里 著(青幻舎)を一気読みしました。▶︎窯たきが迫っていたので、工房で仕事しながら読破。▶︎後者はタイトルの通り世界の台所をめぐる話とちょっとしたレシピ付き。泣かせる物語でも切ない旅物語でもないのですが、90年代を過ごしたイタリアの台所から、2013年から毎年イタリアをまわった「旅する土鍋」の台所が走馬灯のように頭をめぐり、寒い工房で鼻と目がジーンと熱くなりました。この中から何か料理をつくったら、感想を少し添えようかと思います。▶︎さて、休憩時間終わりです。工房に戻ります。
2020年
12月
15日
火
料理研究家である堀江ひろ子さんと後藤アナが登場する「きょうの料理 −父さんのきょうからキッチン−」(12月15日21:00放映/16日11:00再放送)は、クリスマスに向けてグラタンとミネストローネでした。そのミネストローネのうつわとして「カオカップ」使っていただきました。
堀江家の母娘は、コッチョリーノの展覧会ごとに、土鍋から小さなお皿まで、実はいろいろなうつわを選んでくださっていて、カップはその中のひとつ。取材、料理教室、各所でうつわを使ってくださっているのです。お忙しいのに毎度足を運んでくださる展覧会では、その場にいるお客さまに笑顔で料理のコツなんか教えてくれちゃったりして大盛り上がり。おばあちゃま、お母さま、そして「旅する土鍋」もご一緒した娘さわこ、料理家が三代つづく理由は、大家族全員ふくめてお人柄だと思います。
放映の前にお知らせすればよかったのですが、すっかり遅くなりました。
今ならまだNHKプラスというアプリで再放送(無料)が観られるようです。
直火、オーブン、もちろん普通のカップとして使えます。お茶やスープとしてだけでなく、スープを温め直したり、少し根菜を煮たい時などミニ土鍋としても使えます。
同じものではありませんが、次回2月の個展でも「しのぎカップ」(カオカップやワンコカップ)のほか、もうひとまわりサイズアップした「スープカップ」(定番)を並べる予定です。
2020年
12月
13日
日
外側だけみて急ぎなさんなよ。
そんな声が聴こえる、ろくろの内側から。
今、世界はだれもが正解がわからない状況にいて、きっとこの先も正解なんか表れないでしょう。事実と虚構、それは内側にあるのではないかな。過度に期待はせずに「願い」生きているというのが「本音」でしょうか。未来に生きようとしている人は、外側が閉ざされていても内側をはぐくんでいるなあと感じます。
ああいう形になあれと、ひとつひとつ内側から「願い」をこめながら土をひきます。ろくろびきのうつわは、内側を考え、内側からはぐくむオブジェクトです。外観デザインは使い勝手や景色として想いに残るものなので、内側から形を生んだら、外側にも注力します。
茶碗や鉢、土鍋の本体などは、ろくろの上で土を上げてゆき、中身を想像しながらひきますが、土鍋の蓋というのは「逆さま」です。湯気がどう上がってまわるか逆さまの「裏側」を想像しながらひくのです。なに言っているのか?って感じですね。動画でごらんください。
想像力は、内側にあり、ときに逆さまなんです。
2020年
12月
09日
水
電子レンジが壊れて2ヶ月くらい経つだろうか。
すっかり「ない」に慣れてしまいました。慣れたというより「代替」の思考がよく働くというか。とにかく発想がわいてきて、そうなると土鍋の存在が本当にありがたいのです。
わたしたちは本当に忙しすぎる。
子どもを育てて仕事して、実に時間がなかったことを思い出します。子どもが育ったら育ったで、もっと仕事をします。生きるのに大変お金がかかる世界に住んでいるからかもしれない。
「便利」は、どんどん求めてしまうもので、行き着く先は「なにもしない」ということ? 「便利」を「情緒」に置き換えらればこれ以上のことはないけれど、毎日そんな余裕があるわけでもない。けれども、はたらく土鍋を見つめていると、「まあ、ゆっくり」「このくらいでしかたない」と、いい意味でレベルを下げて、余裕を生み出すことができるなって思うのですよ。
こっちの方がイイ、それはダメとか、先を越す、追い越されたという、時間の速まわし的なものが、どんどん情緒をなくしてゆくのではないかな。
土鍋は温まるのが遅いです。それが魅力です。人生の中で大きく見れば大したロスでもない。土鍋を見つめている時間はその代わりに情緒をくれると思うのです。子どもは空腹に泣くかもしれないけれど、時間の価値を教えないと、先の未来が不安だなぁって思う。発酵が見直されているのも、時間をかけて生きているものが愛おしいと気づくからではないかな。わたしは、即席ラーメンだって、インスタントスープだって便利だからいただく。欠けた情緒を、時間をちょっと戻すように、土鍋やうつわで補うのも悪くない。
さて、壊れたものはオーブンレンジだったので、オーブンがないのはさびしい。どうするかな。
最後に、電子レンジなしでも、冷凍ごはんをおいしく食べる案。以前は、余ったごはんや冷凍ごはんを一度解凍してドリアをつくっていたのですが、今回は冷凍ごはんをそのままシチューに入れます。そんな日のために、小分けに冷凍すると便利です。
①残ったシチューに冷凍ごはん入れて閉蓋して温める。
②ぷくぷくしたら焦げるサイン。底からかき混ぜて数分。
③火を消して閉蓋20分くらい放置。
④再び温めなおし、コンソメ1/4カケ(または塩)、仕上げに胡椒、最後にチーズで閉蓋。
▶︎イタリアに「旅する土鍋」巡業するときは、電子レンジや道具に頼る料理はできません。どこの家庭にもそれがあるとは限らないからです。▶︎今夜は父の命日ですが、特別なことはしません。故人はお寿司が好きでした。とても忙しい日でしたから、買ってきたお寿司を食べるでしょう。情緒はうつわで補う予定です。
2020年
12月
01日
火
晩秋から冬に変わりましたね。
ブロッコリーの芯と、ひよこ豆の余りと、ほんの数センチだけ残ったベーコンがあったので、ジャガイモと玉ねぎを足して、あたたかい野菜のスープに。トマト缶を加えてくつくつ煮ていると、冬だというのに、あの日のアマルフィの熱い風をふいに思い出しました。
たまには、コッチョリーノでないうつわもご紹介しましょう。
ナポリのアマルフィ海岸沿いを南東に行ったところに、ヴィエトリ・スル・マーレ(地図)という陶器の町があります。海の上のガラスという意味の名がついた、陶工房がたくさんある小さな町。今や観光地であり、陶器としては「ザ・イタリア土産」といった印象かな。風光明媚な町のあちこちに、陶タイルやオブジェが置いてあり、店先には庶民のうつわからアーティスティックなものまで並んでいて、日本でいうと有田や伊万里の町に似ています。
何度もこの町を訪れたことのあるイタリア人のルイーザとスザンナとわたしの3人は、クルマでわいわい出向いたわけですが、断崖絶壁の町にたどり着くまでに、何度も大きな観光バスとすれ違い。これにハラハラしていたのはどうやら私だけだったようで。
町の店先には同じような絵柄のうつわが並びます。
友人が買ったことあるという工房に入り、赤で青のポイントが入ったニワトリ絵のうつわを選びました。「重いから1つか2つしか買えないな」というと、友人らは「送っちゃいなよ!」とあおり、店主はいい調子でそれに乗り「アメリカや日本にナンドーモ送ったことあるからダイジョーブ!」と鼻を天井に向ける。「わたし陶芸家なんで逆に聞きたいんだけど、日本からイタリアに送って割れなかったためしがない」と話すと、「ダイジョーブ割れたことなんてないっちゃっ」みたいなことをいうので、信じた。いや、胸騒ぎはしたけれど、信じました。
「じゃあスープボウルとディナープレートを同じ柄で6枚ずつ」と、そこにいた職人に言うと、「マカセトケー窯で焼いたら送るよ」と、満面の笑みで、大変うれしそう。そのわりに1ヶ月後、帰国すると、まだ荷物は届いていなくて、ハラハラとワクワクでその到着を待ちました。
ある日、大きな段ボールが届きましたが、なんだか嫌な予感がして、開封前、開封中、開封後と、写真を撮りました。ああ、予想通りというか、予想以上に、大皿はすべてわれ、ボウルもいくつか割れていました。あああああ〜。すぐに工房に写真を添えてメールをしたけれど、返事はなく。あと1週間、いや2週間待って返事なかったら電話するぞと思っていた頃、もうひと箱、届きました。中身は、注文通りの数。「もう一箱、届きましたけど」とメールすると「弁償だ、割れた品は送り返さなくていい」とのこと。
もう一回、あの町に行ける日が来るといいな。
金継ぎをして一枚持って行こうかな。
ありがとう。また会える日まで。
2020年
11月
18日
水
工房20周年にもかかわらず、春夏と今年は旅とプロジェクトを自粛していましたが、この秋、友人の計らいで「旅する土鍋」のご縁をいただきました。先方の町や宿にご迷惑をかけぬよう安全第一で。プロジェクトは人を集めず、こっそり「下見」という気持ちで。次への「希望の足あと」をつけてこようと思って、焦らず穏やかな気持ちで向かいました。
ご縁をつなげてくださった友人と相談し、浅めの中型「土鍋(3合炊き)と、火にかけられる「ポトル」をカバンに詰めて、丹後半島に舵を切りました。
朝の光のなか家を出ましたが、日没の1時間くらい前にようやく到着。
新幹線で京都に着き、土鍋入りのスーツケースを久しぶりに早足でひっぱり、福知山線「特急はしだて」に乗り換え、これまた小走りに丹後鉄道「丹後の海」に乗り継ぎ、そこから丹後海陸交通ローカルバスにゆられて1時間。わりと空いた、いや貸し切りのような丹後鉄道やバスで、丸一日の移動。
若狭湾にたどり着いたところで、駅前の定食屋さんで大きな焼き魚を二尾とわたしにとっては大盛りごはんを食べたので、遠足のおやつは無用でした。
特筆すべくポイントは、福知山から乗った丹後鉄道「丹後の海」がインダストリアルデザイナー水戸岡鋭治氏デザインであり、驚くほど上質であったこと。ご時世柄、車掌さんに話しかけて良いものか迷いましたが、車内のオブジェについて遠慮ぎみに質問したら、降りるまでずっと説明してくれました。旅人を待ってくれていたのか、拒まれているのかは、マスクの下に半分隠れた笑顔でもわかるものです。この旅の不安が一気に吹き飛びました。
「秋の日は釣瓶おとし」とは、なんて美しく切なくこの時季の日の入りの速さを表現したものだろうと感心します。お世話になる宿 CAFE&BB guri に着いて、土鍋の無事を確認し、コーヒーと手づくりケーキをいただくころは、窓からかろうじてオレンジ色の夕陽が弱くさしこむ時刻でした。
CAFE guriの千明さんの地元の食材を使ったケーキメニュからひとつ選ぶのはむつかしいのですが、柿好きなので「丹後の柿のタルト・タタン」を。guriブレンドは、なんと「ポトル」(コッチョリーノ作)で淹れていただきました。夕陽の残曛(ざんくん)と、CAFEguriの當間千明さんの笑顔は心地よく、こんなに悩ましい時期に、この町に迎えてもらえたことが、胸が熱くなるほどうれしかったのです。
CAFE&BB guri
古民家を改修した一組限定B&B。建築家のご主人が手がけたお部屋のセンスは、良き伊根の古民家を残しつつコンフォータブルな居心地。今回は、ご時世柄、泣く泣く一泊でしたが、檜のバスタブやお布団の心地よさに、長居したくなる宿です。朝食は、カフェメニュ同様、すべてパートナーの千明さんの手づくり。地元の食材を使った皿の数々に歓喜をあげてしまうほど。感染症対策も、充分にお気を使っていただきました。
小さな町だからこそ、現在も生きる漁村だからこそ、一日のはじまりとおわりも都会とは異なります。観光客の時間刻みや、声のトーンで過ごしてはいけません。旅とは「その地の人々の暮らしに耳をすませること」が最大のマナーであると思っています。加えて、大変むつかしい感染症に悩む時代です。地方の活性と、その反面にあるリスク。誰も正解はわからない中で、「考え方について対話すること」で、互いの安心と安全を確認しあい、充分にふるまいやケアに気を配らなければ。
感染症の拡大がおさまらないゆえに、観光地の暮らしが心配ではあるものの、この先は出張や旅を控え、活動範囲をまた自粛しなければならない時がきてしまいました。お取り寄せなどして最大に応援してゆきたいと思っています。感染症がおさまったら、ぜひとも伊根に出向いてみてください。
次回は、地元野菜を盛りつけていただいた土鍋、朝の浜売りなどについて。
2020年
11月
06日
金
自分の職業である陶芸について、ただただ土と形のことばかり考えていても、つまり自己防衛ばかりでは、文化の向上はなく経済も回らないでしょう。
文化を質よく元気にするためには、食、産物、工芸など、互いに応援エールが交わせてこそだと思っています。うつわの制作でてんてこまいになり、その余裕がなくなる期間ももちろんあります。しかしながら、どこかのタイミングで、自分の陶芸道から脇道にそれ、それぞれの文化にあいさつをしに行くと、刺激的なチカラをもらうことができます。
今年はあきらめかけていた「旅する土鍋」。
安全第一のなかで、日本のおいしい宝を探しに、西に向かおうと思っています。
静かに、強い意志を持って。
さて話は、イタリア大使館とイタリア文化会館主催のイベント「イタリア料理週間2020」。
EPAの施行(外務省HP参照)は、欧州をはじめイタリア食材(農産物の輸入)に頼もしさを与えてくれた一方で、日本の農産物への応援も忘れてはいけないと、より強く思うようになりました。良好なバランスをうまく取りながら、互いの「文化」を応援していきたいと思っています。
自身の中では「日本の農作物」と「イタリア文化」を応援する週間という気持ちです。昨年は「ペッレグリーノ・アルトゥージに捧げる一日」イベントに参加し、カーザ・アルトゥージから来日したシェフのパスタづくりや、アルトゥージ著 La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene(イタリア料理大全)の邦訳出版講演会に参加しました。
あいにく今年はおいしい試食などできませんが、カルミネ・アバーテ著 Banchetto di nozze e altri sapori
(邦題:海と山のオムレツ)の講演会に参加します。古くから毎年世話になっているイタリア人家族がいるカラブリアの話です。会いたくなってしまい生唾どころか目には涙が浮かんでしまう...。
さて先日は、イタリアンレストラン Domenica D'oroドメニカ・ドーロのコース料理と 成龍酒造(伊予賀儀屋/御代栄醸造元 公認の日本酒コラボイベントに参加しました。
岩本光史シェフの故郷である愛媛県西条市の食材や、瀬戸内の魚をふんだんに使ったメニュ、西条市のおいしい天然弱軟水でつくった加儀屋の日本酒。愛媛と東京を頻繁に往復していらっしゃった醸造元の首藤氏は、今年の移動自粛以来、初の上京だそうで、溢れ出るパッションで説明くださいました。
わたしの中の、日本を大切に想う深い心を再確認すると同時に、イタリアへの想いをあらためて抱き寄せる大切な時間となりました。そして同じくイタリアを想う友と、日本酒に通暁する友人と、楽しくおしゃべりしながら、いろいろと考える夜になりました。
写真は選びきれなかった写真の中から。
トレンティーノ・アルト・アディジェ州で修行したシェフ特製「北イタリア風 自家製ハム(八ヶ岳の工房仕込み)」と「瀬戸内産のサワラの酢締め炙りカルパッチョ」とシェフの故郷「西条産カブのマリネ」、秋のドメニカ・ドーロのドルチェといえば「みりんのソースの特製モンブラン」。そして加儀屋のオススメ4種の日本酒。
ただでさえ予約でいっぱいなレストランなのに、感染症対策のため、座席数を大幅に減らして営業なさっています。秋も冬も大好きなエリア外苑前駅からほど近いレストランです。
臭くて個性あるチーズが大好きな我が家ですが、さっぱりフレッシュなチーズでお気に入りを見つけました。脂肪分ゼロのフロマージュブラン。ヨーグルトのような酸味あるフレッシュチーズ。
「蒸し野菜のサラダ」にかけて、塩とオリーブオイルを少し。「野菜とチキンのトマトスープ」の上に添えて。リンゴジャムと一緒に「パン」につけたり、いろいろな食べ方をしています。
2020年
11月
03日
火
参加していた公募展「着想は眠らない 第8回」が終了しました。
場所は、蓼科の森の中にあるギャラリー。
第1回から参加しているこの展。夏が明けたこの頃は、長期イタリア滞在から戻り、多々の制作が積み重なっている頃なのですが、この展覧会には、どうにしてもこうにしても着想勝負で参加しています。通常の陶芸道から脱輪するくらいの心持ちで。
ところで、この森には、5年前に設置したいくつかの「陶のおめんちゃん」が、積雪や氷結、台風などの暴風雨に耐えながら棲んでいます。四季の彩の変化や、森の倒木や落雷をじっと見ているだけでなく、この展覧会に参加する大勢のアーティストの作品を見守っているような気がします。
(土鍋コッチョリーノの耐熱性、耐冷性の実験でもあります)
うつわという「実用」の創作には、楽しみと喜びの中に、それなりの責任というプレッシャーが知らぬうちに山積します。そこには、それをやっつけようとする無駄なプライドが宿りがちで、その作用は、創作の筋肉を固め、発想の循環が悪くなるような気配を感じます。
年1回、この公募展への参加は開放創作。コリをほぐし、循環をよくするだけでなく、うつわ制作の発想へとつながるのです。だから値段はつけていません。こわれてもいいから価値をつけません。
今年の作品は「それでも地球のかけらはまわる」で、人間が「はいっ!」と手を叩けば動き、木の枝で調教しないとすぐサボるような動くおもちゃをつくりました。でもね、本当は逆で、人間なんておちょくられて生きている。地球をはじめ、なにもかも人間の思うようにいうことなんてきかないのです。
「着想は眠らない 第8回」 テーマ:ちきゅう 2020.10.09-11.03 金土日・祝日開催 11:00-17:00 ※感染症防止のため完全予約制 ※最終日14:00アーティストトーク(関係者のみ) |
2020年
10月
30日
金
カブが大好き。
春のカブにはみずみずしくて果物のような魅力があり、秋冬のものは、甘く味わい深さがあるので、ポトフやシチュー、蒸し物などに活きますね。
野菜は「まるごと」使いたい派で、皮をむくかむかないかは、プロの料理家の「最上級」というこだわり以外は、お好みだと思います。特にカブの皮は柔らかいのでまるごといただくことが多いのですが。ミルクスープだけは、皮をむくことが多いです。食感と皮下の苦味こそ魅力的なのですが、ミルク仕立てのやさしさを優先したいから、皮をむくという感じでしょうか。
昨夜は5人前くらいの量をつくりました。
残りを「土鍋コッチョリーノ2合のサイズ(赤)」に入れて温め直していただきました。
いつもの、分量も分数もないレシピです。
①土鍋にオイルを敷き、みじん切りタマネギ、セロリ、白菜の白い部分を炒める。キューブ型に切ったベーコンも加えて炒める。
③野菜がひたひたに浸かるくらいの水を①に入れて、塩をふり中火で蒸し煮。(おいしい出汁!)
④ほんのりとろみ(※1)をつけるため③に米粉を入れて混ぜる。(3人分:大さじ2くらい)
⑤串切りにしたカブを④に加え、さらに水を加えて煮る。
⑥カブが柔らかくなったら牛乳(または豆乳)を入れ温め(※2)、塩こしょうで味を整える。
※1 とろとろにならなくても、なんとなくミルクが「おっとり」するのと、より野菜の味を包みこむスープになるような気がするので入れます。
※2 牛乳(豆乳)は沸騰させないように、グラッと動いたくらいで火を止めるといいでしょう。
最後に、隠し味も書いておきますね。あればお試しを。
カレー粉ひとつまみ、おろし金ですったナツメグ粉を入れています。
2020年
10月
21日
水
夏が終わって秋が本番になるころ、毎年、公募展「着想は眠らない」の作品納品で長野県におじゃまします。粗末ではいけませんが「いいものをつくるぞ」と力んだり、相手に期待したり、想い描きすぎたりして、どこかにしがみついたりすると、ふと気づいた時、近視眼的でおもしろみのないものになっていることが往々にあります。この作品を納品するころ、甘酸っぱいほおずきを頬ばるんだ。そんなちいさな思いくらいが、作品を丸く、赤く染めるのでしょう。
今年も、公募展の納品を無事に終え、生産者の名前が記された大粒のほおずきを買うことができました。サラダにしようか、ジャムにしようか、いやそのままパクリが一番だなと思いながら。結局、毎年チョコをコーティングしたエレガンスな鬼灯に仕上げています。
なぜ毎年このチョコをかぶったほおずきをつくるのか。
話はイタリア在住時代に飛びます。秋のセンチメンタルな夕刻、オレンジ色のミラノ街。ちいさなケーキ屋さんのショーウィンドウに並んだその姿に目をうるませたことを思い出すのです。子どものころ舌で鳴らして遊んだほおずきの郷愁感と現地のエスプリが混じり合ったそのお菓子。その名が「アルケケンジのチョコレートがけ」(alchechengi al cioccolato※)と知ってからは、勇敢な男のたち(ちいさな賢者)が歩く姿に見えてきたのですよ。そんな日の、想いを動画に込めて。
※ナス科の野菜にカテゴライズされる「ほおづき」の学名はalkekengi
2020年
10月
17日
土
急に寒くなりましたね。
たちまちお豆腐の食べ方が、冷奴から湯豆腐になりました。
今日は、久しぶりの「陶芸職人のなんちゃってレシピ」を。
湯豆腐ですから、レシピというほどのものではありませんが、池波正太郎風といういわくつき。時代小説はいまいち苦手で、彼の小説も親しんできたとは言いがたいけれど、食の話だけは好きで、確か最初に読んだのは大学生のころでした。記憶の片隅に、いつも湯豆腐の描写があって、その中の大根が「おろし」だったか「削ぎ切り」だったか、はたまた「千切り」だったかよく覚えていないわけで。今回は「削ぎ切り」ですが、「おろし」もおいしいです。「剣客商売」か「食卓の情景」「食卓のつぶやき」か、どこに書いてあったろうか。ひっぱり出して読み直し、後日ご報告することにします。
とにかくお金がなかった学生時代、友人とアパートに集まってお酒を飲みながら食べるのに、豆腐と大根はうってつけでした。昆布と湯豆腐だけでもじゅうぶんなのだけれど、そこに大根を入れると、胃袋が「満ちたりた〜!」となりました。(当時、ザ・ルースターズというバンドの歌詞に影響されていたのだと思います)豆腐と大根ふたつの食感の楽しみと、そして何より甘さが増すような気がします。
ポン酢とカボスを絞っていただきました。おいしくて、生姜もネギも忘れていただきました。
では、いつも通りなんちゃってなので、分量や分数はありません。あしからず。
昆布の敷布団と、削ぎ切り大根の掛け布団という感じでしょうか。豆腐が両ばさみでふっくら甘く仕上がりました。大根も薄切りなのですぐに柔らかくなります。
キッチンのコンロでつくって食卓に出し、15分くらい経ってもまだまだ豆腐はホカホカでした。寒くなったら、是非とも卓上コンロで飲みながら調理する楽しみも。
2020年
10月
12日
月
新宿高島屋での展覧会でうけたまわったオーダー納品が完了しました。長らくお待たせしました。(正確にいうと1点だけ後発納品があります)
2月、横浜元町での個展は、暗雲が立ち込めはじめた中、無事に終了。その後、東京に緊急事態宣言が敷かれました。都市移動の制限が解除されるか否かのタイミングでの新宿高島屋での展覧会。正直、制作していても落ち着かず、いっそうのこと延期になればいいのになんて、弱気な思いも湧きました。モチベーションを保つのがむつかしかったことを、思い出します。
高島屋をはじめ、新宿の百貨店が次々と臨時休館する前日くらいだったでしょうか。展示中の作家を応援しに行きたくて、新宿に降り立ちました。人もクルマもいないスカスカの甲州街道の赤信号が、こんなにも長いと感じたことはありませんでした。雑踏、そして色が消された鼠色のアスファルトが、ピカピカに光って見え、東京オリンピックの旗が虚しくはためきます。本来ならば、世界からの旅行客を迎え入れる街として、ごった返していたのだろう。封鎖された高速バスターミナルには、スーツケースのゴロゴロ音は皆無。その代わり、南口のアスファルトの泣き声が聞こえたような気がしました。不気味な新宿でした。
制作中、精神的に揺れ動いたのは、感染の恐怖ではなく、こんな不安である世の中で「お客様の心をどのように誘導すればよいのか」ということでした。気に入ったらアマゾンでポチすればいい品物ではありません。
すでにたくさんのうつわを持っているはずです。なかったら生きるのに困るというものでもないでしょう。でも、こんな時だからこそ、心おどるような、感動する本を読んだあとのような、そんな心の奥に入ってゆけるうつわを全国に届けたい。それがコッチョリーノの本望でした。全身全霊で土に向かっているのに「今回はコロナですから来なくていいですよ」はあんまりだなあと。
「心おちつかせて」や「心おだやかに」という流れを吹き込みたい。どうすればいいんだろう?と、制作しながらその方法ばかり考えていました。
開催者、そしてお客様にも手数がかかってしまう「電話オーダー受け付け」を強行してしまった理由はそこにありました。
移動が叶わない、人混みを自粛しなければならない、持病をお持ちのかた、さまざまな不安、嘆きが少しでも和らげばいいなと思って行いました。結果、泣いて喜んでくださるかた、医療や保育関係者、休みなく働くかた、仕事を失われたかた、様々な人の緊張した表情が緩む瞬間を拝見しました。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、ああこれ奇跡!と思うようなことがたくさん起こりました。
やってよかったなと思いますが、反省もたくさんあります。この数ヶ月で、展覧会の主催者やギャラリーのご経験は膨らみました。東京の底力を見せてくださいました。今後は、さらに良い方法で、ギャラリーやお客様に、もっと地球に寄り添っていきたいなと思っています。
SNSやブログで作品の説明はしているけれど、お客様の食生活に至るまでの喜びや悩みまで聞いて、それにお応えするのがコッチョリーノの仕事なのかもしれないと、改めて思いました。わたしは、普段の生活においては、しっかりしてない代表者です。けれど、家族そして世界の友だちを尊んでいます。旅の情景と憧れをいつも抱えています。うつわがおまけの「助言者」になれたらいいな。『未来のうつわ』へのアプローチって、本来そこが大切なのかもしれないのです。
お待ちいただいたみなさま、今回はお会いできなかったみなさま、いつも応援してくださっているみなさま、どうもありがとうございました。この記事のトップに置いた写真の作品タイトルは『世界の友だち』といいます。今回は出品していませんでしたが、なぜか複数名のかたが、会場に飛び込んできて「あの作品がどうしても欲しい」とおっしゃいました。わたしたちは、自然と求めているのです。友だちは数ではありません。心の片隅にいるかいないかくらいでもいいと思っています。
地球に逆らわず流れてゆく方法を、これからも考えて、モノやコトに落としていきたいと思っています。「世界の友だちへ」また会いましょう!
2020年
10月
04日
日
2020年
9月
14日
月
9月のイチジク「セッテンブリーニ」
展覧会の終了後、ごぶさたしています。
季節ははらひれほと、夏から秋へ変わってしまいました。
みなさま、甘く熟されたでしょうか。
イタリアでは夏の強い太陽をあびて、8月末から9月の晩期に食べる熟した甘いイチジクを「セッテンブリーニ」(セッテンブレ: 9月)と言うんだよと、カラブリアの家族が庭に満ち満ちるイチジクの実を、もぎりながら教えてくれました。今ごろ濃密な芳香を放ったイチジクが、採りきれず大地に落ちているのだろうな。
参考記事 I FICHI, UN TOCCO DI DOLCEZZA A OGNI PIATTO
花火が咲くころ
日本の、特に東京の夏は、なんだか不発な花火のようで。
恒例のイタリア「旅する土鍋」はご多分にもれずできなかったので、ご注文作品の制作を、暑さに耐えながらコツコツと。さすがに夏の制作はきついですね。
ようやく涼しくなってきたので、窯たきの準備として、絵付けに入りました。うれしい悲鳴として、数量がかなりあるので、注文順で仕上がらないことをご了承ください。悩ましいのは、この先の焼成ですべてが成功するとは限らない真実も受け止めてくださいませ。10月初旬、もしくは中旬くらいまでにはなんとか。
今年は、独立工房20周年でしたが、おとなしく過ごします。不発な花火、いつかまたみなさまとお会いしてドンと打ち上げましょう!あと10年先にドンとまとめてでもいいかしら。湿気ないようにしなくてはね。夏のおつかれ、ご自愛ください。
かしこ
コッチョリーノ 我妻珠美
2020年
6月
14日
日
「食を楽しむ vol.3」
我妻珠美・五十嵐貴子 陶展
2020年6月17日〜23日
新宿高島屋10階
10:30-19:30(時間短縮営業)
03-5361-1111(新宿高島屋 代表)
いかがお過ごしだったでしょうか。
みちくさ枝折。
道に咲く花がないときも、道に生える草を探す。
そんな3ヶ月ちょっとを過ごしていました。
世界を震撼させるウィルスは、2月の横浜元町での個展にはじまり、5月の蓼科でのグループ展を攻撃し、もうすぐ始まる新宿高島屋での展覧会に、不気味にも道をひらいた。開催するのかされないのか、最後まで標識が見えず、なかなかお知らせできませんでした。(外出したくなる気持ちを抑えるべく控えていました)
さて、東京アラートも解除となり、本格的に開催決定。マスク着用や社会的距離をとるための策など、条件はありますが、展覧会は以下の通りです。
今回、我妻珠美は、写真や動画などでも作品をご紹介しやすいように、ご好評いただいております「定番作品」をメイン展開する予定です。みなさまの無理のない移動を顧慮し、全国よりお電話などでお買い求めいただけるよう模索中です。まいにち使える土鍋の使用感やサイズ感がわかるよう「うごくカタログ」として『まいにち土鍋』を発信してゆきます。くすぐるようなBGMや、うつわのかすれる音は、動画だからこそ。
料理の動画ではありません。「料理のうつわ」動画です。
お時間あるときに、どうぞご覧ください。
2020年
4月
16日
木
もう10年以上前になりますが、子どもの学校で「大豆」を深く研究する課題があって、自宅でお豆腐をつくる実験をなんどもくりかえしていたことがありました。固まるお豆腐の量より、おから生産量のほうが多いことに驚きながら毎日お豆腐をつくっていました。おからの消費が追いつかないほどで、もちろん白和えはヘビロテ、その他につくったのが、このおからピッツァです。
ふつうの生地のように膨らみませんが、モチっとした食感に味わいがあります。
トッピングもヘルシーに、山梨の野菜ボックスの中に入っていた有機ほうれん草と花わざびをトッピング。ほうれん草の赤い根っこ部分もみじん切りにしてパラパラと。
長年ご愛顧いただいているコッチョリーノの「ピザ皿」(またの名はケーキ皿)で。
※メインの仕事はうつわ職人なのでいつも適当な分量、分数でつくっているので「なんちゃってレシピ」は自分のためのおぼえがきのようなものです。
材料A
おから(100g)
地粉(200g)
砂糖(大さじ1)
塩(小さじ1)
材料B
豆乳(150g)
オリーブオイル(大さじ1)
材料C
トマトソース(ピューレなど)
アンチョビ(あれば)
チーズなどトッピング具材
仕上げのオリーブオイル
➀ 材料Aを混ぜる。
➁ 1に生地の加減をみながら豆乳を加える。
➂ 2の生地にくぼみをつくりオリーブオイルを流してこねる。
➁ 1時間ほど生地をねかせる。
➂ 生地を薄く伸ばしてトマトソースをぬり、アンチョビやチーズなど、お好みの具材をトッピング。
➃ 200℃に余熱したオーブンで15分焼く。(オーブントースターでも可)
【ほうれん草と花わさびピッツァ】
トマトソース、チーズだけ乗せた生地をオーブンで焼き、仕上がり時間5分前に葉物トッピングをして、再度5分オーブンで加熱。仕上げにオリーブオイルをかけて完成。
2020年
4月
14日
火
北海道から行者にんにくが届く季節になりました。しょうゆ漬けも好きですが、横山アディナさんのレシピでつくる「春のポタージュ」が毎春の楽しみなので、今年も、初物はこのポタージュです。
ネギ属の山菜であり、ネギのうまみと絡みと苦味が全部あわさった贅沢な旨味。逆をいえば、独特の臭気があるわけで、アイヌの民間信仰として興味ふかい話が書いてありました。天然痘などの伝染病が流行した際、村の入り口に行者にんにくを掲げ、病魔の退散を願ったということです。
山にこもる行者が滋養強壮のために食べたけれど、滋養が強くて禁葷食(きんくんしょく)とされたとか。春の山菜でデトックス効果を期待しつつ、このご時世だからこそ滋養をつけつつ、アイヌ民族のまじないも信じたいですね。
数年前に入手した横山アディナさんのレシピ本「キレイの国 東欧のおばあちゃんが教えてくれた野菜でつくる美人スープ」を折り目がつくほど参考にしています。それもあって去年は東欧に土鍋視察の旅に出たわけです。今年は旅もキャンセルしましたが、その分また東欧料理の本を読んでいます。
アディナさんのレシピなのでつくりかたの詳細は割愛しますが、わたしが使用した材料と参考動画をどうぞ。土鍋コッチョリーノで炒め、煮て、温めてそのまま食卓へ。渋めのグレーの新作土鍋でつくりました。
使用材料(オリジナルレシピとは異なります)
行者にんにく
タマネギ
長ネギ
オリーブオイル
熱湯
塩
こしょう
たっぷりめのオリーブオイルで具材がやわらかくなるまで炒めます。
熱湯を加えてさらに1時間ほど煮込んだあと、フープロ(or ミキサーやブレンダー)にかけ、土鍋に再度もどして温めながら塩こしょうで味を整えます。オリジナルレシピにはありませんでしたが、最後に魚醤をたらして仕上げました。
2020年
4月
13日
月
山梨から有機野菜を送ってもらい続けること17年間。最初は、若いご夫婦の挑戦への応援という気持ちではじめました。当時、息子は物ごころついてきた3歳。東京のまんなかにいながら、農業や環境にも興味を持ったこと、何より野菜好きになったことには感謝しかありません。
春一号の箱には、まん丸、つやつや、大きな真珠のようなかぶが入っていたので、ありがたくいただきたきました。素材の味がひきたつように、いつもよりゴロッと大きめに切って、さっぱりしたミルクスープに仕立てました。土鍋ひとつでつくれる米粉でとろみをつけるミルクシチューです。
毎回、言い訳している「うつわ職人のなんちゃってレシピ」ですが、今日はもっとラフにいきます!料理のプロではないので、材料をヒントに、ご自由にアレンジきかせてつくってください。
★印は、必要な量によって倍数にするくらいの参考量にしてください。
しつこくも毎回お伝えしたいのは「土鍋でつくって食卓に運べますよ」(調理器具と盛りつけのうつわが一緒なので手間が省けますよ)、もしくは「土鍋で温めてうつわとして食べられますよ」(洗いものが減り環境にやさしいですよ)というようなことです。それではボナペティート!
<材料A>
かぶ
新にんじん
新玉ねぎ
ベーコン
コーン(缶詰)
月桂樹の葉
<材料B>
水(★1カップ)
ブイオン(★ひとかけ)
<材料C>
牛乳(★1カップ)
米粉(★大2〜3)
<材料D>
塩、こしょう、あれば魚醤
➀ 材料Aの野菜を串切り、ベーコンはサイコロ状にして土鍋で炒める。
➁ ➀に材料Bと塩を適量入れて野菜がやわらかくなるまで煮る。
➂ ➁に混ぜ合わせた材料Cを加えて、かきませる。
➃ 塩こしょうとで味を整え、あれば魚醤をたらす。
2020年
4月
12日
日
「陶箱のうつわ」でアボカドタマゴを焼きました。
アボカドは半分に切り、種を取り、そこにタマゴの黄身を入れて、ようじで(家人はお箸で)プツンと穴を開けます。「箱のうつわ」にクッキングシートまたはアルミホイルを敷いて250℃のオーブンで10分(オーブントースターや魚グリルでもできます!)焼きます。残っていた生ハムをのせて粉チーズをふってみましたが、もちろんそれがなくても十分おいしいです。
あ、残った卵白は捨てないでくださいね。おみおつけやスープ、お菓子づくりに使ってください。
早起きすると「復活祭のおめでとう!」のメッセージがイタリアの友人から届いており、師匠の元気な笑顔も見ることができました。文字の羅列はいつも通りですが、ビックリマークや絵文字で伝えることのできないものだからこそ、互いを労い、念じるように返信します。わたしは信者でありませんが、郷にいれば郷の文化を、客観的に見ることができ、お祝いのの気持ちを送ることができます。
近く迫る展示がいくつかあるけれど、ひとつひとつ、冷静に考えています。身銭を削って放浪していたので、土鍋を持って世界をまわる「旅する土鍋」資金ポテンシャルは落ちてしまうかもしれないけれど、情熱だけは残る、コッチョリーノの土鍋のように、余熱で動こう。相変わらず群れをなすのは不得意だけど、人やモノに寄りそって、余熱を働かせようと思っています。
まずは、それらを助けてくれていた師匠や友に復活祭のおめでとうを言うくらいしかできません、
月のように少しずつかけても、いつかふくらみまた満月になるのだろうと思います。そして、世界はタマゴのように儚いけれど、エネルギーが加わればかたまり、時にとろりとあなたをうっとりさせる神通力かもしれなくて。
2020年
4月
09日
木
2月初旬の展覧会が、なんだか遠いむかしのように感じてしまうのは、全世界がおそれあわてているからでしょうか。少し前に待っていた春のことが、風となる。
そんな中でも「はるのうつわ展」でおひろめした新作土鍋は、我が家での登場を待っていました。この新作で春のたけのこを茹でようと思っていました。これから、この新作は土鍋コッチョリーノのアイテムに仲間入りすることになりそうです。
水は3ℓ入ります。これから、どんな用途に便利かどうか、他の土鍋アイテム同様に、ご紹介してゆけたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。
◉土鍋コッチョリーノ(深鍋3ℓサイズ)
かなり大きなたけのこでした。
硬い皮をむき、穂先を斜め切りして、縦に包丁を入れて、火の通りをよくします。
たけのこに米ぬかと鷹の爪をまぶし、3ℓの水が入る土鍋に、2ℓの水を入れて1時間半ほど茹でました。ぬか入りの湯が吹きこぼれそうになるので、菜箸を置いておきます。箸が泡をつぶして、吹きこぼれを一時的に防止するそうなので、それに気づいたら弱火にします。
串が通るようになったら火を消して、そのまま冷まします。保存方法はいろいろあるようですが、わたしは冷めたたけのこを食べられる柔らかさまでむいて、そのまま茹で汁のなかに沈めて冷暗な場所で保存2〜3日の間に食べます。
◉土鍋コッチョリーノ (深鍋3ℓサイズ)
材料A
洗い米(2合)
たけのこ(イチョウ切り180g)
材料B
出汁 (300ml)
しょうゆ(大2.5)
みりん(大2.5)
材料C
木の芽(粗きざみ)
➀ 土鍋に材料Aを入れ、材料Bを加えて静かにぐるっとかき混ぜる。
➁ 中火5〜10分で沸騰したら、弱火で13〜15分。10分ほど蒸す。
➂ あれば木の芽を添えて完成。
※おこげは、炊きたてより冷めてからのほうがはがれやすいので、少し辛抱しておいしいおこげは最後にどうぞ!焦げついた土鍋は、焦げ部分に重曹をまき、水を入れて沸騰させる。冷めるまで待ってスポンジで洗います。
2020年
4月
07日
火
前回のすいとんから、今回は米粉でつくった「米粉のすいとん」です。
すいとんといえば「小麦粉」と水を練ったものですが、米粉でつくるとさっぱり、つるんとした食感になります。白玉粉で、白玉団子をつくる動作とまったく同じ。
残ったおみおつけがあるから食べよう!(でもごはんがないや)なんていうときに、ひとり分だけ米粉のすいとんをつくります。一人分だけ(大さじ4だけ/約36g※)つくるような時は、まな板やのし棒も用意せず、粘土あそびのように手のひらでクルクルします。おもしろい!
※もっと食べたい時は増やしてくださいね。
米粉は小麦粉より粘り気が少ないので、丸い形でなく、うどんのような細い棒状にして落としました。火の通りも早いです。
米粉とは、うるち米やもち米を粉にしたもの。
上新粉:うるち米を精白→水洗い→乾燥→挽く
白玉粉:もち米を精米→水挽き→沈殿したものを乾燥
もち粉:もち米を精白、水洗い→乾燥→挽く
団子粉:うるち米ともち米を精米→水挽き→沈殿したものを乾燥
(おみおつけ一杯分に入れる分量)
米粉 大さじ4
水 大さじ4(少しずつ入れて様子をみる)
※大さじ1:水(15g) 小麦粉(9g)
➀ 米粉と水を練って、白玉団子くらいの量にささっとまるめておく。
➁ あたためた汁に、➀を紐状にして落とす。(動画参照)
➂ 弱火で3分、火を消して余熱で2分で完成。
2020年
4月
05日
日
トマトスープからの「アレンジ2」です。
ごはん炊き忘れた!とか、主食を別にとるまででもないけれど、ちょっとボリューム加えたいときに、すいとん(Wikipedia)便利です。江戸時代から、すいとん専門屋台などもあったと書いてありますが、神田で関東大震災を経験した祖母も、東京でよく食べたすいとんの話をしてくれたものです。地方により様々な魅力ある汁に入れるすいとん料理も興味深い!
「なんちゃってレシピ」では、トマトスープに合うよう、イタリアのおいもと小麦粉でつくるニョッキの発想から、風味として粉チーズを和えています。
◉土鍋コッチョリーノ(1合炊きサイズ)でつくる場合
原型トマトスープ🍅
+トマトピューレを足し塩で味整える。
(インスタントでも可)
<すいとん材料>
小麦粉(大4/12g)
水(大4/60cc)
塩(少々)
粉チーズ
➀ 小麦粉と水、塩を手で練って、7個分に分ける。
➁ ➀をまるめて真ん中をやさしく指でつぶす。
➂ ➁に粉チーズを振りかけておく。
➃ 温めたスープに➂を落とし蓋して弱火3分。
➄ 火を消して余熱調理5分。
ちょっとグルテン取りすぎたかなと思った時は、米粉のすいとんがおすすめです。
次回は米粉のすいとんを紹介します!
2020年
4月
03日
金
前の記事に書いた「ふろふきトマトスープ」からのおじやです。なにもむつかしいことはひとつもなく、ただ「スープを少し残しておいてね」と書きました。それは、とっておきのおじやをつくるためです。
この数年、土鍋の利点に、作者のわたし自身そうとう感激しているのですが。
そのひとつに余熱調理による水分蒸発の調整がうまく利くということ。土の特長として、鍋の本体と蓋、ともにまんべんなく伝熱するので、早めに火を消して余熱でごはんの水分や野菜の水分を、焦がすことなく飛ばせるのです。
そんな余熱調理をうまく使ったおじやです。
トマトスープについてはこちら→🍅
●ミニ土鍋(1合炊きサイズ)
トマトスープ 🍅
炊いたごはん(または冷や飯)
ブイヨン(1/3 かけ)
月桂樹の葉(ローリエ)
粉チーズ(お好みで)
タマゴ(1個)
塩・こしょう(お好みで)
➀ 月桂樹の葉を入れてトマトスープを土鍋で温め、
ブイヨンと残りごはんを入れて煮込む。
➁ ➀に粉チーズを入れ、タマゴをわり落とし、
蓋して弱火2〜3分。
➂ 火を消し、蓋をしたままタマゴが半熟になるまで
数分蒸らす。
➃ 米が水分を適度に吸い、タマゴが半熟になったら完成。
➄ お好みでこしょうをふって。
※昆布だしで仕立てたトマトスープにはオリーブオイル、
ローズマリーの香りが効いているので、ブイヨンはお好みで。
塩だけでもよいでしょう。
2020年
4月
02日
木
小笠原産の明日葉(アシタバ)。温暖な太平洋沿岸に自生する植物。成長力が強いので、摘んでも明日また新芽が出るということから「明日葉」。江戸時代の文献には、薬草として紹介されているそうです。春の野草のおきまり「アク」と「ニガミ」がほどよくて。味の印象とは違い、柔くて繊細な葉っぱですが、味には強めのパンチがあるので、油との相性が良いようにも思います。天ぷらや炒め物はもちろん、本来の味を堪能できるおひたしも大好き。
つらつら書いたけど、今回は、東京野草のおみおつけに!
近所で買ったとっておきの「がんもどき」があるので、それと一緒に。
明日葉(食べやすい大きさに切る)
がんもどき(食べやすい大きさに切る)
花エビ(あみエビ)
味噌
➀ 水と花エビを入れ出汁をとる(我が家は入れっぱなし)
➁ 明日葉とがんもどきを入れて煮たったら火を止めて味噌をとく。
※土鍋は余熱調理ができるので、味噌をとく前に火をとめます。
※明日葉のアクが気になる場合は、別の鍋に水と塩を入れ沸騰させ、さっとゆがき、水で色止めして、ギュッと水分を絞ってから使います。
2020年
4月
01日
水
熊本の春のトマト。塩分が多い土地で育てるから塩トマトと言ったかな。そのままでもとっても甘いのに、過分に熟してしまった!
イタリアのマルケ州の台所で、悪くいえば腐る手前、良くいえば完熟トマトでつくったスープを思い出し、そこで、ミニ土鍋にまるごとトマトを入れて、ひとりぶんの「ふろふきトマトスープ」をつくることにしました。ミニ土鍋でグツグツ煮て、そのまま食べられる。簡単だし、調味料の分量も適当に。コツはひとつだけ。スープを残しておいて、残ったごはんを入れる楽しみを残しておいてください。
【材料A】
熟したトマト(1個)
昆布 (約10㎝カットしたもの1枚)
水 (8ぶんめ)
ローズマリー(または月桂樹)
【材料B】
塩 (適量)
オリーブオイル(適量)
粉チーズ(適量)
➀ 材料Aを小さな鍋に入れる。
➁ 沸騰して数分、トマトがぐずぐずになるまで煮る。
➂ 材料Bを入れて味を調整する。
➃ 火を止めて余熱でチーズをとかし味をなじませる。
次回は、残りごはんを入れた「トマトおじや」記事を載せますね。
料理は砂場であそぶくらい楽しくありたい。まるめる土の温度、水を注す興奮、破壊される砂の城、崩れる砂のトンネル、さよならまたあした!と、友と別れる切なさと満足感は、食べ終わったうつわのなかに。
みなさまお元気で。
2020年
3月
30日
月
数年前から、庭にコロコロ転がるものが落ちていて、虫かヘビのタマゴか?なんて思っていましたが、つい踏んでしまった瞬間、お芋っぽさがあって、もしやむかごではないかと思いはじめたのがつい去年。発生源を探り、土に転がる大量のむかごを収穫。自然薯の栄養塊といわれるだけあって、ちょっと粘り気があって、小さいのにコクあり、とってもおいしい。庭の小さな宝石。
白米2合
むかご適量(上の写真くらい)
水440mlくらい
酒大さじ1
塩少々
➀ 米を洗って水切りして30分から1時間放置。
➁ 土鍋に米とむかご、調味料など全部入れて中火。
➂ 沸騰したら極弱火で15分。5分むらす。
※慣れるまでは沸騰するまでは蓋を開けてみていても大丈夫。
※沸騰後の15分はそれぞれの感覚で。
ぷらぷらという言葉が不適切であるくらい狭い工房と庭を歩き、スーパーに毎日買い物に行くのも好きでないから、ふだんとあまり変わらない気持ちで毎日の仕事を進めています。プライバシーに関わるので詳細は割愛しますが、家族の仕事態勢は大きく変わりました。
ふだんから、ごはんづくり担当は特に決まっておらず「つくれる人」というルールがあったからスムーズなのと、ふだんから質素な食事を好む我が家は、特別変わったこともせず食べているわけで。
展覧会においてはすでに暗雲が立ち込めておりますが、友人たちのうつわやコッチョリーノのうつわを使いながら陶芸界を祈るのみ。コッチョリーノの「調理もできるうつわ」で食べることが、つくづく楽しいなと、自画自賛的に思う今日この頃です。
2020年
3月
26日
木
私たちは、なんでも静かに行う性格があるのです。
ここからの踏んばりも、わたしたちの冷静さが必要です。過剰に恐れることなく、しかしながら早くから近くの国のニュースを見て、静かに気配りしてきたからこそ、騒動が勃発してから約2ヶ月を静かに暮らせたのだと思います。生活費も家賃も授業料も高いので、経済がゆらぐと本当につらい国ですが、賢い人たちがたくさんいるのも事実です。今後の展覧会やイベントについて、主催者やギャラリーオーナーと話す頻度が増えていきますが、わたしができることは、明日もつくることです。
さて、ホタルイカがおいしい季節です。生を酢味噌でいただくのもおいしいし、酒蒸しに、パスタに、万能なホタルイカ。コッチョリーノの「箱のうつわ」で、パエリア風炒飯をつくりました。
そもそも「パエリア」とはフライパンという意、「ビビンパ」とは混ぜ飯という意をもつわけで、フライパンのような調理機能もある「箱のうつわ」でビビンパをつくるといった感じでしょうか。蓄熱性が高いので、途中で火を止めて「平焼き」(勝手にそう呼んでいる)するのがコツです。ホタルイカは繊細なので、ガンガンかき混ぜないこと。我が家は玄米ですが、白米でつくるとほんのりピンクベージュ色になってきれいです。
ホタルイカ(目だけとる)
新タマネギ(みじん切り)
ごはん(残ったごはん)
タマゴ(溶き卵)
おろし生姜
塩
こしょう
山椒
魚醤
オリーブオイル
➀ 箱のうつわにオイルたっぷり入れて熱する。
➁ タマネギ、生姜、ホタルイカを炒め、塩、魚醤で味つけ。(動画1)
➂ タマゴとごはんを混ぜあわせ塩ふる。
➃ 2を炒め半分に寄せる。
➄ 3を空いている面積で炒める。(動画2)
➅ 5の上に4を乗せたらひらたく全体に伸ばして焼く。
(数分間かきまぜたい心を抑える)
➆ 一度ざくっとかき混ぜたらまた平らにして、火を消す。(動画3)
➇ 余熱で3分ほど水分を飛ばしたら味を整える。
➈ 最後に山椒を振ってどうぞ。
2020年
3月
17日
火
春が確実にやってきています。啓蟄をすぎても、まだうちのカタツムリは冬眠したまま起きてきませんが。今年は、よもぎも桜も、ちょっと急ぎすぎたかもしれませんね。
日本の旬の味を見直しながら、冷静に暮らしています。ふきのとうが採れる地域に住んでいないのですが、季節の野菜を得意としている近所のお店をのぞくと、ふっくらとしたふきのとうが並んでいました。北海道からは、行者ニンニクなども。ウィルスも放射能も見えない恐れ。水が飲め、風を浴びられることには幸せを感じます。
個展以来のお便りになりました。
その節は、たくさんの皆様にお集まりいただきありがとうございました。個展中、横浜に寄港していた船を心配していたことが、世界中の大恐慌になってしまいました。国を叩くような、叩かれるような、そんな声が聴こえますが、今をジタバタしても仕方がありません。あくまでもわたしたちの声が代表されているわけではなく。だからこそ、やれることをやる。地球は丸いのです。どこに逃げようというのでしょうか。震災のときを思い出し、あの時のように冷静に暮らしたいと思う毎日です。
食べることはつづきます。わたしができることは、それを受けて立つ「うつわ」を淡々とつくりつづけることくらい。
毎年つくるふきのとう味噌の材料を載せておきます。
火にかけられるコッチョリーノのお皿は便利だなあと、自画自賛でつくっています。
ふきのとう 10個くらい
味噌 大4くらい
みりん 大2くらい
酒 大1くらい
甘酒 大1くらい
オリーブオイル(多め)
① ふきのとうをみじん切りにしてオイルで炒める
② 味噌などすべて入れて3分くらい炒めたら火をとめる(※)
③ 平らにして余熱調理。冷めたら保存容器で2週間くらいもちます。
※余熱力が高いコッチョリーノ皿で炒めた場合です
2020年
3月
02日
月
みなさまお元気ですか?
個展「はるのいのち」が終わって2週間が経ちました。毎日本当にたくさんのお客さまがきてくださって、まだ2週間なのにもはや夢のよう。ありがとうございました。現在はいただいたオーダー品の制作をしています。このブログをマークして読んでくださっているなどの声もいただいていたのに、更新に間があきました。
たった2週間で跋扈(ばっこ)したウィルスはわたしたちの生活や働きかたまでを変えています。今日は、久しぶりの「なんちゃってレシピ」を掲載します。少しでも明るい気持ちになれましたら。
ミニ土鍋で炊く「よもぎごはん」
今日は基本の、ミニ土鍋(1合)での白米炊きが中心で、特別なことはありません。
ミニ土鍋炊飯のおさらいとして書き留めますね。
・よもぎの若芽(上写真くらい)
・洗い米1合
・水210 ml
・桜の塩漬け(数枚)
➀ よもぎをさっと茹でて水を絞り葉と茎を細かく切る。
➁ 土鍋に洗い米と水、桜塩漬け2〜3つ入れコンロにかける。
➂ 残りの桜の塩漬け半量を水につけ塩抜きする。
➃ 中火5〜8分でぶくぶくしたら弱火10分。
※吹きこぼれないよう蓋を開けて確認しても良い
➄ 火をとめたら➀と➂ を入れてかきたてる。
▶︎「よもぎ」関連のコッチョリーノ過去記事もどうぞ!
「よもぎペーストのペンネ」
2020年
2月
04日
火
いよいよ、今週末、8日の土曜日から個展「はるのいのち」がはじまります。
ただいま、素焼き窯のスイッチOFF、まる一日冷まして明日には最終窯を炊きます。毎日在廊するので、そのため体調も整えねば。
昨日の立春はとてもあたたかく、庭に出て深呼吸しながら雑草を探しました。今年はホトケノザとカラスノエンドウが優位性を持ってはびこっています。息子の生誕祝いとして、行政から贈られた白梅も20歳。窯も20歳。うちにはめでたいハタチが3人もいるのです。
新作「箱のうつわ」は、約1年前に企画をはじめ、オリジナルでつくってもらった粘土です。1年かけてようやくおひろめです。土の魅力が伝えたいので、リヴァーシブブルに使えるデザインです。
週末から、また寒気がやってくるとの予報です。乾燥注意報も出ています。
ご体調を整えて、どうぞ個展でお会いできれば幸いです。期間限定で、コメント欄を開放いたします。可能であればできるだけお返事したいと思いますが、お時間いただきますことご了承ください。ご意見やご感想もお待ちしております。(各SNSのお問い合わせ個人メールがパンクしておりますので、このような形式をとってみます!)
「はるの いのち」我妻珠美 陶展
2020年 2月8日(土)〜 16日(日)
11:00〜19:00
*月曜定休(11日祝日は営業)
CROCO ART FACTORY
横浜市中区元町 1-71 メゾン元町2F
045-664-4078
2020年
1月
29日
水
個展「はるのいのち」開催まであと10日です。
正確には、作品を梱包して運び、ディスプレイするという大仕事まで、あと1週間といった感じでしょうか。
本日の東京は、春が下見にやってきたような陽気です。
SNSでお会いしている皆々さまには、ハガキを割愛させていただいていますことご理解くださいませ。ギャラリーにて、ごあいさつに代えてお渡ししたいなと思っています。せっかくですので、少しの時間でもお話しできたら。ぜひお声かけください。
久しぶりにおめみえする「箱のうつわ」ですが、今回の新作は、昨年の春ころから、信楽の粘土製造会社さまと相談を重ね、オリジナルでつくっていただいた耐熱バージョンです。試行錯誤1年経過して、今回おひろめすることが叶いそうです。直火やオーブン対応ですが、あくまでも作品という意識で、使いやすさ以上に眺められるうつわを心がけています。
まずは、ベーシックな「うつわ」としての使い方をご紹介。
冒頭のお寿司は、お店で買ってきたお寿司2パック+のりまき1パック。しかも閉店まぎわの半額。さらにごちそうにする魔法は、簡単なことながら「うつわにうつす」ことです。
つかれたときも、かなしいときも、テイクアウトなときも、コッチョリーノ は「はるのいのち」咲かせるようなうつわであればいいなと願っています。自分で料理を「つくる」のはもちろんすばらしいけれど、買ってきたものや、いただきものを食す時間も、もっとていねいに感じたい。「うつわにうつす」という行いは、深呼吸のような心の余裕にもつながると思っています。食材への「命いただきます」と同じように、「つくってくれてありがとう」と、考える時間も大切だと思うのです。
個展まあと10日。
お会いできる日を楽しみにしています。
なお、作品は基本的に現品販売です。現品終了後のオーダー販売については、
「アイテム」「オーダー数」が限られます。ご了承いただきますようお願いいたします。
「はるの いのち」我妻珠美 陶展
2020年 2月8日(土)〜 16日(日)
11:00〜19:00
*月曜定休(11日祝日は営業)
CROCO ART FACTORY
横浜市中区元町 1-71 メゾン元町2F
045-664-4078
2020年
1月
20日
月
前回の「土鍋まるごとロールキャベツ」、試してくださったからご報告いただいてうれしい限りです。さて、魅力的に土鍋を育てるために、お手入れのことも書いておきますね。
火が強すぎた場合、土鍋の底に「焦げ」がつきます。そんなとき、どうしていますか?
よい香り、そしてこんがり色が出るのが180℃くらいです。さらに200℃を越えて食材の水分が飛んでしまうと、糖分、油、タンパク質が炭化して焦げてしまうのです。
酵素のはたらきによって、野菜やお米のでんぷんが糖分に分解されます。ゆっくり温度上昇する土鍋は酵素がはたらきやすい温度帯40〜50℃をじっくり時間をかけて通るわけです。
例えば、前回の「まるごとキャベツ」。
ぐつぐつ音がする前、キャベツが汗をかいたあたりが「おいしさの40℃」。あわてず、ふたをしめて静かに見守ってあげてください。ぐつぐつ音が聞こえる100℃を超えたら、中火から弱火に落としてじっくり煮る。ここからは土鍋の保温力で高温を保ちながら調理を進めます。よい香りが充満するころはすでに180℃前後です。200℃を超えると、先ほど書いたように「焦げる」わけですから要注意です。極弱火でもう少し煮詰めるか、火を止め、土鍋の余熱で調理を進めます。
1. あわてて、こそがないで
例えば、土鍋ごはんの焦げ。
ほかほかでかきたてたいけれど、あわててこそがず、少し待ちましょう。
冷めた状態になると、おこげごとペロリとはがれます。コッチョリーノの土鍋を使ってくださっている料理家の堀江ひろ子さんが教えてくださいました。
2. あわてて、水をはらないで
土鍋は急な温度変化が一番苦手です。冷めたら水を張って様子をみましょう。それでも取れないようだったら、「重曹」または「お酢」を使ってみましょう。どちらを使うか、目安は以下のとおり。ミックスなんかもやったことあります。今回の「まるごとキャベツ」は、重曹1回洗いできれいに汚れが落ちました。(土鍋の表面が濡れた状態で火にかけるのは危険なのでよく拭いて乾かしてから)
酸性食品(肉、魚、卵、砂糖、米など)→重曹
アルカリ性食品(野菜、果物、海藻、キノコ、大豆など)→お酢
重曹
焦げが見えなくなるくらいふり、水を静かに加えて5分ほど沸騰させましょう。そのあと数時間そのままにして、冷めたころ、スポンジと洗剤でこすり洗ってみてください。とってもしつこい焦げの場合は、それをもう一度くりかえし、一晩つけっぱなしにしてから洗浄してみて。
重曹から二酸化炭素が発生して、その泡で焦げを浮かしたり、アルカリ性炭酸ソーダ化して、油やタンパク質の汚れを落とすわけです。焦げが浮いてくる様子を下の動画でごらんください。
お酢
土鍋に水をはり、1/4カップくらいのお酢を入れて沸騰させて、冷めるまで放置。あとは重曹と同じでです。
土鍋の焦げつきを恐れずに、あわてないを楽しむ土鍋ライフを!
「はるの いのち」我妻珠美 陶展
2020年 2月8日(土)〜 16日(日)
11:00〜19:00
*月曜定休(11日祝日は営業)
CROCO ART FACTORY
横浜市中区元町 1-71 メゾン元町2F
045-664-4078
2020年
1月
17日
金
料理に関してはプロではありませんので、あしからず。
キャベツ1個
豚ひき肉 500g
おからパウダー30g
牛乳 少々
トマトピューレ(350cc)
コショウ、ナツメグ 少々
コンソメ1/4個
塩 適量
①キャベツの芯を抜き、内側から葉をとり、数枚の葉を残したキャベツの器をつくる。
②抜いたキャベツ半分くらいを細かくみじん切り。外側の葉1枚(※)はそのまま取っておく。
③ひき肉をねり、みじん切りキャベツ、おからパウダー、牛乳、塩、ナツメグを入れさらにねる。
④1のキャベツの器に、3の肉を押しながら詰める。キャベツ何枚かでふたをする。
⑤土鍋にキャベツ葉を一枚(※)敷き、肉を詰めたまるごとキャベツを詰め口を下にして置く。
⑦4の溝にトマトピューレを入れ、瓶を洗う気持ちで7分目まで水を注ぎ、コンソメ、塩を入れる。
⑧土鍋のふたをして中火20分、蒸気が出たら弱火にして20分、吹きこぼれそうであればふたをずらしてさらに弱火20分。串をさして肉汁が出るか様子を見る。(キャベツで覆ってあるのでわかりにくく、串をくちびるに当てて熱いかどうか)
⑨火を消してふたをして2時間ほど置く。(土鍋の保温効果でまだ調理がつづいています!)
⑩食べる前に弱火で火をつけて温めます。
2020年
1月
17日
金
先日のワークショップで「なぜ丸い形なのですか?」というような質問をいただきました。
土鍋をつくりはじめて10年以上が経過したいま、つくり手自身、常套的(じょうとうてき)になっていたデザインのこと。改めてお話しする機械になり、初心に戻ることができました。
今回の個展でも、ベーシックな3合土鍋も並ぶ予定です。
「まるいカーブ」
直火があたる底面から、ゆるやかに丸いカーブを描いた形。
炊飯においては、カーブに沿って対流が起こり米粒がおどることでデンプン質の糊化(α化)が平均的に起こると言われており、羽釜の形がその理由です。炎が本体をなめるように広がるので、煮込み料理などもやさしく均一に加熱されます。
手でつくるものなので、このカーブに型はありません。
世界でひとつの形であり、それが愛嬌。この愛嬌が、計算しつくされたプロダクト製品とのちがいであり、良くも悪くも、だから手のしごとには失敗があるのです。
「まるいふた」
アラビア語で「鍋」を意するモロッコのタジン。三角帽子のアレです。大きなふたは、収納的にネックになるので、本体とのバランスを考えて、少し膨らんだまるい形です。水蒸気の循環効果もあり、食材がパサつきません。ドーム型で面積を広げた遠赤外線も期待できます。※参照:遠赤外線協会
「小さなあな」
小さなあながふたのつまみ(家/山)にあります。
頂点の空気穴は、視覚化することで蒸気やけど防止、そして物理的には、平均的な対流を期待しました。炊飯などは、密封して圧力をかけるほうがおいしいと言われますが、先にも書いたとおり、プロダクト製品ではなく手のつくりです。穴がなくても空気は多少もれますし、温度や水分を逃すほどではありません。土の重量は、おいしく空気を包むような実感があります。
穴があることで、沸騰やスチームがはじまったことを蒸気で知らせます。吹きこぼれ防止にもなります。そして、なにより、鍋のアイコンである家や山から出る蒸気は、エンターテイメントであり、ほっとする効果さえあるような気がします。
「包容するふくらみ」
あふれる量の食材を詰めても、ふたができます。
例えば、白菜と豚肉のミルフィーユに、あふれるほどのもやしをトッピングしてもふたが閉まります。パンを焼くときも、いい感じにふくらむ余地を持っています。
そして、最後にご紹介する「土鍋まるごとロールキャベツ」もつくれます。
キャベツを巻く手間もなく、ケーキのように切り分けて食べることができます。残ったらトマトソースを足してスープにしてもよし。我が家のお気に入りです。
(ゆっくり火が通る/保温効果があるなど土素材の魅力については後日)
キャベツ1個
豚ひき肉 500g
おからパウダー30g
牛乳 少々
トマトピューレ(350cc)
コショウ、ナツメグ 少々
コンソメ1/4個
塩 適量
▶︎つくりかた 料理に関してはプロではありませんので、あしからず。
使用した土鍋は「土鍋3合サイズ/黒」です。
個展に展示される数には限りがありますので、ご了承ください。
「はるの いのち」我妻珠美 陶展
2020年 2月8日(土)〜 16日(日)
11:00〜19:00
*月曜定休(11日祝日は営業)
CROCO ART FACTORY
横浜市中区元町 1-71 メゾン元町2F
045-664-4078
2020年
1月
13日
月
おまたせいたしました。
延期となっていた個展の新しいお知らせです。
基本的に毎日在廊しております。おこころづかいなく、お気軽に。
いつもブログやSNSで目にする作品を、目や手で鑑賞する気持ちでいらしてください。
「はるの いのち」我妻珠美 陶展
2020年 2月8日(土)〜 16日(日)
11:00〜19:00
*月曜定休(11日祝日は営業)
CROCO ART FACTORY
横浜市中区元町 1-71 メゾン元町2F
045-664-4078
2000年の7月、台風一過の夏の日、現在の窯がやってきました。
1歳に満たない息子を抱っこしながら、大々的な窯の搬入を眺めていたあの夏を思い出します。工房コッチョリーノは、実はマンションの地下にある小さな部屋に、こっそりと佇んでいます。1.5トン以上ある窯を隣接地からクレーン車で吊っておろし、さらに庭に鉄パイプの足場を組んで階段をおろす光景。
東京に独立窯を導入する前年まで、90年代は日伊を往復しながら修行生活を送っていました。ようやく東京での制作を決心をしたのは良いけれど、あの窯搬入の光景を見ながら、ワクワクどころか「たいへんなことになったな」と、ジリジリと暑い日なのに、客観的に冷めていた感情を、こころの温度感として覚えています。
予定していた個展を延期して、年末、故障した窯の心臓部分である電気系統を新調しました。
インテリアデザイン性など一切ない無骨な配線ボックスですが、ふたを開けると「おおお!」と、うなるほど立派で色鮮やかな電気コードが複雑に配線されています。まるで血管のようで、まさに窯の心臓であることを確信。少し専門的な話を添えると、コッチョリーノの窯は三相200Vといって、家庭用電源とは別のルート(道路の電信柱)から動力を供給しています。サイズはそれほどではありませんが、たいへんパワフルな窯なのです。
年末年始を返上して試運転をはじめましたが、こころと窯の温度を調整するのは、思ったよりたいへんで、正直なことを書けば、泣きました。ですから、理想の色、形に焼きあがった作品は、20年ぶりに初心に戻ったような新鮮さと、「はるのいのち」がめばえたような感動がありました。
2020年、工房コッチョリーノ20周年、そして窯は20歳。いまできる限りを、作品に残したいと思います。 20年という人間でいう成人になったコッチョリーノをよろしくお願いいたします。
コッチョリーノ(地球のかけら)
我妻珠美
2019年
12月
08日
日
東京も、朝晩とても寒くなりました。
夕食にお鍋料理が登場する回数が増える季節でもありますね。
大きなコッチョリーノ土鍋に、白菜をザクザク切って、ニンジンやジャガイモ、冷蔵庫にある野菜を入れちゃえ。豚肉を切って入れ、具材ひたひたになるくらいの水、つまみの塩をしてグツグツ蒸し煮にします。煮えたころにもやしをザバッと入れ、水を足します。再び煮立ったら、みそをとき味を整えるだけ。こんにゃくなんかも欲しかったな。
冷蔵庫にあるものをゴッタ煮にすれば良いのですから、簡単で栄養満点。
「カレーの恩返し」とはインスタントカレーで、このカレーが大好き。これに付属されているスパイスがこれまたおいしくて、別売りスパイスも常備しているというわけです。
ちなみにこのインスタントカレーはフライパンでの温め推奨なので、コッチョリーノグラタン皿を直火にかけて、そのままお皿としていただきます。おすすめなので、お試しあれ。
さてさて、たくさんつくった「みそ鍋」が翌日分もあるので「カレー鍋」に変身させましょう。例のスパイスをふりかけるだけで、調理なし。
鍋焼きうどんサイズのコッチョリーノ土鍋にひとり分を移し、ひとに煮立ちさせたら「カレーの恩返しスパイス」を入れるだけで、ググッとおいしい味噌仕立て「土鍋カレー汁」のできあがり。スープは味噌仕立てのまま、スパイスの香りでカレーを食べている気分になれるわけです。おそば屋さんのカレーそば・うどんの汁みたいで、おいしいのです。
おうどんを追加してもいいし、ごはんをポトンと落としてもいいですね。
今週末はいよいよ「土鍋ワークショップ」です。土曜日は満席ですが、日曜日にキャンセルが出ましたのでお席がご用意できるかもしれません。下記の通り、お問い合わせくだされば幸いです。
2019年
11月
21日
木
(写真は今年6月 伊マルケ州で行った「土鍋+セイロ」のワークショップです)
昨日おしらせしたワークショップですが、おかげさまで満席となってしまいました。→「昨日のおしらせ」
定員を超えるお申し込みをいただいたので、ギャラリーと相談して追加「土鍋ワークショップ」の開催が決定しました。
詳細、お申し込みは下記にてお願いいたします。
ご参加お待ちしております。
2019年12月15日(日)
12:00~14:00
横浜元町
クロコアートファクトリー
来年2月に個展を行うギャラリー
クロコアートファクトリーさんで行います。
過夏に行ったイタリア・マルケ州でも「土鍋+セイロ」マルケ州の夏野菜を蒸して、村の祭りにて土鍋の魅力をお話ししてきました。日本の調理方法は本当にヘルシーだ!とみなさん喜ばれていました。
今回のワークショップでも、冬野菜やチキンを、オイルを使わない調理法でいただきましょう。
2019年
11月
20日
水
オイルを使わず、手間いらずの土鍋+セイロ料理。上がる湯気を眺めながらのおはなし会です。
土鍋の魅力は保温性の高さ。
冬の野菜、下味したチキンなど、三段セイロでヘルシーに蒸す方法をご説明します。おいしい話や土鍋づかいのアイデアなど、みなさまと冬野菜をご試食いただきながら語り合いましょう。(写真はイメージです)
2019年12月14日(土)
12:00~14:00
横浜元町
クロコアートファクトリー
来年2月に個展を行うギャラリー クロコアートファクトリーさんで行います。
詳細、お申込みは下記にてお願いいたします。
http://crocoartfactory.blog91.fc2.com/blog-entry-397.html
2019年
11月
17日
日
今回は、なんちゃってレシピからのスタートです。
ポタージュ状にしたカブのスープに、はんぺんを浮かべたまっしろなスープです。お好みで粉チーズを雪のようにふりましょう。土鍋のふたを開ければそこは一面の雪景色。一葉のミントは雪の日のようなさわやかさをもたらします。
北海道でふりはじめた雪の知らせに、冬のはじまりを感じました。
1. 塩ゆでしたカブをフープロでポタージュ状にする。
2. 土鍋に①とゆで汁を入れ煮立ったらミルク※を加える。
3. はんぺんを浮かせあれば粉チーズを雪のようにふる。
4. 土鍋のふたをしめて弱火で。沸騰したかしないくらいで火を止め、あればミント(※)を一枚。
(※)ミルクは牛乳でも豆乳でも。ゆで汁の半量くらい。
日本の自然災害のキズが残るなか。
イタリアで大雨がふっているニュースを見ました。
香港の暴動で権力をふるうニュースを見ました。
わたしたちは、偏りすぎたのでしょう。
日本はダメ、あの国はダメ、この国はイイという話も好きではありません。成人になった息子に、贈るものは、本当はプレゼントのなによりも「安定した地球」なのだとわかっているのだけれど。
さて、親子ともども初心に戻り、まっしろな気持ちで、まっしろなスープを飲みましょう。
次回展覧会のお知らせ
2020年 2月8日より
横浜元町 クロコアートファクトリーにて
詳細はこちらです
2019年
11月
13日
水
興味ふかい本「世界のサンドイッチ図鑑」を入手して以来、ことあるごとにページをめくって楽しんでいました。巻末には世界のパン説明、ソースやシーズニング説明など、タイトル通り「図鑑」。珍しいパンなどの話を見聞きすると、ページを開いて探したりしたものです。
同著者の新刊「世界のスープ図鑑」著 佐藤政人(誠文堂新光社)が出るというので、迷わず予約して届くのを楽しみに待っていました。そしてとうとう、11月のはじめ、この本が届きました。サンドイッチ図鑑以上に分厚いのです。
著者の佐藤政人氏はボストン近郊在住の編集者。両書とも、世界各地で出会われた料理を調べ、自らの手で調理したページの数々は圧巻。多国の言葉のみならず、文化を調べるのは難事業でありましょう。その分、読者としては何倍もの充足感、満足感がありました。巻末の「参考文献」や「参考サイト」のみっちりページにも感心。
電子ブックや動画、音声配信が増える時代のなかで。
「生活」に関する「言葉」においては、受動的なものより、能動的なオブジェクトを好みます。たまたま陶でモノをつくっているからうつわに慣れ親しんでいるだけで、他者に「うつわの絶対」は要求はしません。当人がその分野にいると「容易」に感じてしまうことを、他者に要求しないように気をつけています。
受動的でないコンセプト、インテリジェンスなお人柄、真摯なお仕事っぷりがあふれる本です。
ポルトガルが誇る深い緑の葉物、ソーセージ、ジャガイモのスープ(P56)
「コラードグリーン」という深緑色のキャベツにも近い葉っぱを使いますが、イタリアの「カーボロネーロ」や、日本でも手に入る「ケール」で代用できそうです。ちぢみホウレンソウなども良いかも。こうやってアレンジして世界の料理を楽しむのも良いと思います。
先日、近所のスーパーでお手頃な価格でケールを入手したので、さっそく土鍋でつくりました。
「コラードグリーン」は南アメリカではソウルフードとも呼ばれている野菜だそうで、そういう国によるソウルの違いを知るのにも、興味深い料理本なのです。
2019年
11月
09日
土
拝啓
立冬がすぎ、冬のはじまりです。
みなさま体調いかがでしょうか。
実は、少しうなだれていますが、元気です。
「とうとう」が起こりました。
夏は窯をたけば苦しく、冬はろくろをひけば手が凍る。4つの季節のなかで、もっとも制作がはかどる秋だというのに。12月半ばに予定していた個展の前だというのに。
そんなある日、19年帆走してきた相棒「電気窯」に、「とうとう」が起こってしまいました。
昨年は、窯の血管である「電熱線」が切れて修理を、今回は、窯の一番大切な心臓部であるパーツが壊れてしまいました。窯には人間のように寿命があると、窯の職人さんが言っていましたが本当でした。
12月14日から予定していた横浜元町クロコアートファクトリー企画「我妻珠美 陶展」の会期を、以下の通り延期させていただきます。ギャラリーのご厚意で、タイトなスケジュールを調整くださいました。個展初日にお休みを入れてくださったかた、ご来廊の計画を立ててくださったかたもいらっしゃって大変恐縮していますが、ご理解くださいますようお願いいたします。
「我妻珠美 陶展」
2020年 2月 8日(土)〜 2月16日(日)
11:00〜19:00 ※月曜定休
場所:クロコアートファクトリー
横浜市中区元町1−71 メゾン元町2F
(みなとみらい線元町中華街駅より徒歩5分)
問い合わせ:045 664 4078
* * *
※当初、個展初日であった2019年12月14日(土)
ワンデー土鍋ワークショップを企画中です。
詳細は後日発表いたします。
クロコアートファクトリーは、10年以上、定期的に個展を企画してくださっている大事なギャラリーのひとつです。作家もお客さまも楽しいでしょ!と、元町がクリスマスイルミネーションでキラキラ輝く12月にいつもこの期間に向けて準備くださっていました。
旧暦では一年のはじまりの日、春を迎える「立春」。
来年の「立春」は2月4日です。その5日後にはじまる個展と記憶のすみに置いていただけたら幸いです。
会期中には、ローマ帝国時代までさかのぼる恋物語「聖ヴァレンティヌスの日」もやってきます。日本の暦も、西洋の暦も、春を呼びながら近づきます。そして、コッチョリーノの作品も。
来年の春、うつわの中に春が入るころ、お会いしましょう。
かしこ
コッチョリーノ 我妻珠美
2019年
11月
01日
金
90年代の大半の日々を費やしたイタリアで食べた味の数々は、デジタル写真やSNSの言葉には残されていないけれど、そのぶん胃袋というハイパーロマンチックなスケッチブックにコラージュみたいにはりついているようです。
ミラノに住んでいた頃、クルマ好きな方たちが行ってみたい(伊プロダクトデザイナーであるジゥジアローがデザインした日本車名と店名が同じ)ということでお連れしたオステリア(※)で食べた「ゴルゴンゾーラと梨のリゾット」も忘れられない皿のひとつ。
息も白くなった晩秋だったかな。
運河もあのひと皿もエクリュ色に染っていました。寒くなると思い出す。すこし芯が残るくらいの米を味わっていると、もうひとつやさしく舌に残る甘い感触が。それが洋梨でした。米の甘さと梨の甘さにより、ゴルゴンゾーラの旨味が映えるのです。
※レストラン名「アッソ・ディ・フィオーリ」とは「クローバー♣️の1」という意味。1984年から家族経営をつづけているミラノ運河沿いの老舗。店名チーズのオステリアとあるようにチーズ料理が得意。
今回はゴルゴンゾーラと洋梨のソースを使ってパスタをつくりました。パスタを硬めに茹でておけば、食べる直前に温め直しすることもできます。
使用したコッチョリーノの「グラタン皿」は、日々の皿として、またはオーブンはもちろん直火にかけて調理することができるお皿です。ありがたくも毎回ご好評いただいている作品なので、次回の個展にもお持ちする予定です。
ゴルゴンゾーラと洋梨のパスタ
1. みじん切りしたタマネギ(量は少しだけ)を炒める。
2. 包丁で小さく砕いたゴルゴンゾーラチーズを加え、とけはじめたら生クリームを加える。
3. 粗みじん切りした洋梨を加え焦げないようにチーズにからめる。
4. 最後に茹でたパスタを加えて完成。
「我妻珠美 陶展」
12月14日〜21日
横浜元町 クロコアートファクトリー
※詳細は追っておしらせします
2019年
10月
28日
月
土鍋をつくりはじめて10年以上経ちました。その後、追って「家族に土鍋ひとつ」という考え方から「パーソナルな土鍋」としてミニ土鍋、ミニミニ土鍋が生まれました。
子どものころ欲しくてたまらなかった「ママレンジ」の発想から生まれたサイズです。小さなフライパンで小さなホットケーキを焼くCMがとても魅力的で。それが本当に食べられるというのだから、夢のようなおもちゃでしたが、買ってはもらえませんでした。
そして、夢は大人になってようやく「ミニミニ土鍋」をつくることで叶えられたというわけです。ホットケーキでこそないけれど、小さくてもなまいき料理がしたかったのです。
「おいしくインスタントスープ飲めます」
「罪悪感なくインスタントスープ飲めます」
ミニミニ土鍋にカップスープの規定量150(〜160cc)入れると七八分目くらいです。蓋をしめれば、野菜、チーズ、パンなどが溶けて余熱調理が楽しめ、インスタントの罪なんか吹っ飛んでゆきますよ。最後に、久しぶりの「なんちゃってレシピ」です。ドライトマトを見つけたら買っておくと便利です。
エリンギとドライトマトのクリームスープ
1. カップスープ(クリームタイプ)粉末を土鍋に入れる。
2. エリンギ小とドライトマト小を手でさく。硬くなったパンまたは残りごはんを用意。
3. お湯150cc(規定量)を注ぎ、2を入れて蓋をする。
4. 蓋をして3分くらい経ったらめしあがれ。
幼稚園から高校まで毎日お弁当だった子どものために駆使した保温ジャー。土鍋の手法で、保温ジャーにカップスープ、エリンギ、ドライトマト、パンの代わりに炊いた玄米をポトンと落としてお弁当にどうぞ。
奥に見えるミニミニ土鍋は新作です。
12月14日〜21日 個展(横浜元町)に登場する予定です。
2019年
10月
23日
水
地球が怒っているのだと思う。
久しぶりの晴天のなか、街々を歩きまわりました。旅する土鍋でまわるイタリアでも、天候が変わってしまったという話を聞くし、実際に90年代に住んだイタリアは、夏のエアコンは不要だったし、冬のミラノはざっくざっくと雪が降り積もったものです。息を吐けば鼻の中が凍るほど冷えた白い冬が魅力的でした。
昨今の自然災害をあらためて考えながら歩く。おなかが空いて足もいたくなったことを、至福であると思えました。小さな店構えのパン屋に入って、小さな角食を。小さなサンドイッチがつくりたいと思ったから。
6センチ角の小さい食パンを薄くスライスしたのは、ローザンヌで買ったアルプスが正確に象られたパノナイフ。古い友達マガリーとおそろいのお気に入りナイフです。
ミニトマトを薄く切り、ベビーリーフを敷き、生ハムは小さくカット。スライスチーズも1/4サイズに。庭でとれた桑の実ジャムも小さなスプーンでスプレッド。
コッチョリーノ の「箱のうつわ」にぎゅっと詰めました。アリスのお茶会に持っていけるかな。12月横浜元町での個展のために「箱のうつわ」をつくっています。どうぞお楽しみに。
2019年
10月
12日
土
すてきなキッチン、いやいや「おかって」とあえて呼ぶ場所。
ある女性建築家からのお声かけで、すてきな方々と、すてきな場所でお会いすることができました。今年の「旅する土鍋」に発つ前からそのお話をいただいており、WHAIS(ワイズ)企画「まあるい土鍋で季節を食す」が「okatteにしおぎ」で開催されました。
夏の個展後、6月にイタリアに旅発ってからの様子を当ブログに書かないまま、夏がふっとんでしまった感じです。お久しぶりです。
台風がじりじりと迫りくる日。上記のタイトルで40分ほどお話しさせていただきました。参加者は仰ぎみてしまうようなすてきな方々ばかりで、そのおかげで、ご拝聴のあいだも台風しらずな陽だまりが「おかって」にみなぎっていました。私自身の話などどうでもよく、本当は、参加者のすてきな社会活動をもっともっと伺いたいほどでした。
もうおひとかたの登壇者は、おづつみ園の尾堤社長。日本のお茶の間、イタリアのピアッツァ「人が集まる場所」という共通ワードでマッチングしていただきました。人が集まって時間を共にするのはなぜか。
土鍋に線刻している「根っこ」には「バナキュラー」の意をひそませています。建築にもかかわる言葉なので、土鍋を「土着する植物の成長過程」に重ねておはなしを進めました。もう少し「ピアッツァ」でのイタリア人の食卓の様子や料理もご紹介したかったので、次回またどこかで機会があれば。
「まあるい土鍋で季節を食す」というイベント名、「人が集まる場所」という共通ワード、「おかって」という場所ですから、トークのあとはもちろん食事です。
トークのあとは、土鍋で秋をふんだんに炊くという大任が待っていました。スライドを消しPCのコードをバタバタと抜き、すぐさま腕をめくり調理にかからなくてはなりません。尾堤社長のお話しのあいだ45分くらいで、約15人分の料理を5品完成させるのです。
それにしても「おかって」という言葉はなんてあたたかみがあるのでしょう。「キッチン」だったら、ジタバタしていたかもしれないと思うくらい「おかって」に癒され励まされた気がします。
45分で完成させた土鍋料理5品は、後編で。
ごぶさたは禁物です。後日更新したいと思いますので、お楽しみに。
2019年
5月
30日
木
「食を楽しむ展」終了いたしました。
春に新しく改装を終えた新宿高島屋10階リビングフロアー。
全日を通して活発なお客様の流れがあり、賑やかなフロアーのなかで7日間の展示即売会ができたことを大変うれしく思います。ありがたいことに途切れることのない接客をする身として「空間の心地よさ」というものは絶対的なものですし、わざわざ足を運んでくださったお客様にも大きな影響を与えるものだと感じています。
百貨店をはじめ、どのギャラリーにおいても、足をお運びいただいた時間、お財布を開いていただくご好意、それらにお礼の気持ちとして唯一お返しできるのは「きてよかった」と思ってもらうこと。
幸いにも、コッチョリーノの展覧会は、百貨店やギャラリー(オーナー/オーガナイザー/コーディネータ)が企画を組んでくださっていますが、作家も創作するだけの時代ではありません。先述したとおり、お客様が「きてよかった」(もしくは「買ってよかった」)という「見えないお土産」を渡したいのです。それはお礼の品ではありません。その場では見えない、もしかしたら後になってわかるものかもしれません。残り香のようなふんわりした、なにかです。
冒頭の写真は、50人ほどのイタリアのみなさまに「旅する土鍋」を説明しているところ。この活動もいつかみなさまに還元できますように!
コッチョリーノ「旅する土鍋」のコンセプトは「広場」です。
百貨店もギャラリーも、初日はオープン前から待ってくださっていることをうかがい恐縮しています。お仕事を休んでいただり、半休をとったり、介護なさっているご家族や小さなお子さまとの時間を工面したり、ご一緒にいらっしゃれなかったご家族とは電話で作品選びしてくださったり、お友達やご親戚おさそい合わせていらしたり、つづり切れないほどご都合をつけてくださっていることに「見えないお土産」はいくつあっても足りません。
タイトな制作日程でしたが、ふたを開けると200ほどの作品を並べることができました。日に日に作品が少なくなっても「どうしても何かつれて帰りたい」、ポツリひとつ待つ作品を「ご縁だ」と言ってくださったり。閉幕ギリギリまで、人が集まり、会話があり、物語が生まれました。かさなる接客を寛大にお待ちいただき、お知り合いでないお客様同士でアドバイスしあったり、お話しくださったり。これはわたしの望むところの、土鍋やうつわを囲んでの「広場」の自然派生です。
うれしいのは、展の閉幕後も、ツイッターやインスタグラムで「土鍋でごはん炊きました」「土鍋でこんな料理つくりました」「ココットやコップつかいました」などなど教えてくださり、料理が好きな人も、あまり好きでない人も(日々お忙しくて時間と気力がない人も)「つくる気になる!」という言葉は本当にうれしいです。そしてその記事をみんなが「いいね」「おいしそう」などと仲良く盛り上がっているのを見ると、ああ自然派生の「広場」だなあと思います。
そして、最後にもうひとつ、とってもうれしかったこと。
本当につづけるべきなんだろうか、どなたかに届いているんだろうかと分からないことだらけで何年もつづけてきたブログ。「いいね」やコメントの有無でなく、ものすごく読者が多かったことを知りました。その他SNSの記事も同様です。静かに読んでくださっている人が多かったことです。このページにきて読んでくださっている皆様へ、いつも一方的ですみませんでした。しかしながら、これからは、みなさんのお顔が浮かぶようになりました。
またお会いできる日を楽しみに、制作、プロジェクトに励みます。
みなさまへの「見えないお土産」が、時間がかかっても届きますように。
コッチョリーノ 我妻珠美
2019年
5月
17日
金
職業柄、家には土鍋があふれかえっています。キッチンだけでなくリビングの一角で本といっしょに「土の彫刻」として並んでいて、料理をしながら「きょうはあの土鍋を使おう」というように選びます。家族がふざけて土鍋のなかにミカンをしこんだりもします。
土鍋は、温まりのスタートアップはゆっくりですが、部分的に熱くなって一部だけ過剰に調理されたり、一部はまだぬるいというようなことが少なく、じわじわじーっと調理されるという長所があります。保温力の高さが、煮込み、炊き込み、蒸し料理をおいしくさせ、温めなおしでも力を発揮します。
その保温力が“遠赤外線効果”とも言われており、本体もフタも、コーティングしてある釉薬(※)まで、すべて土や石という自然からでてきている料理道具なのです。
※釉薬:うつわにかかっているガラス質のうわぐすりも、ミネラルや土からできたコーティング剤。
いよいよはじまります!
2019年
5月
04日
土
ウドのシャキシャキ感と白さは、洗いたてのシャツみたいだなと、包丁をいれるたびに思います。アク抜きのため少し厚めに皮をむいて酢水につけておけば、真っ白です。
菜の花とウドに、ホタルイカという春の海と野をあわせたパスタをつくりました。ホタルイカから十分おいしい出汁がでるので、味つけは少しの塩と、能登で買ったイカの「いしる」(魚醤)ほんの2滴。なければふだんの醤油で。(※せっかくのウドの色が茶色くならないように気をつけて)
ウドが、ホタルイカ色(ほんのりピンク色)に。ああ染まっちゃったぁと、シャツだったら泣くのに、なぜか春らしくなったウドにはうれしくなりました。
ソースはいたって簡単なので、パスタの茹で汁を乳化させておいしく仕上げます。イタリア人のそばで感覚的に教えてもらったのと、ここはなんちゃってレシピなので分量などは書きません。感覚をつかむまで何度かやってみてくださいね。
ソース
1.オリーブオイルでホタルイカ(目だけ取る)をさっと炒め、菜の花の茎、酢水にさらしたウドを、サッといためるだけ。最後に菜の花の花芽を加える。ホタルイカから十分おいしい出汁がでるので、塩ひとつまみと、最後に隠し味として魚醤(または醤油)を2滴。(※せっかくのウドの色が茶色くならないように気をつけて)
パスタ茹で汁の乳化
1.パスタが茹で上がる3分前くらいから別のフライパンで乳化を始める。
2.オリーブオイルとニンニクを熱し、茹で汁をお玉いっぱい分くらい(※)入れ、フライパンをゆすり空気を含ませるように混ぜる。オイルが白濁したら乳化完了。(我が家はパスタ200~300g)
3.茹で上がったパスタ投入し、さらに空気を含ませてオイルを絡ませ火を消す。
4.つくっておいたソースを温め軽く和える。
※オイルやつくるパスタ量によるので、茹で汁は一気に入れずスプーン一杯から試してみてください。
盛りつけたお皿はコッチョリーノのグラタン皿。
柄ちがいの新作もご用意いたします。
高島屋での展示即売会が迫ってきました。
2019年
4月
24日
水
仕方なく窯をつけっぱなしで外出し、てっぽう玉のように帰宅。買物する時間すら惜しく、でもたまらなくおなかが空いているのです。しかも鉛のカラダを限界ぎりぎりで動かしている感じ。
わかっているんです。
本当は、麺をゆでて、既成のつゆでもいいから温めて、ホウレンソウ一握りでも、タマゴひとつでも落とせばカラダにやさしいことは。
そうだ、あれを食べよう!
自己満足かもしれませんが、ミニ土鍋でつくれば、すこしの罪悪感がうつくしく許される!?白い湯気という霧が晴れるころ、4分後には温かいおうどんがいただけるのです。
大きな土鍋のかたわらで、10年ほど前につくりはじめた小さな土鍋。当初のコンセプトは以下のとおりだった。従って、今回の使い方は初心にもどるようなものなのです。
「ミニミニ土鍋」:インスタントカップスープいっぱい分の小さい土鍋。
「ミニ土鍋」:ごはんいっぱい分の小さな土鍋。
「お椀でつくる」より「ミニミニ土鍋でつくる」のほうが、フタがあって4分おいしく蒸らせますよ!とコッチョリーノの土鍋をアピールしたいな。日清食品さんに伝わらないかな、そんなことを考えながら、携帯用ミニミルで山椒をひきながら、しあわせの一杯を食べ干した。できあがりの動画をどうぞ。
来月の展示会では、そんなミニミニ土鍋も販売予定です。
2019年
4月
18日
木
かれこれ15年~16年くらい、山梨の個人農場に野菜の宅配をおねがいしています。彼らの有機農法(一部自然農法)野菜は、虫にも会えるし、東京に住むわたしたちに旬を報せてくれるのです。味も香りにもコクあり。新鮮なうちに食べないと、黄色く枯れる。
根菜はそれとは違って、カボチャやジャガイモなど、ビや発芽などを抑えられれば水分が抜けた2~3ヶ月後のほうがおいしくいただけるものもありますよね。冒頭のバターナッツ(カボチャ)も同様だし、貯蔵されてしわしわになったジャガイモもねっとりおいしい。
ひるがえって、春の新ジャガも魅力的。しわしわになったジャガイモとハリのある新ジャガの出会いも楽しみ。春の日、まぶしい新入学生、新社会人のみなさまとすれ違うたび、よき人生の先輩に出会えますようにと心の中でひとりごと。
バターナッツのスープのたんぽぽ添え
1.バターナッツは薄切りにして蒸す(または茹でる)。
2.新タマネギは薄切りにしてさっと茹でる。
2.①②(茹で汁も)とタンポポの花びら少々をミキサーにかける。
3.鍋にうつし、豆乳でのばしながら塩で味をととのえる。
4.あればナツメグを少々削る。
よく洗ったタンポポの花びらを添えて。
(写真は塩茹でしたグリーンピースも)
※ナツメグ「ハウス食品スパイスオブライフ」参照
2019年
4月
16日
火
さやつきグリーンピースが店頭に並ぶとわくわくします。缶詰や冷凍ではかなわない香りは、飾りでなく食材として食べたい豆にランクアップするからです。そして、なぜだか、グリーンピース嫌いのあの人この人のことを思い出しながら、ふふふと思い出と一緒にグリンピースごはんを炊き込むのです。
春の風味をごはんにしみこませたいので、グリーンピースの半量はお米と一緒に炊き込み、残り半量は塩ゆでしたグリンピースを炊きたてごはんに散らします。食感も2種類。見た目も宝石みたいにかわいらしい2色の豆が楽しめます。
さて、今回は、土井善晴氏の「洗い米」をご紹介。
ふだん我が家は玄米食なので1時間くらいの浸水必須ですが、白米の場合は上記の「洗い米」を試すといいでしょう。土鍋で炊く場合、炊飯釜のような注水線がないので、水の量について質問をいただきます。むかしながらの「第二関節まで」はけっこうおいしく炊けるバロメータですが、動画の中で土井氏がいうとおり「米と水は同体積(1倍)」で炊きます。コップなど道具が身近にある場合、一回ためしてみてください。けっこう自分の指という道具もいい線いってるはずです。(玄米の場合は1.25~1.5倍)
2人展のおしらせ
我妻珠美 ・五十嵐貴子 うつわ展
「食を楽しむ」
2019.05.22(水)-28(火)
新宿高島屋 10F 暮らしの工芸
※在廊詳細など追ってご案内いたします
2019年
3月
30日
土
個展の際に欠品となっておりました一部の作品に限って、開催中に受注をうけたまわりました。4期にわけてご納品しており、昨日で3期目の納品を終えました。最終の4期は4月末のお約束となっておりますので、もう少々お待ちくださいませ。ギャラリーからご連絡をいたします。よろしくお願いいたします。
前回の個展中にお受けできなかったお客様、またはHPで受注のお問い合わせいただいたお客様、次回の展覧会は、新宿高島屋10階にて5月22日~28日です。なお誠に勝手ながら、次々個展の制作予定の関係で、現品のみの販売になり、次回の展では現品のみの販売、受注はうけたまわりません。よろしくお願いいたします。
Cocciorino 我妻珠美
2019年
3月
28日
木
昨年の個展後、同ギャラリーのチャリティー展に参加いたしました。みなさまのご来廊、ひいてはギャラリーEcru+HMの尽力で、27名の作品売り上げの一部は以下の子どもたちに寄付され、正式に受理されたことを改めてご報告させていただきます。(⇒※Ecru+HM 詳細)
コッチョリーノの売り上げは「ふくしまこども寄付金」に。
家族がこの地で生まれた経緯も重なり、深く強くこどもたちの未来を願っています。そして、買ってくださったブローチが、願いを共有できるものになれば大変うれしいです。
福島県 東日本大震災ふくしまこども寄附金
宮城県 東日本大震災みやぎこども育英募金
岩手県 いわての学び希望基金震災みやぎこども
改めて、作品ご購入という尊いご協力に深くお礼申し上げるとともに、自身も有意義な展に参加でき感慨無量です。決して終わることのない自然災害。忘れてはならない哀しみと苦しみを、少しでもアートというエネルギーで埋められたらと願うばかりです。ありがとうございました。
コッチョリーノ 我妻珠美
2018年
11月
11日
日
作品展では数多くの作品が同時にならぶため、作品ひとつずつに「タイトル」やコンセプトは記さないが、できるかぎりそれをSNSなどで伝えたいなと思っている。それらを伝えたいからこそ、なによりもどこで展示をしようとも可能な限りギャラリーに在廊する。今回も毎日、終日在廊予定。
大きく手をひろげれば指先でチャンスつかめるかもしれないと大先輩が教えてくれた。ピンチであるときこと手を広げよ!と。
耐熱ポットなので直火も可能。市販のドリップが合う口径。
2018年
11月
06日
火
蓼科のギャラリーに行く道すがら、直売所で「あぶらえ」を買った。この名前に親しみがなく、えごまに似ているな?と思って手に取った。その場で調べると、やはり「あぶらえ」とは「えごま」。昔から飛騨や茅野で盛んに育てられているようだ。
春に種を蒔き、夏に葉が出て収穫。お肉を巻いて食べたりする「えごまの葉」は各地で流通していると思うが、「えごま」の種は東京であまり見かけないのでうれしい。葉がおちた秋に種を収穫するそうで、この時期ならでは平成30年の天然物。生産者の氏名と住所と、料理方法も書いてある。
この地方では、おはぎのまわりに「えごま」をつけるらしい。五平餅のたれに混ざっているのも、ごまでなくえごまらしい。
生産者のメモとおりに種を軽く煎って、すりこ木で擦り、そこに日本の天然塩(湿ったタイプが合う)をあえて「えごま塩」をつくった。袋詰めから手書きのメモラベル。生産、収穫、その上にこの小さな労力が心に響く。
焼きしめた質素な色味の「しのぎのごはん茶碗」は、今回の展覧会にむけて新しい土で試みた作品。素朴な食事を楽しんでいただきたいと思ってつくったもの。いつもの玄米ごはんにかけ、ひじき煮を添えただけのごはん。ごはんはもちろん、おひたし、キノコのパスタにも最適!
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM (GINZA TOKYO)
2018年11月16~24日 ※21日休廊
12:30-19:00 (Last day 17:00)
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
詳細・お問い合わせ Ecru+HM
2018年
11月
05日
月
公募展「第6回 着想は眠らない」(テーマTOKI)にて、2018年インターリンクconcept賞をいただきました。ギャラリーを古くから支えていらっしゃるという美術家からいただいた賞。
公募展アートは、うつわづくりの背景にあるいくつかの活動。
関係者ご一同さま、ご出展者さま、みなさまに感謝いたします。
日々の「うつわづくり」の仕事は、個性的でありながらも「用の美」がキーワードになる。
何年つづけても未熟者ゆえに、ピンと張った糸がカラダの中を張り詰めるが、当公募展は、ある意味、制作において開放される機会であるので、うつわ以外の作品を出展することを決めている。
いくら好きであっても、仕事における「うつわづくり」は、人生を歩むための手段として覚悟しなければならない枠がある。使い勝手や安全性など、相手を想うあまり多大な緊張感にあふれる。細かいところまで気を配り、ミスを重ね、それが次のステップになるが、カラダと脳が硬化すると、新作を生み出すときになって、その緊張感とプレッシャーが仇となる。
心をほぐすには、起爆するような刺激と、とろけるような甘美が必要で。人生、黙っていても「弛緩剤」は処方されない。このような公募展や旅に出て、処方箋を探し求めているのだと思う。
最終日は、作家のアーティストトークタイム。異業、異なる年齢、経験。若手の目の輝きは刺激的だし。経験者の堅牢さは迷いを固めるチカラとなる。陶芸界の大家も、人気アーティストも、日常の肩書きをひけらかさず、淡々とその心を語る。大家 加藤委氏は言う「土と火だけでは器は生まれず、人からの刺激やパッションをどんどん受けなければ」と。まったく同感である。
若かりし日に受けた雑誌のインタビュー記事を、ことあるごとに思い出す。今も本棚の奥に隠してある。えらそうに「用の美」や「日本の伝統工芸」を語り、それがイヤだからイタリアに旅立つ!など生意気なことを宣言している記事に仕上がっていた。以来、メディアのインタビューをお断りしがちだった理由はここに。トラウマだ。25年以上経った今も、顔が赤くなる。言い訳もできない時間が経ったし、こんなちっぽけなこと誰も覚えてはいないだろう。
選考者のコメントはエモーショナルである。
狙いであった「美しく仕上げない(不細工でいい)」、タイトル「未完」という真ん中にも矢を射ってもらえた。文末にある「この先にある完成形を楽しみにしています」は、少し前までならプレッシャーに感じる賛辞に捉えただろうが、いまや、人生の最期は「この先も未完成だ、ああ面白かった」と言うのか楽しみになった。
ぜひともリンク先に飛んでご一読いただきたい。
http://www.interlink.jp/art.html
テラコッタの粗野で無骨なオブジェ。20年ほど前フィレンツェの工房(アルゼンチン人の彫刻工房)で制作したもので、日本帰国時は、船便の「お荷物」に。さらに日本の狭小庭では「ゴミ」と化し、苔むして18年が経った。
カラフルな陶クズは、帰国後18年の間でつくった器を叩き割ったもの。コッチョリーノの意味である「地球のかけら」になった。
庭の「ゴミ(テラコッタ)」に「カケラ(帰国後の作品クズ)」を金粉でつなげたが、そこに完成は見えず。人の道はカケラをつなげる毎日だと思った。
※添えたサブタイトルはデュシャンへのオマージュ
以下は「器づくり」の仕事のお披露目。
販売予約の個展です。お気軽にいらしてください。
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM (GINZA TOKYO)
2018年11月16~24日 ※21日休廊
12:30-19:00 (Last day 17:00)
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
詳細・お問い合わせ Ecru+HM
2018年
11月
01日
木
カボチャの日は過ぎ去り、うちに2つもゴロゴロしているバターナッツを見つめる。野菜を配送してもらっている山梨の農場から、どんどこバターナッツが届く季節。保存も利くし少し置くとおいしくなるから、もちろんペンで顔も描いて飾った。(もちろんじゃないか!?)
ポタージュに仕立てることが多いが、今回は豆乳で炊いてみる。落ち着きある味に炊き上がるのは、白味噌のおかげかな。パセリもいいが、ワケギやアサツキのほうが合うかもしれない。
イタリアの市場でもバターナッツを見かけた。手書きの黒板には「産直!自然の農業 オーガニック野菜」」と書いてあり、おにいさんが一所懸命そのこだわりを説明しながら、じゃがいもやカボチャ類を売っている。その中にバターナッツもあり、イタリア人も足をとめて興味深く聞いていた。
1.バターナッツを角切りにする。薄切りハムはちいさな正方形に切る。
2.少量の湯で白味噌を溶く。
2.土鍋に米を入れ、水と豆乳(半々)に②を加え、さらにベーキングパウダーを小さじ1加え、最後にひとかけの無縁バターを落とす。
3.フタをして沸騰するまで中火、沸騰したら弱火で20分。10分むらす。
4.わけぎやあさつき、パセリなどを散らしてどうぞ。
子どもが小学生のとき、大豆から豆腐づくりの研究と試作をいやになるほど重ねた。大豆たんぱくは65℃くらいから固まりはじめるので、豆腐をつくるときは75℃くらいでにがりを入れて固める。一度沸騰させる米の炊飯において、分離、凝固は止むを得ないが、分離して出た豆乳の液体にもソイプロテインが含まれているだろうし、炊き上がってかきたてると分離した湯葉状のものもおいしさに変わる。
野菜や味噌(カルシウムやマグネシウム)が加わると凝固はすすむのかもしれない。ここは専門家でないのでエビデンスはないが、ものしり情報で知ったアルカリ性のベーキングパウダーを入れると少し良いような気がする。
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM (GINZA TOKYO)
2018年11月16~24日 ※21日休廊
12:30-19:00 (Last day 17:00)
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
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2018年
10月
30日
火
人は自分の道をあるくのだけれど、そこには仕事や遊びや、食べることや寝ることもあり、自分なりに整備したり趣向をこらすのだけれど。子育てや介護や、動物や虫や花や農作物を育てたり、どの道にもほかの生きものの息吹がまざり凸凹になる。
前者の理想ばかり語りながらコツコツすてきな靴で歩くより、凸凹をのりこえる運動靴が必要となる。その泥まみれ、埃まみれの靴をながめるたびに、自分の道をあるく勇気が出るのかもしれない。
秋に生まれる「新ショウガ」は、「親ショウガ」(ひねしょうが)から生まれる新しい茎。親は土の中で泥まみれ。旬の野菜はみずみずしい。
さて、今夜も「新ショウガの炊き込みごはん」にしようか。人もショウガの辛さも、炊けば少しはマイルドになるからね。炊き込んだ昆布と柚子の千切りも添えて、いろいろ許してあげなくちゃね。
1.米、昆布、輪切りショウガ、酒、塩を入れて炊くだけ。
2.昆布をとりだし千切りにして、柚子をちらしてどうぞ。
写真:【PAINTING/ミニ土鍋(1合炊飯)】
あたらしく窯から出てきたので個展にも出品します!
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM (GINZA TOKYO)
2018年11月16~24日 ※21日休廊
12:30-19:00 (Last day 17:00)
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
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2018年
10月
26日
金
長年ご愛顧いただいている「街シリーズ」に新アイテムであるピッチャーが登場。高さはあるもののどっしりとしたつくりになっているので、花をかざっても良いでしょう。
耐熱のうつわなので、定番のポット同様、直火にかけることができるし、口径は既存のコーヒードリッパーに適応。自身がお鍋の差し水を入れるのに使いたいと思いつくったアイテム。温かいものだけとは限らず、冷たい水、ジュースなど入れても良し。耐熱の器なので氷を入れればキーンと冷却効果もあるピッチャーなので、季節や用途を問わず楽しめますように。
定番の街シリーズだが、今回は、この夏訪れたイタリアの風景のうち2つの特色ある町を想って描いた。今回は、そのひとつをご紹介。
南イタリアはバジリカータ州にあるマテーラという洞窟の町。世界遺産であるが、往来に便利なところではないので思ったほど観光客はいない。太陽が痛いほどの真夏だったということもあるだろう。
深い渓谷を下にみる凝灰岩の丘の上に「サッシ=岩々」と呼ばれる洞窟の町はある。住居や教会、道や壁、すべて町がまるごと岩のかたまりから掘られてできているのだ。
石器時代から人が住むために掘られ、8世紀頃からは修道士(隠修士)がここで孤独な生活をおくっていた。後世は農民が家畜などと住んでいたが、やがて貧民が住むスラム街に変貌。1958年、政府は強制的に町を廃墟にしたという。(歴史地区ガイド:アンドレア談)
上の写真は、農民の暮らしを再現したもの。テーブル右奥にはピッチャーも見える。汲んできた水を食卓に出すのに欠かせないアイテムだったのだろう。
1993年、洞窟住居がユネスコ世界遺産に登録され、一気にマテーラの町は息を吹き返す。下の写真は映画「パッション」のポスター。エルサレムの丘をのぼるキリストのシーンはマテーラで撮影された。
教会も洞窟の中にある。
洞窟は夏すずしく冬あたたかいというものの、窓もなく多湿な空間は、空調もない時代は大変なものであっただろうとアンドレアも言っていた。(※岩には貝殻が埋まっていたりするので、古くは海中だった説もあり)現在は、この遺産である洞窟住居が売りに出されており、芸術家などにも人気で、現代的な暮らしを取り入れた生活者が増えているそうだ。
2018年
10月
24日
水
10年以上、山梨から無農薬野菜を送ってもらっているので、東京にいながら旬の楽しさを教えてもらっているのだけれど、それでも野菜は足りない。先日、店頭で秋掘りの青森産ナガイモを見つけた。山梨以外の、東京産の野菜はもちろん、他地方の旬を見つけるのも楽しい。
すってとろろ芋にするのも大好物だし、焼いて焦げ目をつけてお醤油で食べるナガイモも好きだが、繁忙期ゆえに、もっと放っておける調理に走るきょうこのごろ。個展も近づき、わさわさ時間のない我が家は、もっぱら「土鍋+せいろ料理」か、土鍋で煮込みか、土鍋でスープか、いわゆる「鍋料理」か。とにかく土鍋の出番をほめてあげよう。
蒸すと、ふわシャキでおいしいナガイモ。厚めの輪切りにして、下味をつけた鶏むねひき肉を乗せて蒸すだけ。エゴマの葉を巻いて、柚子とネギを散らす。ナガイモのふとんに鶏団子をねかして柚子でリラックス。鶏団子の汁が切れ込みをいれたナガイモののふとんにしみこんでおいしい!
1.ナガイモの皮をピーラーでむき厚めの輪切り。断面に切り込みを入れる。
2.鶏むね肉に、酒、醤油、甜麺醤、五香の粉、なつめの粉を入れてまとめて団子状。
3.クッキングペーパーを敷いたせいろに①、その上に団子を少しつぶしてのせる。
4.15~20分後、串をさして肉汁が出たら完成。ネギみじんぎり、ゆずを散らして余熱で香りを出すのも良い。
※ナガイモに入れた切込みに鶏肉汁がしみます。
※ゆずの香りがとっても合います。エゴマの葉を巻いて食べたり。
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM (GINZA TOKYO)
2018年11月16~24日 ※21日休廊
12:30-19:00 (Last day 17:00)
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2018年
10月
21日
日
我が家でおかわりが止まらない「秋さわらのトマトスープ」。八百屋に並びはじめた露地ものの秋白菜とさつまいもと一緒にぐつぐつ!さわらの脂と旨みたっぷり、出汁なんかいらない!
土鍋の余熱で、完食するまでほかほかスープ。
「鰆/さわら」は春の魚と書き、ご存知のとおり春の季語でもある。春になると卵を抱えて瀬戸内海にはいってきて、春を告げるといわれたらしいが、産卵期より、ふたたび日本海の旅に出て肥えてくる秋から冬は、脂がのってきて味にもコクがある。
鰆(さわら)と鯖(さば)、両者ともに青魚であり、外見が似ているように思う。形状は、さばのほうがプリッとしていて、さわらのほうが語源のとおり細くてシュワッとしているが。
余談だが、イタリアの魚屋や市場で魚を選ぶのは、楽しいけれど難しい。イタリアで「スゴンブロ(Sgombro)」と聞けば脳内で「さば」と変換されるのだが、下の図鑑にもある「タイセイヨウサバ」は、表面の柄などから日本の「さわら」に似ている。「さわらじゃないの?」と言いたくても、「さわら:スゴンブロ=さば」であるからして…。イタリアの魚屋では、日本でイメージしていた色や柄とちょっと違ったり、魚の名前が地方によってぜんぜん違う(日本も同様)。とにかく魚屋であれこれ会話するのは楽しい反面、とても難しい。
「さわらのトマトスープ」
1.さわらを一口大よりすこし大きいくらいに切り、塩をまぶし、ペーパーで水をふきとり、そのあと酒に30分くらい浸す。
2.白菜をザクッと、さつまいもを一口大に切る。
3.フライパンで①を皮面から焼いて焦げ目をつける。
4.土鍋に少量のオリーブオイルとニンニクをいれ②をさっと炒め、水を加えて煮る。さつまいもが少し柔らかくなったらホールトマトを入れ、ぐつぐつ始まったら③を入れてさらに煮る。
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我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
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2018年
10月
18日
木
秋の根っこ「ごぼう」を食べよう!
さて、根っこといえば。個展まで秒読みなので、作品にかくれている「あしあと」と「根っこ」のヒミツをお教えしよう。イタリアに長く住んだものの、かの地に根を張るということが、どんなに難しいものであるかわかったからこその「根っこ」と、それとは反対に、確実に残してきた「あしあと」。この20年あまり、作品に残しつづけているシンボル。
映画「ショコラ」(ハッセ・ハルストレム監督)でヴィアンヌ演ずるジュリエット・ビノシュが、フランスの小さな村ランスケの冷たい空気のなかで「わたしはデラシネ(根無し草)」というシーンも大好き。「根無し草」であってもいい。強いポリシーを持ちつづければ。
日本の地でおろしている根っこを、時にひょいと引っこ抜き、浅くてもいいから別の地で根をおろす。異国の水がおいしいと感じられたら。そんな願いをこめて、作品にシンボルを残しつづけている。
1.ごぼうはさかがきにして水にさらしてアク抜きする。
2.鶏肉はちいさく切り塩をすりつけ酒に漬ける。
3.浸水してある玄米(白米)に昆布を入れ、①②、醤油、酒もちょろっといれて炊く。
4.白米の場合は沸騰したら細火で20分、玄米は40分。
5.最後に芹のざく切りと菊花を入れて。
秋の根っこ「ごぼう」と、秋の花「菊」が対話する。秋の根っこは「ふんばる」と強くたくましく言っていた。
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM (GINZA TOKYO)
2018年11月16~24日 ※21日休廊
12:30-19:00 (Last day 17:00)
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
詳細・お問い合わせ Ecru+HM
2018年
10月
15日
月
野草にならび野花を食べるのが好き。東京に住んでいるとなかなか難しいが、エディブルフラワー(食べられる花)もだいぶ店の棚に並ぶようになった昨今。古にさかのぼり、花を食べるといえば、紫蘇の小花や菊。お刺身の横に添えてある可憐な演出、ではなくて、効能ある演出。古代中国で薬として用いられていた菊には、殺菌・抗菌効果が期待できるということで、お刺身の横に置いてある。
さて、秋の菊といえば、等々力の玉川神社のたくさんの菊の前で撮った七五三の写真を思い出す。子どものころは、菊の香りが強すぎてくらくらきたものだ。亡き父が当時持っていたカメラは、スマートフォンと違って、限られたショットしか狙わなかっただろうに、たいがいの表情はしかめっつらだった。
菊のおひたしや、菊のてんぷらを食べながら想う。いつからであろうか、この香りがたまらなく美味であり、日本酒がすすむ!などと調子にのるようになったのは、いまカメラをむけてくれれば、きっとしかめっつらはしないだろうに。
「しめじと菊花のせいろ蒸し」
1.土鍋に水をはり沸騰させる。
2.せいろのフチにそってしめじを並べ、中央をあけておく。しめじを3~5分蒸して火を止める。
3.②の中央に食用菊をふわっと乗せてふたをして余熱で蒸らす。
※菊花の芯は苦いので花びらだけをむしり、しめじと一緒にポン酢とどうぞ。
ポテトサラダ(ハム入り)にも、菊花をパラパラする。パンにはさめば殺菌効果も期待できるだろうか?そんなことはさておき、うっとりする香りのポテトサラダに変身することは保証する。
個展まで一ヶ月をきり、制作も佳境に入り日々に追われながら。ポテトサラダのうつわ「ココット」は私物だが、さまざまな色が個展で登場予定。
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
12:30-19:00
※21日休廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
2018年
10月
13日
土
落花生収穫の季節。春でない秋の土のニオイと、ぽろぽろこぼれたままの根っこについた落花生掘りに行ったことを思い出す。さつまいも掘りの土のニオイと似て非なり。落花生畑は、乾燥した土のニオイがする。
乾燥させた落花生は一年中見つかるけれど、生落花生こそ秋の旬。もし店頭で見つけたら、生鮮野菜と同じように水分を保っているので、新鮮なうちに蒸すこと。
茹でるのが一般的なようだが、簡単で風味が残るのは「ふかし」のような気がする。2/3量は「落花生ごはん」にしたので、残りをミニ土鍋で蒸す。
土鍋にはった水はすぐに沸騰するので、そこから20分弱でやわらかく炊ける。簡単に甘くておいしい落花生のおつまみ完成。召し上がるときにお好みで塩をふっても。雪塩というパウダーのような塩や、抹茶塩などと楽しむのも乙。
※セイロ13cmを乗せた写真の土鍋は私物のため参考作品、個展では新作が登場!
生落花生はとても美しく、殻をわった実は桜色で汗をかいていて、乾燥させた後に煎ったピーナッツには見られないフレッシュの証。デザインされたような殻の模様は「維管束」といい、水分や栄養を送る落花生の「へその緒」。
お気軽にお越しくださいませ!
ギャラリーでお待ちしております。
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我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
※21日休廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
2018年
10月
11日
木
ピンとはった綱を歩くピエロのように、いや緊張感をもって鼻先を上流にむけて泳ぐ鮭のように。とにもかくにも個展まで1ヶ月。陶芸は「完成」まであらゆる工程があり、仕上がりを逆算しながら進む。
こんな体制でシゴトをしていること、そしてみずから旅する身であるからこそ、半ば旅の途中「秋鮭」に、深く手をあわせ「いただきます」と言いたくなるのだ。
必死で川をのぼり産卵し、生まれた稚魚は大海原に旅に出る。数年間の回遊を追え、親になるために生まれた川に海から戻ってくるというミステリーな生態。そこで捕らえられたのが「秋鮭」。
秋鮭は「白鮭」とも呼ばれ、もともと白い身は、エビやカニなどの甲殻類を食べて赤くなっているそうだ。海に充満する栄養をカラダにしみこませ、川に戻ってきたところを人間が、上流にたどりついたところを熊などの哺乳類や鳥や昆虫やらが。そして、それら生き物は山に栄養をはこぶ。
「旅人」である作家は、わが身が赤くなるまでいっぱいおいしい経験を食べ満足し、その身を誰かがおいしいおいしいと食べればいい。そして工房コッチョリーノの「旅する土鍋」は海のようなもの。土鍋にたくさんの栄養を盛り、川に、山にたくさんの栄養をはこぶプロジェクトなのだ。
いまは「秋鮭」と同じで産卵のとき。一ヶ月をきった個展まで、一心不乱に川を遡上している。
① 鮭の切り身に白をこすりつけ、酒に数時間つけておく。
②洗った米に入れて炊くだけ。
③この日は大根の葉っぱがあったので刻んで添えた。
※酢飯にしてシソと白ゴマをちらしてお寿司にしてもよい。
お気軽におこしくださいませ!
ギャラリーにてお待ちしております。
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我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
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2018年
10月
07日
日
下の写真は、10年使いつづけているコッチョリーノ初代の土鍋。当時、2年のトライアルを経て、使用の安全性を確認したのち、個展で発表した想いのつまった一品。初代は線にも迷いがあったなぁ。それよりなにより、我が家でよく育ってくれているなぁとしみじみする。
ヘッダー写真にあるように、イタリアでは、薪窯に直接入れて使ってくれている家庭もあるので、それはそれは見事に育っていてうれしい。
最初のひとすじの焦げは「汚れ」として気になるものだが、だんだんと重なるグランジっぷりは、使い手の作品となる。つくり手は、きれいなままの器より、その人が映し出される器をみると、泣きたくなるほどうれしくなるのだ。
土鍋は、煮込むだけでなく、炒めることもできる。
今回は、もっとも敬遠される「焦げ」を恐れるなかれ、あめ色たまねぎからつくるスープを、炒めることから加水してスープに煮込むまで、土鍋ひとつでつくってみた。
下の写真、左から「①あめ色に炒める」⇒「②加水して完成」⇒「③洗浄後」である。
洗浄すれば、ご覧のとおり8割方の焦げは落ちる。なんせ10年使い続けている土鍋なので、③の写真は、経年的な汚れを含めてのものであるが、ひとつ今回の調理で取れなかったのが、釉薬のかかっていないふちの部分の汚れ。これを「名誉ある焦げあと」とあえて呼びたい。
Cocciorinoのツイッターにて、スープ作家の有賀薫さんよりご質問いただいた。
「育った鍋でつくるスープは新品の鍋とは味がちがうのだろうか」@kaorun6 ⇒@cocciorino
Cocciorinoのお答えは以下のとおり。
「作家として、まずは「愛着」を持ってもらうこと。革の靴、財布のようなもので、クセを知れば料理も楽しくなる。味覚としては、洗わない伊エスプレッソマシーンにも近いような。油がしみこみ美味、こびりつきにくく、かつ丈夫になると実感していますが、料理のプロではないので検証の余地なし」
※当記事はnote「ちょっとブレイク 土鍋を育てる」書き下ろしたもの
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我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
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2018年
10月
04日
木
だいぶ冷えるようになった忙しい秋の晩、大根をおでん風に煮込んだ。大根にからしをといていただくシンプルな一品は、汁も飲み干したくなるほどおいしかった。
翌日は、残った大根のお汁でごはんを炊く。しめじに自家製ザクギリ干し大根、しょうがを入れて炊く。大根の汁を入れるのだから合わないはずはない。土鍋に米と大根の煮汁、しめじと自家製ザクギリ大根を入れて炊くだけ。
1.大根の煮汁(酒、醤油、昆布、甜菜糖など)があれば最適。
2.米を研ぎ①を入れ足りなければ水を足す(ひとさし指第一関節)。
3.昆布、しめじ、干し大根、生姜をいれて炊く。
4.山椒をかけていただいてもおいしい。
野菜を送ってもらっている山梨の農場の干し大根をまねてつくったもので、彼らの無農薬大根ならば皮ごとスティック状に切って天日に干す。糸に通して吊るのもよい。
秋色に染まるごはん、ふわっと弾力を帯びたしめじ、うまみのスポンジのような大根。土鍋の底には、大根の煮汁と米がいっしょになったおこげ。もちろん家族でうばいあいである。
土鍋とは、食材たちが仲良くなる道具。
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我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami
Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
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2018年
9月
30日
日
旅に出ると連れて帰る石がある。
そのときの心にぴったりあった石。
幼いころから石を拾って帰る子だった。“むやみにそこに生きるものを遠くに持ち帰ってはその子やその子の仲間が泣きます”と母に言われ、部屋を整理するたびに“いつか捨てることになるのならば、その地の仲間に戻しに行く覚悟で救いなさい”と言われたことが心に残っている。だからこそ、イタリアで拾ってくる石には、その自信がある。きっとまた戻ってくるという。
この夏も「旅する土鍋」は、南イタリアはカラブリアに赴いて、おいしい料理を土鍋に入れてもらった。毎朝、自転車にくるくる乗るか、ビーチサンダルをペタペタいわせながら、いつもの海に行く。透き通る青い海と空に浮かびながら、たくさんの空想をした。足もとの砂浜を何時間もながめた。
「濃い青色まで泳ごう」カラブリアの友だちのこのセリフは20数年前から変わらない。
青い海からは、飛び魚が跳ね、遠くで青いイルカが笑う。
青い空からは、地球から離れたら迷宮だよと父が笑う。
拾った石は、本当は誰にも見せたくないのだけれど、カラブリアの家で1週間ほど一緒に過ごしたちいさな女の子に、砂浜で拾ったシーグラスをあげたら、翌々日、彼女は「あなたはわたしの親友」と、砂浜で拾ったもっとすてきなシーグラスをくれた。
帰国後、あるきっかけで、石を大事に扱い尊い作品をつくっている友人に贈ることにした。それはそれは勇気を持って。石というより、陶器のかけらだろう。釉薬がかかったタイルかな、器だったのかな。長い旅をして角がまるくなっている。イオニア海をはさんでカラブリアの対岸のプーリアには陶器の町がある。そこから流れ着いたのかもしれない。
彼女の手から生まれた海をみつめたネコの眼は、海の色をしていた。
毎日青い海の中で泳いだはずのわたしの眼は、それでも深い深い漆黒だった。
Stone Artist Akie :https://www.facebook.com/stoneartist.akie/
Aikie 2525: https://www.instagram.com/akie_2525/
釉薬のムラである斑点を、海のネコのやさしい毛並に。紅い南イタリアの土は、海のネコの体温に。
ありがとうAkieさん。いつかカラブリアの海に還るのかもしれないネコの眼は透き通っていた。
※後日談:この作品はAkieさんの手からカリフォルニアのお客さまに旅立つそうです。南イタリアから東京経由のカリフォルニア。旅する土鍋ならぬ旅するネコ。すばらしい。
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我妻珠美 展-秋を炊く-
2018年 11月16日~11月24日
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Ecru+HM(エクリュ+エイチエム)
2018年
9月
30日
日
蓋をして蒸し煮するスープに土鍋は最適。
調理中の土鍋の本体にいい色がつく。ニンジンの糖分がカラメル化して、オリーブオイルの油分がディープな芳ばしさを残す。これらが炭化すると焦げに至るが、このちょっと手前の風味が土鍋につけば味が増す。
レシピではさらに加熱するところを、土鍋の場合は火を消す。それでも土鍋の「ごちそうサウンド」である「ことこと」が数分つづき、土と芳ばしい香りが余熱というあそびでで調理される。これが土鍋のたのしさであり魔法なのかもしれない。
有賀さんいわく「つい加えたくなる、うまみや香りいろどりなどの、ちょっとひと手間より、簡素なレシピをめざした」とあるが、今回はニンニクを微量、ディルを添えた。それは、わたしの嗜好によるものであり、以下にその理由を少しつづって、有賀さんの新刊「スープ・レッスン」の紹介に代えさせてもらおうと思う。
読みごたえ、つくり甲斐のある本なのでぜひ。
子どもが生まれてから19年近く、わがやのスープ(または汁物)頻度は高い。
幼いころからしっかり食べ、毎日スポーツにいそしむ少年がいたので、粗食でもガッツリ腹もちの良い食事をつくった。玄米を15年間つづけていることや、スープ(汁物)をつくる理由もそんなことから。幼~高校までの毎日のお弁当も、お腹を満たすためのスープ(スープジャー)は必須だった。そんなこんなで、我が家のスープ(汁物)率は高い。そして、幼稚園のころから今でも彼の好物は「おみそしる」である。毎日がなんちゃって母さんだが、それはちょっとうれしい。
その裏には、若いころスープを敬遠していたわたしがいたのも事実で。
お酒を飲むのが好きなわたしは、おつまみのような食事が好きだった。思えば子どものころからそう。アルコールの合間にいただくスープがどうしても苦手で、通せば胃袋がガブガブになった。
子どもと食事をするようになり、家族と食事や時間の足並みを合せたり、夕食後も工房に入ることが増えてからは晩酌は仕事の後になり、ようやくスープ(汁物)がうれしい環境に変わったのだと思うが。今でも、どちらかというと「おかず的なスープ」を好む。「葡萄酒に合うかも!」「日本酒といけるかも!」というスープ(汁物)を狙っているような、そんなヒミツみたいな好みが実はあることを告白しながら。
よき秋の夜をスープと、時には葡萄酒をお供に過ごそう。
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我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
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2018年
9月
27日
木
土鍋の蓋をあけるとき、ゴロゴロンと蓋と本体がすりあう土の音が好き。あの音は、金属の調理器具にはない、ひとつめの『土鍋のごちそうサウンド』。
わが家は煮魚や焼き魚が大好きで、秋刀魚など食卓にあがったら手を合わせるように喜ばれる。頭も食べてしまうので、骨一本きれいに残るだけ。
もちろん焼いた秋刀魚にかぼすを絞るだけで充分なのだが、人数分の秋刀魚がないときに、ごはんと炊き込んだり、煮たりする。通常は玄米食だが、魚を炊きこむときは、魚の香りを引き立たせるために、白米(または麦飯や雑穀)にする。苦みある秋刀魚の内臓と骨から出る旨味が大好きなので、丸ごと炊きこむ。
分量の水にペロンと昆布と生姜を入れるほかは、出汁に味をつけない。そのかわり秋刀魚に塩をすりこみ30分ほど置き、焼いてから炊き込む。
土鍋に耳を近づけると、ふたつめの『土鍋ごちそうサウンド』が聴こえはじめる。ふつふつという米が炊ける音。最後に3分ほど強火にすると、みっつめの『土鍋ごちそうサウンド』が土鍋底から。ぱちぱちと小さな音を立てはじめたら、サッと火を消す。土鍋お余熱でおこげができるのだ。10~15分ほど蓋をして蒸らせば、ふっくら仕上がる。
とんでもぜいたくな秋がやってきた。
1.米を研ぎ、ひとさし指の第一関節(玄米は第一関節半)まで水を入れ、1時間ほど浸水させる。
2・土鍋の蓋をしめて、中火にかけてぐつぐつ沸騰したら極弱火にして20分(玄米の場合は40分)最後に強火3分。10~15分蒸らして完成。
※秋刀魚を一緒にたきこむ場合は、①に昆布と生姜と酒を入れ、塩をすりこんで両面焼いた秋刀魚を乗せて炊く。(写真:米のみ3合/秋刀魚ごはんは2.5合)
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お気軽にお越しくださいませ。
我妻珠美 展-秋を炊く-
2018年 11月16日~11月24日
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※かれこれ10年以上企画してくださっている老舗ギャラリー。
2018年
9月
26日
水
「台所」という名のごはんや
もう30数年前になるが、「台所」という南青山の路地を入ったところにあった食事処でアルバイトしていた。タマゴが先かニワトリが先か、器と料理とアートと音楽が好きで、当時から食いしん坊で、いつも空想に飛んでいる学生だった。
さてはて、美大のアルバイト求人の張り紙はおもしろかった。学業柄「ヌードモデル」はもちろん、「課題おしえます」「料理します」「犬の散歩」「人体実験」などなど、バラエティに富んでおり豊かだった。大手建築会社でコンペの模型づくり、調査会社で図を描いたりグラフをつくるバイト、料理関係では、ベトナム・フランス料理店、パン屋など、いろいろしたなあ。
掲示板の中で「陶芸をまなぶ人」という条件で募集している飲食店があり、それが冒頭の店だった。
「耳と目と手で学ぶ」
当時、アパレル会社やファッションスタジオが華を咲かせていたエリア。 街がデザインされ、空間がデザインされ、モードやアートが浮かび上がり、たくさんの明日が詰まっていた。客層のほとんどがデザイナーやパタンナーで、頻繁にモデルや俳優も姿をあらわした。生活まるごと先を走る人たちが、安らぎを求めて隠れ家的な食事処に訪れていたのだと思う。
店主は、こだわり強く、時にきびしく、けれどもセンスあるおじさんだった。
開店前につくってくれるまかない。調理場に入って手順を眺めてよい時間で「たまちゃん、これがポイントね!」と、レシピというよりコツを教えてくれた。おじさんは家庭料理のプロだったようだが、まだまだ青くシブガキだったわたしは、大人を相手に経歴など聞ける能力など持ちえておらず、あいにくおじさんのことを知らないままに。
焼き魚、オムレツ、ハンバーグ、野菜のいためもの、おひたし、豆腐サラダ…。中でも、おじさんのつくる明太子豆腐が大好きで。あれから30年、数え切れないほどおじさんの明太子豆腐をマネしてつくってきた。
すっかり冷えてきた秋の晩。
おじさんの明太子豆腐をアレンジしたスープをつくる。
今ではアレンジまでしているよ、おじさん。
(たぶん、つづく)
1.包丁の背をつかって皮から明太子の中身を出す。
2.フライパンに少量のバターと①を加え、飛び散りに注意しながら弱火で加熱。日本酒を加えてジュワーッとさせる。醤油をたらす。
3.鍋に出汁を用意してあたためキューブにカットした豆腐をいれ、②を加え、塩で味を調え、わけぎを入れて完成。
2018年
9月
25日
火
雨がしきりに降る東京。ろくろをひいた工房の作品の乾きも悪く、作業がはかどらず。「柿が赤くなれば医者は青くなる」なんて言葉があるように、気候よく過ごしやすい秋が早くきますように。
ゴルゴンゾーラと梨のパスタ。主に北イタリアで秋から冬になると登場する一品。ペンネのほかにリゾットもおいしい。
梨も季節まっさかりだが、案外とお高い(イタリアで使うのは西洋梨)ので、今日はちょっと硬めな柿を代用。梨や柿は、ゴルゴンゾーラに添えるちょっとした甘さと、シャキッとした食感のために入れるが、今回は柿をわりとたっぷり“果物パスタ ゴルゴンゾーラ味“”のようなスタンスで柿を使ってみた。塩気はパスタを茹でるときの塩気と、ゴルゴンゾーラの強い塩気だけで充分。
こだわった料理だと思わないように、タマネギも野菜も一切つかわないで超カンタンにご紹介。だってだって、うつわ職人だから!中くらいの土鍋に盛りつけて、サラダ感覚で取り合うように。
1.柿を小さめキューブにカット。
2.ゴルゴンゾーラをフライパンでとかし白葡萄酒をジュッと入れて、お好みでフレッシュクリームを加え、①を加えて加熱。
3.茹でたペンネを②と和える。お好みで胡椒をふってボナペティート!
我妻珠美 展-秋を炊く-
2018年 11月16日~11月24日
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2018年
9月
23日
日
東京は段階的にすこしずつ涼しくなった。
庭の桑の木の葉は、わずかに茶色くなって、葉を落とす準備をはじめたようだ。「日本には四季がある」とは、こういうものかと改めて繊細に移ろう季節にしみじみしている晩、温かいおそばを食べることにした。
冒頭にも書いたとおり日本には四季があるので野菜の育ち方も豊かだ。涼しくなってきた頃の野菜は、アミノ酸を充分にたくわえて旨味全開でやってくると聞く。イタリアの真夏に存分においしいナスやトマトを食べてきたのは、土地によって栽培法が異なるため。イタリアのそれは初夏がもっとも美味だという場合や、真夏でも充分栄養価が高いと言われるものもある。
利尿作用があり、体内にこもった熱を排出する役目がある野菜が多い夏。夏に食すナスも、理にかなっているわけで。
さて、旨味の詰まる秋ナス。涼しくなったころに食べつづけると、カラダを冷やす。今夜のおそばは、ナスのあたたかいおつゆでいただこう。
1.鍋に出汁をとり(または既成の出汁)醤油と酒と甘酒(※)と塩少々でそばつゆを準備。
2.シシトウ、ナスの順に、オリーブオイルで焦げ目をつけるように焼く。
3.②を①に入れ、大根おろしをたっぷり入れ、七味をふってできあがり。
4.ざるそば、もしくは茹でたおそばに添えて。
我妻珠美 展-秋を炊く-
2018年 11月16日~11月24日 ⇒詳細
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2018年
9月
22日
土
甘酒とわさびの相性が好き。
そんな魅力を酢の物に。
噛みごたえのある海のものには勇敢さがある。海の塩気に、山の清い辛さと、穀物の甘さを引き寄せたくなってつくった酢の物。
さっと和えた酢の物を土鍋に盛りつけて冷蔵庫にさっと15分だけいれる。冷えやすい土鍋がいただきますの前にできること。酢がタコにしみておいしくなるから。
2018年
9月
19日
水
わたしという魚は、人がやっていないことをいつも模索しながら毎日を泳いでいる。もしわたしが釣り人であれば、人と違った魚を釣ってわはは!と笑いたいので、その魚がおいしいか価値があるかなんてわからないけれど、そのために色のちがった魚になろうと思っている。
桜色のカラダ、アクアアマリンの眼に吸い込まれ、真鯛をまよわず料理した。
…さて、なにを食べようか。仕事や用事が終わり、とりあえずブールアンジュと沢村、それぞれでバゲットとカンパーニュを買い、メニューはスーパーで考えることにした。食材次第で料理を決める。わが家の徒歩10分圏内にはスーパーが4軒あってね、すごいでしょ。まずは魚が得意な店、つぎにハーブや輸入食品が得意な店、最後にアレが安い店という順番で買い物をして、とりあえず白葡萄酒をあけて下ごしらえをする。(※アレというのは都合によってどんな食材もあてはまる)
ファッションデザイナー、カメラマン、インダストリアルデザイナー、そして陶芸家(わたしだけ正式な横文字がない)と、デザイナーのたまごが時差ありで席についてごはんを食べる。制作に焦っている時期ではあるが、焦っていてもエンジンはからまわりするばかりで摩耗する。どうせうだうだしているのなら、こういう時間も必要だ。
楽しみ悩めるフリーランスたちは、それぞれ歩んできた道や年数もちがう。話もあちこちに飛ぶけれど、いつも「自分らしさ」を信じること貫くことであるという結論に至る。
①うろこ、内臓をとりよく洗いペーパーで水気とる(ここまで可能なお店もある)。
②身の内側と外側に塩をまぶす。
③内側にハーブ(ディル、パセリ、タイム、セージなど)とレモンの輪切りをはさみ、表面にも適当に散らし、オリーブオイルをまわしがけて250℃で15分焼く。
④プチトマトと黒オリーブを追加投入。魚から水分があまり出ていなかったら白葡萄酒少々。あと5~10分。完成。
日本でもは真鯛を、本場リグーリアでは黒鯛を焼いが、それぞれおいしくできあがった。
日本の真鯛は身が引きしまり甘く、国産の海塩が合う。リグーリア湾の黒鯛は身が柔らかく、さっぱりしており本場のレモンがよくしみた。コツは、惜しみなく上質なオリーブオイルをかけること。今回は毎年もちかえるヴィンチ村の友人が絞るオリーブオイルをかけたのも勝因のひとつ。
おしらせ
「旅する土鍋2018」についてお問い合わせがありました。
第二弾の冊子のもとになる記事をこちらで挙げています。
「旅する土鍋2018」マガジン
2018年
9月
15日
土
①みじんぎりセロリ、ニンジン、タマネギなど旨味が出る野菜をいためる。
②みじんぎりベーコンで脂質と塩気を加える。
③ホールトマトと水を加えローリエやオレガノをいれて煮る。
④野菜が煮えたらそばの実を加えてやららかくなるまで煮て、不足であれば塩味や好みのスパイスを。
⑤土鍋のふたをしめて10分放置すればスープを吸ってやわらかくなったそば粥が、蒸らし時間をなくせば、歯ごたえを楽しむそばの実入りスープとしておいしく食べられる。どちらも芳ばしさが広がり美味。
ロシア、ウクライナ料理についてはまったく知識がないが、今回は近所のスーパーでわりと安価に入手できるスラブ地方で食べられるロシアの蕎麦の実「グリェチカ」(ギリシアのという意味)を使ってみた。この地方で食べられる「カーシャ」というそばの実の甘いお粥もつくってみたいなぁ。
一方イタリアでは、そば粉のことを「グラーノ・サラチェーノ」(サラセンの穀物)という。アジア原産のそば粉は、セラセン帝国(イスラム)を通ってヨーロッパに到来したといわれており、たぶんフランス語も同じ意味だったと思うけれど。
イタリアでも、そばの実と押し麦のサラダとかおいしい食べ方がいっぱいある。古代小麦にならび、そば粉や雑穀が見直されている今、あらためてそば粉のパンやケーキなども友だちの間でよく話題にのぼる。ロンバルディア州の北ヴァルテッリーナ地方には、そば粉のパスタ「ピッツォッケリ」やそば粉の衣の揚げ物「シャット」などもあって、私は好き!
毎年「旅する土鍋」プロジェクトでは、日本食の一品としてそばをふるまうのだけれど。それ以来、そば好きになった!という嬉しいイタリア人が何人かいて、毎回楽しみにしてくれているみたい。
季節の野菜をてんぷらにして、土鍋に盛り付けてみんなでわいわい食べたり、ちょっと日本酒を味見してみたり。甘くてしょっぱい蕎麦汁がどうやらイタリア人の舌にも合うらしい。
2018年
9月
11日
火
内藤礼の大規模な個展に赴く。
作家の真骨頂と、磯崎新の空間に、ミクロとマクロ、生と死に心象がうかびあがる展であった。91年佐賀町エキジビットで最初に観た作品、直島や豊島で感じた空間、東京のざわめきの中での作品、どれも削ぐ白さに加える自分の自由さが大好きな作品。
巷でよく聴く言葉に、ふといつも立ち止まる“誰かのために”というものがある。自らのものづくりにおいて、どうしてもその感覚がない。そのわりに、決して自分が良ければいいや!という自信や傲慢さは、残念ながら持ち得ていない。まだ淘汰されていないというか。誰かに呼ばれているような気がするからつくっている。そんな感覚なのだ。
その誰かが、誰かなんてどうでもよくて。
内藤礼展にて、ひとり一枚持ち帰れる丸い薄紙(写真上)には、ミクロな文字で「おいで」とある。薄暗い空間で、その作品を観たとき、あまりの遠視が進んでいるために、実はそこに「文字」が書かれているなんて思わなかったのだけれど、なぜか「どうぞ」と明るい世界に手を広げられ、祝福された気持ちが湧き上がったことを覚えている。
帰宅して、モスキート音も確実に聴こえる我が家の青春に「おいで」だよと容易に視認されたときは、彼こそ現代の世の中に祝福されている世代なのだなと感じた。あまりにも経験が更新される速度が高い時代。豊かな経験者が指揮棒をふりかざす時代は終わり、経験者は堂々と壁となり、豊かな表情のモデルとなり、次の世代に「おいで」とサジェストする時代ではないかと考える。チャレンジャーがどんどんパンチングしてもケガをしないために、「おいで」と祝福したい。
内藤礼 -明るい地上には あなたの姿が見える-
2018年7月28日(土)~2018年10月8日(月)
水戸芸術館
2018年
9月
02日
日
今年も「旅する土鍋2018」すべての日程を元気にこなし、日本に戻ってきた。帰国早々、関西の台風や北海道の地震もごちゃまぜにやってきた。そんな中で日本の夏の旬もいろいろ終わってしまった。ヘッダー写真のエダマメも文末の個展情報のトウモロコシも個展PR用に撮影したものだが、旬とはうれしくもあり切なさもあるのね。
旅の様子は別途記事にまとめており、4年前につくった小冊子の第二弾として出したいと思っている。ただの言い訳なのかもしれないが、いやいや毎年思う不思議なことがある。現地では(その地を離れて別の地でも)、顔を天にむけながら、そのときの気持ちや想いがスーッと思い出せる。オリジナルな言葉が湧き上がり、その場の風のおかげだろうか、それとも香りだろうか。ガヤついた喧騒と言葉、まったく反対のセミの声しか聴こえない静寂と言葉のなかで。東京に帰ってくると間違えた感情が介入されたりするので注意して記事を書いている。
イタリア現地仕様のケータイもポータブルWiFiも持っているのに、なかなかどうしてリミットがいろいろあり思うように使えない。会いたくて訪ねるかたの家にお世話になることが殆どなので、PCを開くより、人と話して、人から聞いて吸収したい。眠さに負けそうな直前も、PCでなくその家の主の言葉に浸かりことんと眠りたい。都市でなく地方に滞在することが多いので、電波もWiFiも思うように入らない。これらソフトとハードの問題で原稿は滞っていて。まずは、この秋の個展作品づくりをせっせと。
小冊子は来年になると思うけれど、どちらも乞うご期待。
このあとは、通常営業にもどり土鍋のつかいかた提案や、展覧会情報などいつも通り掲載する所存。
我妻珠美 展-秋を炊く-
2018年 11月16日~11月24日 ⇒詳細
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
Ecru+HM(エクリュ+エイチエム)
※かれこれ10年以上企画してくださっている老舗ギャラリー。
2018年
6月
26日
火
これほど毎年くりかえすひとり旅。
思えばひとり旅のはじまりが2つある。
「機運」とは時のめぐりあわせ:物事をなす時機。
「気運」とは時のなりゆき:物事が進もうとする傾向。
大学で陶磁器を学んでもまだガラス作家になることがあきらめられず、あの日、無情な気分で新幹線に乗って弟子になろうと広島のガラス作家のうちに向かいましたが、眼を大けがしてまた東京駅に。そのあとどのくらい経ってからだろう。日付が変わるすこし前の時間に、東京発の寝台列車ブルートレインに乗って、有田、唐津、伊万里の窯めぐりの旅をしたのです。
今でこそ客観的であるから、前者は「気運」、後者は「機運」であったと2つの気持ち的な違いが明解。失礼なことに、前者の広島行きは、見送ってくれた人、迎えにきてくれた人がいたはずなのにうるおぼえ。流れにのって行きつこうと向かうときが前者の「気運」で、おそらく急流のなかで自分しか見えなかったのでしょう。
一方、ブルートレインでの九州への旅は「機運」。東京駅から出発するシーンや見送ってくれた人の顔、列車のなかの会話、陶芸の地で出会った人、唐津の海の風、古代の陶片や偉大なる作品のことなども30年くらいたった今でも覚えていて少し感傷的になったりします。「めぐりあわせ」という言葉をおなぐさめ的に使いがちですが、本当のめぐりあわせは、自らが少し熟してから気がつくようです。
恒例の「旅する土鍋」は、実は何年も寝かせて2013年から動きはじめたプロジェクト。熟成しておいしくなった生ハムのごとく、このプロジェクトは「機運」であり、美味しさのめぐりあわせなのでしょう。
生肉であること雑菌発生の可能性もあるので、食すにあたっては自己責任のもと充分ご注意なさってください!
①豚バラブロックの全面にたっぷり塩をすり込む。
②胡椒、ローリエ、ローズマリー、セージ、バジルなどハーブがあれば一緒に添えてクッキングペーパーを巻いて容器に入れてふたをして冷蔵庫で寝かせるだけ。
③水分が出るので、最初は毎日、1週間経ったら様子を見てキッチンペーパーを変える。(手をきれいに洗い除菌するとよい)
※干したり燻製にすれば生ハムだが、わが家はシンプルに冷蔵庫で寝かせるだけ。
※変色し硬くひきしまった3週間くらい熟成したものを薄く切って生で食べ始めるのが好き。写真は1ヶ月経過したもの。カルボナーラやアマトリッチャーナ(トマトのパスタ)に入れて加熱してもおいしい。
2018年
6月
22日
金
年一度、学生時代の親友のお墓参りに行きます。かれこれ30数年来の親友たちなのだけれど、我らはあの頃とっても青春で、羊だか山羊だかでした。みんなで芝生に寝っころがって夢を語りました。あんなことがしたいそれをデザインというのだなどなどエンドレスに。
現在は「夢」とか安易に使うのはどうだとか耳にするけれど、今があるのは夢があったからで、親友がそこからいなくなったのも夢だと思っていましたから。
今年もお墓の前でここ数ヶ月で一番わらったのだけれど。ごっそり笑い声がピンボールみたいにお墓石にあたっては戻ってくるのですよ。夢が現実に還ってくるみたいに。彼女との別れは、わたしたちを明るくし、わたしたちを強くしたと思います。わたしたちは、ずっと強かったのではありません。すごく弱くて、少し強くなって、すごく強くなりました。今でもわたしたちは遊びたいからたくさん働きます。わたし以外、世の中で大活躍している面子だけれど、また今夜もばかげた話で、またお墓の前とおなじように笑いまくります。そして、よく飲みます。あの頃と同じように一升瓶があっという間になくなる夜でした。
さて、あと1週間ほどで出発ですよ「旅する土鍋」。わたしが旅に出るのも、わたしを強くさせてくれた友がどこかで付き添ってくれているからで。いまや、親友と父は、空の上からぐいーんと360度の、いやそれ以上の次元で見ているのですね。日本から飛び出て片道切符を捨ててイタリアから帰ってこなくなってしまった娘を、ネットもない世界で静かに心配していた父の心臓を悪くしたのは、きっとわたしでしょう。あいかわらず困ったものだと言いながらきっとね。
そうそう、我が家の青春たちの大学では、“生きるデッサンモチーフ”である羊さんだか山羊さんだかが、子羊だか仔山羊を生んだのだそうですよ。命があってこその夢を彼らは育てて描いて創っているのですよ、そうなんです命も夢なのであり、やがて羊は期待通り爆笑するでしょう人間の前で。
2018年
6月
19日
火
桑の実にすねたのかもしれません。写真は、豆皿のなかで梅の熱情が走っている一枚です。
少し前のことです。5月の末、桑の実を摘んでいると、いてっ!背中に一粒の梅の実が落ちてきました。去年も今年も梅があまり実りません。花はこれ以上ない満開っぷりなのに。そのひとつが写真の実で、このあと数日後にもう一粒。これっきりです。植物にも命あり。意志があって、最強の存在感を示す使命にかられて落ちてきたのでしょう。一度きりの人生、騒がず誇張することなく、静かなる最強の存在感を示したいものです。梅の実に感謝。
今朝のNHK「あさイチ」の“らくらく梅活用術”というコーナーで、堀江さわこさんが「梅しょうゆ」や「梅ヨーグルト」を紹介していました。実は来月からの「旅する土鍋」、旅の一部を彼女と一緒にまわります。日々お忙しい彼女ですがお誘いしたところ快諾してくださり、それならば思い切り楽しもう!という計画を立てています。旅のレポートお楽しみに。
(追記)
昨日の大阪北部で起きた地震にこれ以上の被害が広がりませんように。イタリアからも日本の地震のお見舞いメールが続々と届きました。わたしたちが訪ねるマルケもおととし大きな地震のため被害が大きかった地域です。関東も揺れを頻繁に感じる今日この頃、心して過ごすことしかできませんが、地球と季節と生きる者、互いに動きを覚悟して生きていかなければなりませんね。
2018年
6月
15日
金
スーパーなどで見る色もきれいでサイズがきれいに揃った大振りな空豆。中身の豆に安定性はあるけれど、ごそっとさやを捨てるたびに、きっと育てるのに人工的操作はあるし、選別という人間の労力がかかっているのだろうなぁなどと切なくなるのです。
近所の庶民的なお店にはキズがあったりサイズ不揃いな空豆が売っています。愛嬌があるので好きです。さやから豆を出す前に「あした晴れる!」さや開けて「アタリ!」とか「うひゃ、ハズレ」とか、占いチックなドキドキが味わえます。サイズというか成長具合が不均衡で、さやの中に大粒ひとつ、超赤ちゃん豆ひとつとか、大きいさやのわりに豆ひとつとか、小さいくせに中豆4粒とか。さやに守られて、必死に自分が生きるために栄養をもう一粒にもらって生きたんだろうなとか、空豆が必死に生きている感じ。やはり生きるということは、単一でなく、バラつきがあったりズレたりがいいですね。
さやから出た空豆は思ったより不発が多くて。急きょ無農薬スナップエンドウも足しました。豆はもっぱら土鍋せいろ蒸し。栄養分がお湯に逃げないし茹ですぎも防げるからです。
先日「ズッペリア」で食べた「3種の豆のスープとファッロ」を参考にトマトも入れて。わが家は皮ごとマッシュ。粒つぶな食感がスープに生きていました。タマネギを入れてもおいしいでしょうけれど、空豆の風味を活かしたく今回は入れませんでした。食べる前にヴィンチ村の友が育てたオリーブオイルをツツーッと。お店ではトッピングされていたジェノベーゼペーストの代わりにオリジナルよもぎペーストを。夕食は温スープとして、残ったスープは冷蔵庫で冷やして翌朝は冷製ガスパチョ風。浸したチャバッタ(パン)は「ズッペリア」のオリジナル。
余談ですが、ドンキホーテの中で食べている「ガスパチョ」にも浸したパンが入っていて、イタリア「ズッパ」同様、パンを浸したスープをいう意味も含むようで。いまや冷製のイメージが強いが、寒い冬はそれを温かいスープとしていたそうで。語源「砕いた(さいのめ)野菜」も多く耳にしますが、そういう意味では、我が家の豆の皮まで入った食感はある意味、語源通りかもしれませんね。
1.さやから出した空豆、スナップエンドウを土鍋せいろで蒸す。
2.皮ごとざく切りにしたトマトと①、水、オリーブオイル、塩、バジルをフードプロセッサーでガーッとする。
3.鍋に移しスープの濃さを調整。水やトマトピューレなど加えて0塩で味を整える。
4.召し上がる前にオリーブオイルをクルッとかけてジェノベーゼペースト(よもぎペースト)をトッピングして、あればナツメグを少し削って入れる。ミントを添えて。
2018年
6月
13日
水
夏が始まるというのに、冬の瓜だなんてね、字面は暖房的であつくるしいけれど清々しいスープなので梅雨時に積極的にお試しあれ。
自分用のお弁当はとかく質実剛健。スープジャーに温かいスープを入れて、玄米おにぎりやバゲットを持ってゆくのが定番ですが、さらに強くたくましく飾りはいらないのよと、ドボンと熱いスープに玄米ごはんを投げ込む。お昼にスープを開ければほどよい雑炊状態に。おおぶりな木のスプーンですくって食べるのが好きなのです。
伊語の学校では何度目かの「長文 文章解析」に入りました。師匠や友人の言葉をオウム返しに覚えた伊語。英文同様に存在する「主節」と接続詞や関係詞がついた「従属節」を見つける訓練すれば、長文のかたまった結びがするするとけるらしい。逆をいえば、日本語の文章も、節境界を意識すれば、言葉をあそんでもより分かりやすく書けるようになる?と期待したり。
生きる者、どの道を進めど、避けてくぐり抜けていた大壁に再び当るものですね。とろみが程よい「冬瓜のスープ」を学校の談話室で食べれば気分おだやかに。
1.ごま油+すりおろし生姜で鶏ひき肉を炒め、酒、塩、醤油少々で味をつける。
2.水を入れた鍋にワタとタネを取り除きひと口大にカットした冬瓜を入れ火にかける。
3.沸騰した②に①を入れ柔らかく冬瓜を煮て、千切りミント、塩と少量の醤油で味を整える。
4.水溶き片栗粉を入れ、最後にお好みで酢をたらして完成。
「うつわ職人のなんちゃってレシピ」は、レシピのないレシピ。料理のプロへのリスペクトという言い訳により、分量、分数など数値的なメンドウを排除した、うつわ職人ならではの“感覚的料理メモ“であることご了承ください。これをヒントに家にある材料で、自由自在にアレンジしてみて、ついでにコッチョリーノの器がお手元にあれば入れてみてくださいね。それがコッチョリーノうつわ職人の一番の願いです!
2018年
6月
12日
火
ZUPPA(ズッパ):スープの一種、原則としてパンを加えてつくる、または添える。トスカーナのリボリータ、ヴェネトのソパ コアダ、リグーリアのチュッピンなど、各州を代表するズッパが多数ある。(イタリア料理小辞典/吉川敏明 著/柴田書店)
きょうは朝から梅雨らしい一日で、自分自身がびしょびしょになっておいしいズッパに浸かってしまうようなどしゃ降りでした。
スープ作家の有賀薫さんの「イタリア・ズッパ研究」にお供させていただき、「ズッペリア・オステリア・ピティリアーノ」というイタリア料理の食堂へ。「ズッペリア」?聞いたことない単語だなと思ったらシェフの造語だそうで、シェフが修行したトスカーナ州ピティリアーノ村の郷土料理がいただけるお店でした。イタリア現地で食べるよりかなり上品な仕上がりで最初は驚いたけれど、南トスカーナ、ウンブリアあたりの伝統料理がピンポイントで再現されているのは興味深く、しかもズッパが常時いくつも並んでいるメニューは日本では珍しいのではないでしょうか。
有賀薫さんは「365日のめざましスープ(2016)」、「帰り遅いけどこんなスープならつくれそう(2018)」の著者。わが家は粗食であるからこそ、鍋物、汁物、スープ率が高く、彼女の一冊目も二冊目も、もちろん手元にあります。
まずはズッパ談議をひとしきりして、時おりイタリアの地図など見ながら、イタリアや日本が誇る地産食材のこと、未来のビジョンを言葉にするということ、ちょっと困っていることを変えていくデザインについてなど語り合いながら。さっそく前菜「リコッタチーズ」にオタハイトレモンジャム+とひとつまみの塩を添えて食べながら、冒頭のイラスト左(白葡萄酒)を飲みました。
ちょっとコッパズカシイけれど、活動や作品というのは誰かのためになにかするべきものなのか?なんていう話など熱血してきたころ、フィレンツェで食べていたタイプとは違う「スープ仕立てのランプレドット」が登場。もういっぱいイラスト左(白葡萄酒)を。続いてアオリイカのソテーが出てきて、もうその頃には梅雨など忘れていまして。
イタリア・ズッパ研究、近いうちにイタリアでしませんか?なんてお誘いしているうちに、研究の佳境「ズッパ・ディ・ファッロ(3種の豆スープにスペルト小麦)」登場。ウンブリア郷土料理とありましたが、豆のスープはどの地域でもおいしい。白インゲン(カンネッリーニ)、ウズラ豆(ボルロッティ)、金時豆(ロッシ)のポタージュにもちもちなファッロ(スペルト小麦)が入っていて。90年初頭お金もないフィレンツェ在住時代にカンティーナで食べた素朴な味を懐かしく思い出しました。次はウンブリア料理「チポッラータ(卵入りタマネギとトマトのスープ)」。ここでイラスト右(フルボディ赤葡萄酒)に変更。タマネギスープのドロッとした甘さと、先ほどの豆スープの甘さは違い、2品続けてズッパを食べても飽きないですね。
お話はまだまだ続けたいのですが、そろそろおひらき。もうドルチェは入らない。エスプレッソ・ドッピオ(2倍で!)を飲んで胃を沈め、近い将来のスープ研究イタリアをまじないで錠剤にして、ポンと口に入れておきました。
2018年
6月
10日
日
あいにく、いやかわいい雑草に占領されている我が家の庭。その隅っこに特段の手入れもないままにガクアジサイが毎年咲いてくれます。若かりし頃からお世話になった知人のお母さまが旅立たれたとき、知人の家と我が家に迎えたガクアジサイ。もう10年くらい経つかな。
ポットや急須に花をいけるのが好きです。注ぐノーズやハンドルの曲線が、挿した花に遊びを加えてくれます。バランス的にもドンと安定する感じもいい。テーブルのワンポイントにしてもおじゃま感が少ないです。もともとテーブルにいるアイテムだから。
学名Hydrangeaは、語源ギリシア語のHydor(水)とangeion(器)が起源。学名が「水のうつわ」だなんて、うつわづくりを生業としている者としては、愛でるべき花なのです。
シーボルトが「ガクアジサイ」をazisai、情に厚いシーボルトは科学者スタンスを逸脱し「玉アジサイ」を愛するお滝さんに捧げる花としてOtakusaと命名したのもほほえましい話。
庭のアジサイ、新鮮な青色もあれば、ちょっと白っぽくあせてゆく花もあり。これは人のような循環器系を持たない花の老化現象と聞くと、そちらも自分を重ねてみたりして、愛おしい…。
2018年
6月
05日
火
ニホンジンだなぁとと感じるときがあります。
いつもは玄米食だけれど、急いでいるので白米を研ぎ、ザザッと土鍋に入れ、ぶくぶくっとテキトウに水を張る。人差し指をつきさして第一関節。土鍋を中火にかけて沸騰を待つ。むかしながらの計量カップもタイマーもなし。こんなとき正しいニホンジンである!と胸をはったりしてね。
炊きあがりの美味しさは、各種素材の鍋でそれぞれだそうですが、蒸らしや余計な水分の吸収など土が自然に行ってくれる土鍋の魅力は唯一無二。ごはんが堂々と夕食の一品になる感じ。土鍋で炊いたごはんは「ああすてきな一品をつくった」感が不思議とあります。
梅雨入り宣言を記念して、今夜は旬である「梅雨イサキ」のお刺身と、モロッコインゲンのからし和えと、お豆腐のおみそしるです。いつものごとく簡単な夕食です。
そうそう、最後にお豆腐への哀愁ばなし。
近所に美味しいおとうふやさんがあります。パックから出してやさしく水で洗ったら、あららシンクにどぼどぼと崩れました。仕方がないから、さいの目はあきらめて乱切りや手で割っておみそ汁に。しかも味が薄いというかコクがない?
おいしくなかったら、次の購入はやめて他にするというのが世の常ですが、あの店のおじさんがちょっと心配になりました。明日からも機会あるごとに、あの店のおとうふを買おうと思った夜でした。ああ、ニホンジンだなあ。
2018年
6月
01日
金
とつぜんチーズがぷうーんと香りジグジグ焼けるグラタンが食べたくなったりします。
蒸し野菜に具だくさんのスープ、玄米に魚の煮つけに冷奴。そんな粗食が好きだと言いながら、勝手に暴走することが多々あります。
陽が落ちて薄暗くなるころ、制作はノリに乗る。そんな言い訳から、子どもが小さいころから我が家の夕食づくりは申し訳ないほど遅い。近所のあちこちから風にのってくるおいしそう匂いをかいでも焦りはしない。どこまでも母性を捨て制作をしていたのかもしれません。夕食が遅いと「〇〇な子どもになる」とか世間は無責任にいうけれど、母の姿がなければ、人間は仕方なく動く。夕食までに宿題やお風呂を済ませておくように告げ、そして任せる、それしかないのです。
そして、あっという間に子どもは育ってしまうもので、いまやどんなに遅い仕度でも「ごはんは食べますか?」「お先にいただきます」とメールのやり取りが交わされるだけ。逆に空しさはなく、またまた制作に傾倒できるわけで。
あ、豆腐グラタンにしました。とってもおいしいクイック料理です。
1.豆腐にクッキングペーパーを巻いて重しをして水を切る。
2.タマネギをクシ切り、小松菜は水を切っておく。
3、①の豆腐に醤油をぐるっとまぶしフライパンで焼く。
4.米粉を水と豆乳でとき弱火にかけて焦げないように混ぜる。とろみがついたら塩とコンソメひと欠け隠し味に豆乳ヨーグルトと白味噌。
4.②と③をグラタン皿に入れ、④を流し入れる。
5.表面にとけるチーズ、パン粉と粉チーズをかけてオーブンで焼く。
グラタン皿には、耐熱ガラス、鋳物ホーロー(ストウヴ、ル・クルーゼなど)があるけれど、極々ふだんの気持ちで使えるのが陶器のグラタン皿ではないかと自負しています。ふだんはサラダやおかずを入れるお皿として、時にオーブンに入れてグラタンやパエリアを焼いたり、直火で炒め物などもできます。
2018年
5月
28日
月
お碗的なイメージを出すために特別オーダーのミニミニ土鍋はノンハンドル。一見和風であるようで、れっきとしたフレンチ料理の美が蓋を開けたその中に。ご納品のミニミニ土鍋には新メニュー試作の「玄米と麦ごはんのアスパラあえ」が入っていました。
(前編からのつづき)
数は多くても「一点物」であり作家がひとつずつ手でつくる作品。時間もコストもかかるのに待ってい
ただき、予約でいっぱいのレストランで使ってくださることはこの上なく嬉しいのです。
コッチョリーノの“不器用だけどマジメ”というキャラクター性と、“使っていただければわかる作家モノ”
を伝えたくて、ていねいに、かつ遊びを入れながら制作をしました。料理人も同じ気持ちなのかもしれない。個展であれば、多少の作品の違いは「個性」となりますが、フレンチのコース料理は、同じ空間、ひとつのテーブルで、お仲間と足並みをそろえ同じ料理を味わうわけで、形とサイズについては、いつも以上に意識を注ぎご納品をさせていただきました。
洋食器といわれる磁器は、材質のキメが細かいため皿の底もなめらかでテーブルや調理台をキズつけにくい。対して土のうつわはキメが荒い。個性を活かすならばザラつきも味のひとつですが、レストラン仕様ということで、手触りや味わいよりも、キズをつけないことに重点を置きました。うつわの底、フタの落とし部分など、通常の3倍やすりをかけました。菅谷シェフにそうお伝えすると、ミニ土鍋の底を撫でながら、にんまりした表情で「いつも自分でやすりがけをするんですよ」と。コッチョリーノの真意が伝わった瞬間です。倒れそうになるほど嬉しかったですね。小さな小さな「真価」です。
この日ランチでいただいたお料理を簡単にご紹介。次回はコースの最後にミニ土鍋が出てくる新メニューを食べに来ようと思います。みなさんも北海道に行く機会があればぜひ!!!!(マッカリーナで食事をするために東京から来るお客さまも多いそうです)
おいしいお料理はもちろんですが、気持ちのよいサービスはリピートしようと心に残ります。創業当初からの菅谷シェフとマネージャ兼ソムリエの橋本さん。プロフェッショナルさがしみました。そして、ごちそうさまをした後の「それではさようなら」のお見送りの姿や表情というのも心に残りますね。プロにいろいろと学びました。
帰り道は、ランチとディナーの合間のお忙しい時間なのに「俱知安(くっちゃん)」駅までシェフが送ってくださいました。恐縮しながらも、ハンターっぽいクルマの中で、ジビエ料理について質問攻めにしてしまいました。猟が解禁となる10月からは、近所で鴨や兎を獲り、レストランのメニューに登場するそうです。増えすぎた鹿は年中ハントが認められるとか。菅谷シェフの手にかかったらどんな味になるのだろう興味津々。
ちなみに猪は北海道にいないそうです。あ、そうか!「ブラキストン線」があるため猪は津軽海峡を渡ってこられなかったのか?とその時は思いましたが、後で調べると、足が短い猪は、雪深い土地が苦手であることが生息につながらないようです。おもしろい。昨日は北海道にしかいない「エゾヒグマ」の心配、ばったり出会った「キタキツネ」のことを考えていてので、北海道の自然のなかで、動物に限らず野菜や野草などの生息域についてもさらに興味を持ちました。イタリアでも同じく秋には猟が解禁となります。どの国でも、猟の話は文化や環境の話につながるので興味深いですね。
2018年
5月
28日
月
すてきなWEBにある写真通りの、いやそれ以上の風が吹いているのです。クールミントが効き過ぎたくらいの寒くて爽やかな空気の中、北海道は真狩村のレストランでありオーベルジュでもある「マッカリーナ」さまにご納品のごあいさつにやってきました。
洞爺湖サミットが開催された際、トップレディたちのランチ会場にもなったレストラン。ミシュランガイド北海道にも選ばれていますが、職人として、それ以上の興味どころは、無印良品のデザイナーで有名な田中一光氏がアートディレクションを、内藤廣氏が建築を担っているということ。そして、そんな最高な設定と大自然の中で情熱のこもったシェフのお料理が味わえるということ。
制作にあたっては、時間はなかったものの、緊張しないで肩のチカラを抜くために、いつも以上にアートや映画鑑賞をいれたり散歩をしました。つまりは、時間の余白を意識して入れました。淡々とコツコツと歩むことだけでは分泌しないなにかを注入したい。そのぶん制作時間はよりタイトになりましたが、内藤氏が言うとおり「真価」を表現したかったのです。(つづく)
後編では、コッチョリーノの「真価」や、マッカリーナの料理についてご紹介したいと思います。
2018年
5月
28日
月
(前記事からのつづき)
そんなこんなで、北海道の春は土からにょきにょき顔を出したアスパラが出迎えてくれる。形を学ぶばかりでなく、食材や味を体験して感動して、胸がドキドキして、その鼓動が脳や手に伝わって形が出来上がる場合と、空想がそれをさせるときと両者ある。
大学時代、教授が「食べること、飲むことが好きなヤツはどんどんつくるね」と言っていた。とにかく、人はその体験を引き留めたいと思い創造する。器づくりを踏まえたこのごちそう、役得というか、食いしん坊にぴったりな仕事であることはまちがいない。
以下の写真は、帰宅してすぐに土鍋にせいろをおいて蒸したアスパラ、スナップエンドウ、ニンジン、そして鶏むね肉。たんまりプロの料理をいただき、さすがにフレンチのソースは奥深いのでマネできないから庶民的ないつもの18番ソースで許して。
◎食材はすべて土鍋+せいろ蒸し。
◎ソース3種はすべて自家製
1.アスパラの袴をピーラーでとり、せいろで蒸す。アスパラの太さにもよるがわたしは湯気が出てから3~4分。スナップエンドウやニンジンも同じく蒸す。
2.鶏むね肉は塩こしょうをなじませ、白ワインに10~20分浸したものをせいろで蒸す。火が通りやすいようにひと口大に前もって切ってせいろへ。
3.「ソース1」豆乳ヨーグルトにカレー粉+マスタード、白ビネガー、塩こしょうで味を整え、アスパラやスナップエンドウに添える。スナップエンドウにはドライルバーブを添えると酸味が旨味に!
4.「ソース2」自家製よもぎペーストを少し敷いた上に鶏肉を乗せ、うえに「ソース3」自家製桑の実ジャムをかける。
2018年
5月
27日
日
北海道から飛行機で持ち帰ったアスパラガス。あまりにも立派で長いアスパラはせいろに入りきらず、泣く泣く半分に切って。アスパラも近ごろはもっぱらせいろで蒸す。プロのようにたっぷりの縦鍋で茹でればおいしいのだろうけれど、素人のわたしは蒸す方が失敗がないような気がする。土の味がまざった甘い水分がなんとも美味でこの調理法が好き。
実は3年前、北海道に展覧会のため滞在したときも春だった。
札幌の友だちにお世話になって、札幌から美瑛まで一気に運転してもらってASPERGES(アスペルジュ)さんにアスパラを食べに行ったことを思い出すのだが、1ヶ月くらい早かったので雪が積もっていたのにアスパラは土から顔を出していた。そんな景色とあの極上の甘さ、絶妙な歯ごたえは忘れたことがない。
そして、今年の出張と旅もまたアスパラの季節。追ってでmaccarina(マッカリーナ)さんに治めた器のことについても書くが、そこでも極上のアスパラ料理が出迎えてくれ、治めた器に盛り付けてくださったのも、アスパラをつかった逸品だった。
今回の出張では、ご一緒したかたのお供で、これまた極上のフレンチを出す人気のフレンチレストランMOLIERE(モリエール)さんにもご挨拶に行った。お忙しい時間にもみなさん歓迎してくださり、シェフ自らが温かい対応してくださり「ぜひお持ちください」と大振りな緑のアスパラをごそっと手渡しくださったときは、思わず涙が浮かんでしまったものね。いただきものに涙したのではなく、ああどうして北海道の人のやさしさは土と水の香りがするのだろうかと。
ミーティングの途中でうかがったので、幸運にも洞爺湖サミットで腕をふるわれた中道シェフの熱いお話もうかがえました。どのかたもこのかたも、職人でありアーティスト。ノックアウトされっぱなしでした。(⇒記事「モリエールオーナーシェフ中道博氏 inter cross Createve Center2011)
今回の旅は(器の仕事をしていると美味体験させていただくこと多い)これでもか!というグルメな旅で、あともう一軒フレンチレストランLe
Mansa(ル・マンサ)さんでもアスパラ三昧。
(左)ホワイトアスパラガスのムース/トリュフを入れたコンソメジュレ
(中央)スープ サンジェルマン/グリンピースのスープにインゲンやスナップエンドウの青豆とアスパラ添え
(右)グリーンアスパラのリゾット/春菊のソース・三つ葉や小口ネギ添え
※札幌小別沢 谷口農園の無農薬・無化学肥料のアスパラ
(中央)サクラマスのクリスティヤン トマトソースとブールブラン
※皮ごとパリッと焼いたサクラマスに春野菜とイカスミを編み状に焼いたもの
(右)甘夏のプリン
2018年
5月
26日
土
5月のおわり東京の空が梅雨をいつ告知するか相談の候、カラッと晴れた北海道に飛んだ。そんな中で出会った人、場所について何回かにわけて書こうと思う。
そもそもフレンチレストランにミニ土鍋のご納品という出張の旅であったのだが、3年ぶりとなる北海道、せっかくなので前入りして会いたかった人に会う旅となった。まずは美唄から。どうぞ数回おつきあいのほどを。
安田侃 野外彫刻美術館
70年代以降、炭鉱の町から人は去り学校は閉校した。木造校舎の一角には幼稚園が残る。時代に翻弄された歴史と未来の姿。イタリアと美唄におりてくるものと飛んでゆく風と作品をなでていると涙が出てくる。ハルエゾゼミのBGMがそれを助長しているからで、エゾヒグマには会うまいと念じて。
安田侃の作品は、イタリア在住時代から鑑賞済で、ローマの古代遺跡がねむるフォーリ・インペリーアで出会えば鳥肌が立ったし、フィレンツェのボーボリ公園でふと目にすればおかあさん!と呼びたくなるような。国内でも彼の野外彫刻は周知の事実で、出身地である北海道内にはおそらくたくさんの作品が、札幌駅でもなんどもシンボル的なそれは待ち合わせ場所になっていた。直島などアートが集まる旅先でも出会えたし、なにより日本でもミッドタウンのウェルカムスクラプチャーで容易に出会える。⇒ミッドタウンCONCEPT OF ARTWORK。
生命体的な形。イタリアはピエトラサンタの大理石を使った安田氏の作品からはオーラ溢れんばかり。その作品の群れを作者の出身地である美唄で観ようと提案をくださった友人が美唄の神のようにさえ思える。
それなのに「美唄」を「美瑛」とまちがえたし、友人がミュージアムにでも行きませんか?と提案くださったとき、まさか安田の作品美術館を「アルテ・ピアッツァ」と呼ぶとはつゆ知らず、油断なのか食いしん坊なのか「アルテ・ピッツァ」(アーティスティックなピザ屋?)と誤解した。もろもろの言い訳をしたが、安田作品の虜であったわたしが美唄に足をはこぶ機会が与えられたことはとても不思議でたまらない旅の始まりだったのである。そして友人KさんSさんの存在は、わたしにとって説明ならない人生の醍醐味だと実感。その意味はなにか?まだ消化できない。
旅と芸術と人との出会い。
それを不思議といい、土地に眠る幻想というのだろうか。
実はどうしても終わらせなくてはいけない仕事があり、完全徹夜で飛行機に乗り込み、そのままバタバタと美唄に着地していたのだった。徹夜でねむらないことには慣れている。ここでも一度も睡魔や疲労を感じるどころか、目と耳は何倍にも開口した。(いやそれ以上に口も開いた!)
屋外彫刻を見ていても、自然が大きいのか空が大きいのか、作品が大きいのか、わたしたちが小さいのかわからなくなる。その要因のひとつが虫の大合唱だった。長袖とストールが手放せない15度に満たない気温であるのになぜ。作品はときに幻想を起こす。
その後、ミュージアムを離れ、我らは炭鉱の町として栄え現在は廃墟となった「我路」を探しながら走る。人もクルマもいない。鳴いているのはあの蝉。その道で何度もジャンプして土に突撃しているキタキツネの子どもに出会う。睡眠不足の幻想か、いやいや子ぎつねはどんどん我らに近寄ってくる。あなたは誰かの生まれ変わり?
案内くださった山田和史さんの写真と仕事ブログに出会ってどのくらい経つのだろうか、6年8年?曖昧な記憶しか残っていない。前アトリエがあった沖縄でコッチョリーノ作品を扱っていただき、今回もアリノハネに入ったオーダー作品の納品も兼ねて。美唄には新しいアトリエ&ショップのオープン秒読みの彼。準備中の不思議な空間にもおじゃました。最もお忙しいところ案内いただいた。夢と現実と、とても高い鼻と熱い眼をもった男性と、大理石のようなピカピカな肌と透明感をもつ彼女は、きっと誰よりもコロポックル。また会いにいこうと思う。
2018年
5月
23日
水
近くの小川を走ったり歩いたりするようになって何年になるだろう。あの大きな地震の前からだったから7年くらいかな。毎日ではないし、徹夜仕事のときは絶対にやめる。時間に迫られていて心に焦りがあるときもやめる。気がむかないときもやめる。5分走ればどこが調子悪いかすぐに分かる。ノドが痛い、内臓が不調、足腰の筋肉が硬いなどなど。それがわかればすぐ引き返す。
体力づくりのためだったら、きっと毎日なにかしらの理由でやめていたと思いますが、そこにはたくさんの生き物が住んでいるから、行けば誰かに会えるから向かうのです。
毎年恒例の「旅する土鍋
2018イタリア」まで追込み体制に入りました。企画を整えたり、制作したり。何度くりかえしても、前途の小川と同じで、誰に会えるかどんなことが待っているのか考えていると、自分のカラダから自分が飛び出しそうです。孤独な旅で重い器や食材を持ち歩くことは、それはそれは陶芸道の試練か、はたまた人生の逆境をふっとばす訓練としか思えません。夏のはじまりは、いつもちょっとすっぱいけれど、小川を今日も明日も走るのです。
1.ニンジンアペをつくる。(アペ:すること)
2.千切りまたはスライサーすったニンジンとニンニクみじん切りをオリーブオイルで炒め塩をふる。
3.白ビネガーをふりお好みでローズマリー(あればニンジンの葉っぱ)などのハーブやクミンシードなどのスパイスを加えて蓋をして蒸し煮。
4.マスタードと塩で味を調整する。
5.甘夏の果肉をちらして完成。
2018年
5月
21日
月
風はさわやかですが、夏の食事を欲する季節になりましたね。
春の山菜がまた来年ね!と姿を消すころ、枝豆にとうもろこし、早いものが店頭に並んでいます。
余談ですがイタリアでは、わたしの大好物であるとうもろこしと枝豆めったに食べないのです。とうもろこしの粉や粒の缶詰めは売っていますが、丸ごとガブリと食べるのは日本独特の夏の風物詩なんだなぁと。近ごろ大きなスーパーの野菜コーナーでとうもろこしを見かけ、料理上手な友人男子が芳ばしく醤油で網焼きしてくれたあの味は忘れまい!
夏も土鍋を使いましょうよ!と、風変わりでユニークな土鍋をつくりはじめて10年強。ざるやせいろを使って、野菜やハーブを添えたお肉を蒸してそのまま食卓へ。茹でたお蕎麦やお素麺をざるやせいろに上げ、下に氷を張ってひたひたに水を注げば夏仕様の土鍋に早変わり。トマトやきゅうりの下に氷を敷けばこれまた土鍋冷蔵庫。この夏も、どんどん夏の土鍋の使い方を紹介していきますね。
数年前までは「土鍋=冬の道具」というイメージを持っている方が多く、ギャラリーでも秋冬に土鍋特集を組むことがほとんどでした。
10年ほど前から作品として土鍋をつくってきたのは『一年中つかえる土鍋!』が欲しかったからです。そして、いわゆる冬の「つつき土鍋」だけでは土鍋は陽の目を浴びないだろうと考えはじめたのが6~7年前。土鍋炊飯は以前から普及していたので、一定数の土鍋ラバーたちは「ごはん炊き土鍋」にはこだわっていらっしゃいました。
夏でも土鍋を使ってもらえるような展覧会をギャラリーに組んでいただいたり。そんな地道な普及活動をこの5年のあいだに数回おこないました。「旅する土鍋」の計画を本格的に実践に移したのも、この時期に重なります。
さて、前回の“なぜに土鍋を持ってイタリアへ?”のふたつめの答えがここにあるのです。
「つつき土鍋」でも「ごはん炊き土鍋」でもない「土鍋」の使い方を紹介したい。そうすれば、もっともっとおもしろいデザインや色のユニークな一点物(=土鍋作品)がつくれる!と考えたのです。
丘の上(蓋の上)のイタリアの思い出がいっぱいつまった家々、その家からはイタリアの愛の湯気が出る。イタリアならば、キッチンにオブジェや絵など土鍋アートを飾るような感覚を理解してくれるかもしれない。そして、イタリアの友だち、イタリアのマンマだったら、どうやってCocciorinoの土鍋を使ってくれだろう?希望と夢を大きな大きな土鍋に入れて、海を渡ろうと考えたのでした。
「旅する土鍋2018夏」(つづく)
おしらせ(秋の予定)
イタリアより帰国後、秋の展覧会(銀座Ecru+HM)では
「せいろがぴったりなミニ土鍋」を展開予定です。
せいろも既に入手して制作案にとりかかっております。どうぞお楽しみに!
2018年
5月
18日
金
うすら寒いのか蒸し暑いのか、カラダが迷っている季節ですね。こんな時は、新陳代謝をどんどん高めちゃいましょう!
我が家の男性陣はさっぱり薄味のスープが大好きです。新生姜の香りが立つことで、塩味にもおもしろ味が出るこの一汁。超簡単さっぱり味で調理するときは、お肉を塩水(または水)にわずかな時間でも漬ける習慣が定着している今日この頃。突然つくりはじめるときは、10分でもおいしさ効果はあるのでお試しあれ。
余談ですが、夏が旬であるかのようにみずみずしい顔で出まわる新生姜。実は露地物の旬は秋。山梨の農場から野菜を届けてもらっていますが、新生姜はたしかに秋に届く。夏っ子のイメージが強いので、ハウスで夏収穫の新生姜をつくるそうです。日本人の食卓でさっぱりとみずみずしい食材を欲しているのでしょう。旬を逸脱して人々の需要に合わせるハウス栽培。ある意味、理にかなっていて悪くはないと思います。
スライスした新生姜の半分は出汁を取るために鍋に水と一緒に入れます。チキンや青菜を入れ味も調えた後に、新生姜のスライスを生で入れて土鍋のふたをしたまま食卓へ。数分後、召し上がるときに新生姜がしなっと柔らかく、かつシャキッと歯ごたえも残るような、最も新生姜を美味しく食べることができる一汁です。
1.鶏むね肉を塩水に1時間ほど漬けておく。
2.新生姜をスライスして半分を鍋に入れ火にかけ出汁をとる。
3.①を小さめコロコロに切り入れる。
4.ほうれん草(小松菜)を入れ、塩こしょうで味を整えすぐに火を消す。
5.②の残り半分を加えて土鍋の蓋をして3分。できあがり!
2018年
5月
18日
金
帆走してきた電気窯が断線しました。他の線もモロモロで、耐火煉瓦もポロポロであると知りました。ここのところ熱を入れ時間を費やしてきたシゴトは、窯のよみがえりのためだったのかぁと、肩を落とすのか…。いやいや達成温度まで上昇し、最後まで正常運転したのは不思議なくらいだと聞いて、誰に感謝したらよいのか、マイコン上の「火の神様」(ただのお米・塩・酒をぐいのみに入れたもの)に手を合わせてしまったり。空の上に住む父が守ってくれたかなと、すがった藁に頬ずりしたり。
信楽の窯製造元さんの丁寧な修理っぷり。的を得ないわたしの質問にも的確に答えてくれる職人魂もすばらしかった。数ヶ月分の糧をはたいたなんてボヤいている場合ではなく、それ以上に大切なことを知り、同時に窯に対する切なさという感情も生まれました。
大学陶芸道から30年あまり。体力的にあと10年で工房たたんで別のシゴトしながら旅するかな(どんなシゴトよ?)と考えていましたが、追いかけてきたミラノの師匠は持病を乗り越え御年71歳、工房40周年。改心して、それではあと20年!上方修正したのに、2000年に買った窯の寿命はあと10年くらいと診断され。ずっと次男だと思っていた窯は、なんとおじいさんだった。
あと20年、窯をどうするかな。今後の大きな課題となりました。現代の東京では、家系で窯を継ぐというパターンはほぼなくなったので、窯の寿命と同時に工房をたたむかたが多いと聞きました。
未来って、職人って、どう変わっていくのだろう。
そのあと、友人の103歳になられるご家族にお会いする機会あり、もうわたしはなにを言っているのだろうか、どんな次元でものをしゃべっているのだろうかと電撃が走り反省するとともに、ニンゲンって本当にすごいなと思いました。かくしゃくたるお姿と明晰な頭脳に、どんなに素敵な器や美術品を見せていただいても、すばらしいニンゲンにやられてしまい久しぶりに噛んでも飲みこめない感動という栄養をずっとなめながら溶かしています。
2018年
5月
17日
木
「一般論でない何かをみつけるために旅をする」と前置きしながら。
料理教室もレシピも参考になるし大きなヒントにはなるのだけれど。どんなにイージーでもテイスティでも、けっきょく思い出したり見直したりするのさえできないズボラな性分。
おいしくなくても失敗しても、もしかしたら、たくさんの人と同じメニューや味を求めていないのかもしれない。料理にもわたし(またはウチらしさ)を求めていて、言いかえればイタリアの人たち寄りの考えを持つのかもしれない。この5年ほど毎年「旅する土鍋」でイタリアの各地方をまわっていると感じることがあって、文字や量のレシピが少なくてほとんど口頭。「これは我が家のオリジナルだから!」「我が家の味だから!」という見えないレシピがたくさんあるのです。
イタリアの家庭料理、郷土料理を紹介してもらったり(日本のそれを紹介したり)するのですが、とにかくその背景や自分の考えを伝承するべくしゃべるしゃべる。またその逆で、日本食についても質問や感想を言う言う。食材がなければ代用したり、どうにかなるさ!と料理がとにかく軽快。そのわりに鍋の質やサイズが変わるとできないかもしれないと保守的だったり、かわいらしさを醸し出す。たまにレシピがあっても結構テキトウだったり、大いに間違えていたり、欠損していたりする(笑)。それでも「ケ・サラサラ」。
彼らには“教えたいこと”でなく“伝えたいこと”があるからで、そこにはメジャーとマイナー、あるいは損得というものさしを持たない。マイナーという言葉にはネガティブなイメージがあるかもしれないけれど、料理に限らず“伝えたいこと”はマイナーでいいのかもしれない。
⇒次回「旅する土鍋 2018夏」2.それでも地球はまわる につづく
2018年もミラノの師匠アトリエ居候を拠点とし、師匠の海の家リグーリア州、マルケ州での土鍋料理ワークショップ、別の街では土鍋のグループ展、ボローニャ郊外、トスカーナ、そして去年につづきカラブリア州、プーリア州を予定しています。今年の変わり種は、ミラノから北に足を延ばしフランス人の友人が待つローザンヌへ20年ぶりの訪問予定です。